スタッカーを備えた「HP Designjet T1500」を
隈研吾建築都市設計事務所が徹底検証(日本HP)
2013年7月7日

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日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)が6月12日に発売したA0プラス対応のインクジェットプリンター「HP Designjet T1500 ePrinter HDDシリーズ」(以下、T1500)は、排紙を平らに保持するインテグレーテッドスタッカーや低い位置に取り付けたダブルロールなど、日本のオフィスに配慮した装備が特徴だ。この新型機を隈研吾建築都市設計事務所の主任技師、名城俊樹氏が実務で徹底検証した。国内外のコンペ参加も多い同事務所で、T1500の画質や印刷スピードはどう評価されたのか。

A0プラス対応のインクジェットプリンター
「HP Designjet T1500 ePrinter HDDシリーズ」
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日本HPのA0プラス対応インクジェットプリンター「HP Designjet T1500」を評価する隈研吾建築都市設計事務所の名城俊樹氏

   様々なソフトを駆使する隈研吾建築都市設計事務所

 東京とパリのほか、上海や北京、英国のエジンバラなどに拠点を持つ隈研吾建築都市設計事務所には百数十人のスタッフがいる。東京の事務所には海外から20~30人のインターンが常時、在籍している。

 同事務所でサントリー美術館や長岡市役所などの意匠設計を手がけた主任技師、名城俊樹氏はデザインや図面やパース、プレゼンテーション用のポスターなどの作成に様々なソフトを駆使する。図面はAutoCADやVectorworks、パースは3ds MaxやRheinoceros、Photoshop、ポスター 制作にはInDesignなどを使っている。これらのソフトを動かすのには、最近購入したHPワークステーションの最上位機種であるZ820も活躍し、効率の良い作業環境を整えている。

 「事務所で大判プリンターを使う業務は多くあります。パースはもちろん、複雑な設備や家具のある建物や自然公園法などに関係する図面にはカラー印刷が必須です。また、模型を作るときの基盤や建物のテクスチャーなどの印刷にも使うことがあります」と名城氏は説明する。

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設備や家具が入り組んだ図面にはカラー印刷は必須だ

 大判プリンターで出力する図面やパースの枚数は、日によって大きく異なる。「日に5~6枚のときもあれば、2日で2000枚を印刷することもあります」と名城氏は言う。同事務所には大判レーザープリンターが2台、大判インクジェットプリンターが2台あるが、インクジェットプリンターはすべてHP製を使っている。

  図面が丸まらないインテグレーテッドスタッカー

 T1500の特徴は、印刷された図面やパースが本体背面から排紙され、「インテグレーテッドスタッカー」に積み重ねられていくことだ。「図面やパースが印刷後、平らに保持されるので丸まらないのがいいですね」と、隈研吾建築都市設計事務所の主任技師、名城俊樹氏は言う。

 インテグレーテッドスタッカーには約50枚の図面が出力された順番に蓄積されていく。後で重ね直す必要もないので便利だ。これまでは200万~300万円以上の高級機種のみに採用されていた装置だが、希望小売価格93万8000円(税別)のT1500にも今回、初めて採用されたのだ。同42万8000円の姉妹機、T920(A0ノビ対応シングルロール機)にも搭載され、ぐっと身近な存在になった。

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インテグレーテッドスタッカーに蓄積される印刷済みの図面。平らに保持されるので丸まらず、印刷順序通りに積み重ねられていくので、後の処理も楽だ
 

 また、T1500には2つのロール用紙を取り付け、プリンタードライバー側の指示によって自動的に切り替えることができる。用紙の交換も前面から、しかも低い位置で行えるのでイスに座った状態でも作業できるのが特徴だ。

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T1500には2本のロール用紙を取り付け、プリンタードライバー側の指示で自動的に切り替えられる。用紙の交換は前面から低い姿勢で行える

