前田建設工業は2018年、MetaMoJiのデジタル野帳「eYACHO」を土木・建築の両部門で導入した。その結果、現場業務に潜む「移動のムダ」や「手待ちのムダ」、「資料作成のムダ」を大幅に削減したほか、ビジュアルなWEB会議や朝礼によって情報共有の質も大幅に向上した。その結果、「3密」を避けた現場運営が可能になり、コロナ禍対策にも効果が期待できそうだ。eYACHOを活用する技術者の声を聞いてみよう。
間接業務が4分の3を占めていた現場の仕事
多くの作業員や技術者が、休む間もなく働く工事現場だが、その仕事の中身を見直してみると、意外なことがわかった。
「職員の1日の労働時間を分類したところ、『現場管理・点検』『資料作成』『会議・打ち合わせ』『書類整理・保存』が3/4を占めていました」―――こう語るのは、前田建設工業
情報システムセンター施工・技術系業務革新グループ グループ長の新井祐二氏だ。
これらの業務にはそれぞれ、現場と事務所を往復したり、打ち合わせを行うために集合したりする「移動のムダ」も含まれている。
「これらの4つの業務をもっと効率化できないかと考えた私たちは、タブレットで使えるデジタル野帳『eYACHO』を土木、建築の両部門に導入しました」(新井氏)。
eYACHOとは、MetaMoJi(本社:東京都港区)が開発・販売するデジタル野帳アプリだ。これまでの「紙」の代わりにタブレット端末を使い、紙と同様に手がきによるフリーハンドで文字や図を入力できるほか、タブレットに備わっているカメラやマイク、時計、通信機能などによって、写真や音を埋め込んだり、データ入力を自動化したりと紙以上の生産性を発揮するツールである。
「eYACHOを選んだ理由は、現場のコミュニケーションが活性化する情報共有ツールであること、使い方を覚えた社員が転勤しても使い続けられるように社内でツールを統一できること、そして多くのツールの中でも評価が高かったからでした」(新井氏)。
それでは、eYACHOの導入後、前田建設工業の現場業務にどんな変化が起こったのかを見ていこう。
「移動のムダ」削減で生産性が向上
eYACHOの導入で早速、効果が上がったのは予想以上に「移動のムダ」が削減できたことだ。
「大きな現場では搬入用のゲートが複数あり、ガードマンに事前に搬入予定を伝えておく必要があります。これまでは紙に書いて配っていたが、今では、eYACHOで複数のスケジュールを一つにまとめて搬入予定表を作成しています」と語るのは、東京建築支店有明北A街区作業所 課長の畠中雅英氏だ。
この方法に変えてからは、スケジュールを書いた紙を配る手間が必要なくなり、最新情報がリアルタイムで更新されるため、情報伝達の漏れが少なくなりました。当初は予想していなかった効果です」と畠中氏は言う。
eYACHOのメリットは、各担当者が書いた内容がクラウドに自動送信され、リアルタイムに情報共有できる点だ。
建築事業本部 建築技術部 施工支援グループ グループ長の三浦信一氏は「eYACHOを共有のメモ帳として使うように、他の現場も含めて指導しています」と語る。
「工事の管理業務に限らず、庶務、福利厚生の連絡などもeYACHOの共有ノートに書き込んで記録に残すツールとして活用しています」と三浦氏は言う。
これまでの情報共有は、紙が基本だったため、そのやりとりには「移動のムダ」が付きものだった。eYACHOの導入で、人が移動する代わりに電子データが瞬時に行き来してくれるようになったのだ。
さらに副産物もある。「最近の若手には人とのコミュニケーションが苦手な人が多いようです。この世代が、eYACHOを実践的に使うことでコミュニケーションが円滑化するのではないかと今後の利用に期待しています」(三浦氏)。
引き継ぎ時に「ノート待ちのムダ」がなくなった
昼夜交代で連続施工する現場では、昨日の夜どんな作業が終わったか、昼にどんな内容を行ってほしいかという引き継ぎを紙のノートで行っていた。これがeYACHOに変わったことで、「ノート待ちのムダ」がなくなり、時短につながったと感じた技術者もいる。
