鴻池組はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を全社展開するに当たり、福井コンピュータのBIMソフト「GLOOBE」と「J-BIM施工図CAD」、東京生産で知られる日本ヒューレット・パッカードのワークステーションを選んだ。同社の“国産BIM戦略”は、メーカーから迅速なサポートを受けられるほか、日本仕様の設備設計や施工図作成、積算などとも連携しやすいというメリットを発揮している。
日本仕様の図面作成には国産BIMソフトを
「始めは限られた設計者だけがBIMを使っていましたが、今は、約20名のBIMマネージャーの育成を中心に、BIMの取組みを実施しています」と語るのは、鴻池組設計本部設計管理部BIM推進課で課長代理を務める内田公平氏だ。
同社は、2010年から設計部門でBIMに取組み始め、2014年には設計本部に積算や施工の部門を含めた約10名からなるBIM推進課を設置した。そしてBIM用のソフト、として選んだのが、福井コンピュータアーキテクトのBIMソフト「GLOOBE」である。
「当初は外国製のBIMソフトを使っていましたが、全社展開に当たっては、日本仕様の図面を描きやすく、日本の設計プロセスや設計機能を豊富に備えているGLOOBEを選びました。国産ソフトのため、メニューやコマンドに使われている用語もわかりやすく、設計者自身が操作しやすくなっています。スキルアップする事により、業務で作成する8割方の図面を描くことができます」(内田氏)。
また、GLOOBEには「リアルウォーカー」というオプション機能もある。ワンクリックでBIMモデルとビューワーソフトを一体化したファイルを作る機能だ。このファイルを開くと、GLOOBEを持っていない施主なども、BIMモデルの内外を自由自在に歩き回りながら設計内容を確認できる。
国産ソフト、ハードによる “国産BIM戦略”のメリット
そしてGLOOBEを活用するために選んだのは、日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)のワークステーションだ。
設計者用には「Z420」クラスや「Z230」クラスのワークステーションに16G~32GBのメモリーを搭載し、意匠設計、構造設計、設備設計の各部門で約70台を使用している。また、最上位機種の「Z820」クラスには32G~64GBのメモリーを搭載し、大阪の本社に3台、東京本店に1台を配置している。
「GLOOBEのBIMモデルのファイルサイズは、外国製のBIMソフトに比べて4分の1~3分の1程度と軽いので、日本HPのワークステーションのメモリーに読み込むと、サクサクと動きます」(内田氏)。
日本HPのワークステーションは米国の専門部署で開発されているが、生産は東京都昭島市にある昭島工場で行われている。つまり国産品というわけだ。
そのため注文から最短5営業日で納品と納期が短く、輸送時間や積み替え作業が少ないので運送中の故障が少なく、顧客の要望を生産現場に迅速にフィードバックできるというメリットがある。
「BIMで効率的に業務を行うためにも、ソフトとハードに国産品を使うことは有効です。例えば、GLOOBEの機能などに改善要望を出すと、2カ月程度でマイナーバージョンアップとして提供されることもあります。日本HPのワークステーションも東京で作られているため品質には信頼感があり、万一、故障した場合も連絡した翌日にはエンジニアが部品を持って駆けつけてくれるので安心です」と内田氏は“国産BIM戦略”のメリットを語る。
「GLOOBEは日本HPのワークステーション上できちんと動くので、途中でフリーズして作業が中断するようなことがありません」と内田氏は語る。
GLOOBEの開発元である福井コンピュータアーキテクトは、ワークステーションやグラフィックボードに詳しい技術陣を抱えている。日本HPとも情報交換しながら、GLOOBEと日本HPのワークステーションがスムーズに連携するように務めている。
「当社もGLOOBEを使うためのワークステーション選びについて、福井コンピュータアーキテクトのアドバイスを受けました」(内田氏)。
積算や施工、3Dプリンターとも連携
GLOOBEは、BIMモデル用のデータ交換標準「IFC」や、構造モデルを交換する「SIRCAD」、「ST-Bridge」など、様々な3Dモデルのデータファイルに対応している。そのため、GLOOBEで作成した意匠モデルに、一貫構造計算ソフト「Super
Build/SS3」(ユニオンシステム)で作成した構造モデルを読み込んで合体させ、干渉チェックを行うことも簡単だ。
そして鴻池組のBIMの活用は、設備設計や積算、施工段階にも進みつつある。これらの業務ではGLOOBEとBIMモデルデータの連携が可能な設備設計用BIMソフト「CADW’ell Tfas」(ダイテック)や積算ソフト「ヘリオス」(日積サーベイ)、施工図作成ソフト「J-BIM施工図CAD」(福井コンピュータアーキテクト)などの国産ソフトも使用している。
「最近は積算分野でGLOOBEとヘリオスの連携が強化され、これまで手作業が多かった両ソフトでの部材情報のマッチングが自動化されつつあります。これがさらに進むと、積算作業での効率改善が期待できそうです。」(内田氏)。
さらには、GLOOBEのBIMモデルを「STL形式」に書き出して、3Dプリンターで模型作成も行い、コンペなどに活用している。
「これからBIMを始める会社にもおすすめ」
これまで、BIMソフトは外国製品が主流だったが、これからBIMに取り組む建設会社や建築設計事務所でも“国産BIM戦略”はなじみやすいのだろうか。
「GLOOBEにはわかりやすいビデオマニュアルが付いていますので、これを一通り見れば、操作は簡単です。電子マニュアルもわかりやすく、充実しています。このほか福井コンピュータアーキテクトのサポートもしっかりしており、電話による相談のほか、インターネットによる遠隔操作で設定や操作方法などを教えてもらうこともできます」と内田氏は語る。
また、今後のビジョンとしては、日本HPのワークステーションに標準搭載機能の「RGS」(リモート・グラフィックス・ソフトウェア)を使い、インターネットを介して、ワークステーションを外部から遠隔操作出来る、スマートな環境と運用を整えたいと考えています。「これを使うと性能が高くないシンクライアントの端末でも、ハイスペックのワークステーションのように使うことができます」(内田氏)。
「これからBIMを始める会社には、GLOOBEと日本HPのワークステーションをセットでおすすめしたいです」と、内田氏は話を締めくくった。
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