  画質、スピードとも満足いくレベル

 「当事務所で大判プリンターを選ぶポイントは、画質、印刷スピード、そしてランニングコストです」と名城氏は言う。「その点、T1500は線の印刷品質がレーザープリンターよりシャープで、線種の表現力も豊かです。印刷スピードも高画質や半光沢紙でも十分速いです。また、パースの印刷画質も十分なクオリティーをもっています」(名城氏)。

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T1500で印刷した図面やパース

 同事務所では今回、T1500の発売前からモニターとして同機種を使用し、性能を検証してきた。名城氏のほか、同事務所のスタッフも実務で使用した。 「パソコンから出力するだけでなく、PDFやTIFF形式のデータをUSBメモリーに入れて、パソコンやアプリケーションを使用せずT1500に直接接続するだけで大判の図面やパースを印刷できるのも便利でした」(名城氏)。

 コンペやプレゼンテーションでは、文字のフォントにもこだわる。T1500にはPostScript対応モデルもある。PDFにフォントが埋め込まれていれば、USBメモリーで接続するだけで、デザイナーが意図したインパクトのあるフォントによる表現力も、余すことなく出力できる。

 「大判で出力した図面やパースは、設計内容が分かりやすいのがいいですね。施主にプレゼンするときも、BIMや3D設計をパソコンの画面を見せるより、大きな紙に印刷した方が効果的なこともあります」(名城氏)。

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大判で印刷した図面をチェックする名城氏

  東京で制作したパースをパリで出力

 T1500は、「ePrint&Share」の機能にも対応している。これは日本HPがユーザーに提供しているクラウドサービスで、インターネットに接続されているところなら、世界中、どこでも同じ線種、線幅、色味の図面やパースを印刷できるシステムだ。

 「当事務所の場合、パリ事務所が受けた案件を東京で設計し、パリでプレゼンすることもあります。そんな時、東京で作ったデータをパリ事務所で印刷し、隈研吾代表が現地でチェックする、ということもできます」(名城氏)。

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クラウドサービス「ePrint&Share」を使うと、東京事務所と全く同じ設定で、パリ事務所でも同じパースを出力し、確認することができる

 T1500は日本のオフィス環境にも配慮した細かい設計が導入されている。まずはサイズだ。A0ノビ対応サイズでありながら、幅1399×奥行き693×高さ950mmという寸法は、エレベーターでの移動も簡単だ。壁際にもピッタリと収まる。

 また、本体の上面が平らになっているのも特徴だ。図面などを置きやすいため、印刷直後の図面やパースを置いて出来上がりのイメージを確認するといった使い方もできる。狭いスペースをできるだけ有効に使いたいユーザーには、こうしたちょっとした配慮もありがたいだろう。

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A0ノビサイズでありながら壁際にコンパクトに収まるサイズ(左)。本体の上面は平らになっているので、図面などの確認を行うスペースとしても活用できる(右)

 T1500はシングルロールの姉妹機、T920とともに6月に全世界で発売を開始された。レーザープリンターに劣らない印刷スピードと生産性を備え、コストを大幅に削減したこのマシンは、今後、建築設計事務所や建設会社のヘビーデューティーなニーズを満たすものとして注目されそうだ。

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6月20日~22日、米国コロラド州デンバーで開催されたAIA(アメリカ建築家協会)全米大会の展示会場でもT1500が展示されていた。かつてのHPのベストセラーHP Designjet 1050/1055シリーズの後継機として会場でも来場者の注目を集めていた。
 
 
20130707HP-12.jpg Company Profile


隈研吾建築都市設計事務所

本社 東京都港区南青山2-24-8
主な業務内容 美術館、官公庁舎、学校、商業施設、ホテル、住宅などの設計・監理を国内外で幅広く手がけている。
URL http://kkaa.co.jp/

 

【問い合わせ】
 日本ヒューレット・パッカード株式会社
 東京都江東区大島2-2-1
 カスタマー・インフォメーションセンター
 0120-436-555 (携帯電話・PHS)03-5749-8291
 受付時間:月曜日~金曜日 9:00~19:00 土曜日 10:00~17:00
 ホームページ : www.hp.com/jp/designjet
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