「導入前は、昼夜引継簿は大学ノートに手書きで行っていたため、職員が3人いると、誰かが書いていると順番待ちでした。また事務所に戻らないと記入できなかったのが不便でした」と語るのは小泉氏だ。
「今は、現場にいながら引継簿に書けるようになり、どこにいても、いつでも確認できるようになったので非常に便利です。事務所に戻っての作業が半分になりました」(同)
また、紙による回覧からeYACHOによる情報共有に切り替えたことで、「机上の回覧待ち」が解消したという声もある。
土木事業本部 土木技術部 ICT推進グループ マネージャーの笹倉伸晃氏は「今までは紙だった回覧がeYACHOを使うとクラウドでつながるので、外出先でも確認できる、情報が共有できるのがメリットです。机の上に書類がたまることがなくなりましたね」と言う。
コストに換算することは難しいが、作業時間が短縮されたと実感している。「今後は、所内での情報共有だけでなく、それを発注者や前工程・後工程の方々とも同じノートを見る環境を整えることができれば、さらに業務の効率化が進むのではないかと思います」(笹倉氏)。
ビジュアルな資料をその場で作れる
東京土木支店で工事課長を務める笠井陽介氏は、昼夜引継簿をeYACHO化したことで、ビジュアルでわかりやすい資料を作れるようになったことを評価する。
eYACHOの画面には、昨日の夜間で行われた作業と職員、職長の承認印欄がずらっと並んでいる。誰が確認したかが一目で分かるのだ。
「実際の作業は写真付きで残しています。昼の職員へ引き継ぎとして、引継内容、引継者を記入し、eYACHOのボタン機能を使って、次の引継内容のノートにすぐにジャンプできるようにしています」eYACHOの便利な機能をうまく利用できている。(笠井氏)
「今までは、文字と少しマンガ絵というものだったが、eYACHOを使うようになってからは作業の流れをステップごとに写真を入れて、コメントを入れて、安全注意事項も入れてと細かく作れるようになりました。現場に行って、職長さんと打ち合わせして作り込んでいけるのがとてもいいです」(笠井氏)
テキストのほか写真や図面、さらには動画まで交えたビジュアルな資料作成も、カメラや通信機能を搭載したタブレットがあれば、1台ですべてのデータにアクセスし、手軽に行える。
土木事業本部 土木技術部 ICT推進グループ グループ長の工藤敏邦氏は「昔は、カメラや野帳を持って、測量や施工管理をして、写真や動画を撮影し、必要事項を紙の野帳に書いていました。その後は事務所に帰ってから、別々のツールで行っていたことを一つの報告書にまとめていました」と苦労を振り返る。
「それが、eYACHOは測量・写真・動画・資料作成と全てのことが一つでできるので非常に便利になりました」(工藤氏)。
コロナ時代のリモート朝礼にも対応
毎朝、現場担当者や作業員などが集合して行う朝礼では、作業計画図の説明が日課となっている。導入前は、代表者が情報をまとめてホワイトボードに書き込んでいた。
そこで資料をeYACHOで作成し、大きなスクリーンにプロジェクターで映す方法に変更した。各職員がeYACHOに同時並行で情報を書き込めば、作業計画図が作成できるというシンプルかつ効率的な仕組みに変わったのだ。
「朝礼では、指のピンチアウト操作で拡大表示できるなど、会場の後ろにいる人でもよく見えると好評です」と畠中氏は言う。
事務所が2カ所ある現場では、eYACHO導入前は別々に終礼を実施していたが、今は、Web会議とeYACHOを使って離れた場所でも合同で終礼を実施している。
eYACHOのシェア機能を活用することで担当者は事務所以外の外出先・現場からも参加ができ、写真や図面、表を貼り付けてリアルタイムに報告ができるのだ。
この取材を行った2018年11月当時にはなかったことだが、今はコロナ対策も求められるようになった。朝礼でのソーシャルディスタンスを確保したり、リモートで朝礼を行ったりできるeYACHOは、工事現場での「3密の防止」を実現するツールとしても、新たな価値が生まれている。
※2018年 11月取材。画面キャプチャ、機能、肩書は当時の情報にもとづきます。
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