無開発・低コスト・短工期で3D映像伝送を実現! ラジコン建機を遠隔操作
2025年9月8日

建設ITワールド(本社:東京都港区)は、ラジコン建機からの映像を、遠隔で立体視しながら楽しむ「3Dモニタークレーンゲーム」などを独自に実現した。同社には技術やノウハウは皆無だったが、生成AI「ChatGPT」に相談しながら、既存の機器を組み合わせる「チョイスエンジニアリング」という独自手法で「無開発」「低コスト」「短工期」で機能を実現した。

裸眼3Dモニターを見ながらの遠隔操作

裸眼3Dモニターを見ながらの遠隔操作

建設DX展のメディアスポンサーを務める建設ITワールドは2021年の初開催以来、建設とIT(情報技術)を絡めた「オモシロ展示企画」を毎年出展している。同社で建設ITジャーナリストを務める家入龍太代表取締役は、2025年の展示企画としてラジコン模型のクレーン車に3Dカメラを積み、リアルタイム映像を裸眼3Dモニターで見ながらガチャポンをつかむ3Dモニタークレーンゲームを発案した。

3Dモニタークレーンゲームのイメージ

3Dモニタークレーンゲームのイメージ

建設DX展に出展したオモシロ企画「建機バトル」用のミニチュア現場

建設DX展に出展したオモシロ企画「建機バトル」用のミニチュア現場

しかし、同社にはリアルタイム映像を無線伝送する知識やノウハウはほとんどなかった。そこで大手メーカーの「S社」やMR技術で知られる「H社」にコラボを打診したところ、「開発費が必要」という理由で実現せず、計画は一時暗礁に乗り上げてしまった。

当初、建機搭載用に検討した3Dカメラは「QooCAM EGO」。有線方式のUSBカメラとしても動作するため、パソコンのUSB端子とモニターのHDMI端子間を“無線化”できる「ワイヤレスHDMI」を購入・テストしたものの、カメラを認識せず失敗に終わった。

開発の危機を救ったChatGPT

この窮地を救ったのがChatGPTだ。建機の3Dカメラ映像をWi-Fiで送信する方法を相談するうちに浮上したのがAndroid版スマホを画面転送により遠隔操作する方法だった。

ChatGPTは、USBカメラの映像をスマホに表示させるため、スマホやUSBケーブルは「OTG(On the Go)」という仕様、カメラは「UVC」という規格に対応している製品を提案し、スマホアプリは「Web Camera」を推奨した。

そして、画面転送にはAndroid版スマホでは開発者モードの「USBデバッグ」という機能を、パソコン側では「SCRCPY」というアプリを使い、低遅延で4K解像度のリアルタイム映像を伝送することに成功した。

パソコンでは、「SCRCPY」で受信した3Dカメラの「サイドバイサイド」(2つのレンズ映像を左右に並べた形式)映像を、ゲーム配信用フリーソフト「OBS Studio」を経由して、裸眼3D立体視対応モニター「Acer SpatialLabs View ASV15-1B」に表示した。

開発した3D映像伝送システムの概念図

開発した3D映像伝送システムの概念図

新手法「チョイスエンジニアリング」

この映像伝送システムは、180度超広角映像による「パノラマモニター建機教習所」にも使用している。このほか、ChatGPTは、電子回路開発キット「Arduino」を使って作成したベルトコンベヤーや建機コントローラーの微動スイッチについても、回路設計やプログラム作成のアドバイスを行ってくれた。

建機搭載の魚眼カメラの映像を4面のパノラマモニターで遠隔操作する建機教習所のイメージ

建機搭載の魚眼カメラの映像を4面のパノラマモニターで遠隔操作する建機教習所のイメージ

4面のパノラマモニターに映し出された現場映像

4面のパノラマモニターに映し出された現場映像

今回、映像伝送にはド素人の建設ITワールドが自社だけでオモシロ企画の展示を行えたのは、ChatGPTに相談しながら、既存製品を選び、組み合わせて必要な機能を実現する「チョイスエンジニアリング」(同社による造語)のおかげと言える。「無開発」「低コスト」「短工期」による新たな技術戦略として幅広く活用できそうだ。

建設DX展(大阪)のブーススタッフ。左から田中氏、家入、戸田氏

建設DX展(大阪)のブーススタッフ。左から田中氏、家入、戸田氏

会場で配布したPDFチラシ(低解像度版)は、こちらからダウンロードできます。

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