日比谷総合設備は、工事現場で撮影した360°パノラマ写真をクラウドで社内共有できるリコーの「RICOH360 Projects」を全社導入した。ウェブブラウザーやスマートフォンなどを通じて、どこからでも現場の最新状況を確認できるため、社員は現場への移動時間・手待ち時間の負担軽減による施工管理効率化の効果を感じ始めた。同社が取り組む建設DX(デジタルトランスフォーメーション)のベースとして、今後も使い方が広がりそうだ。
オフィスや外出先から現場を確認できる便利さ
360°パノラマ写真とは、左右上下の360°の風景を1枚の写真で記録したものだ。まるで自分がその場所に立って周囲を見回すように、眺め回すことができる。リコーの360°カメラ「RICOH THETA(シータ)(以下THETA)」シリーズは、こうした写真を撮ることができるカメラの代表格として建設業界でも広く使われている。
「当社でも以前からTHETAを導入し、現場で使っています。シャッターを1回押すだけで、周囲をすべて撮影できるので効率的です。普通のデジカメだと、見落としや記録漏れが発生する場合もありますが、THETAならそんな心配はありません」と語るのは、エンジニアリングサービス統括本部副本部長を務める嶋村克久氏だ。
construction4 – Spherical Image – RICOH THETA
THETAで撮影した現場写真の例
今回、日比谷総合設備では、リコーのクラウドサービスRICOH360 Projectsを全社で導入した。360°パノラマ写真をクラウドサーバー上で社内共有し、ウェブブラウザーでどこからでも見られるようにしたシステムだ。
「これまでは現場に出掛けないと分からなかった現場の状況が、RICOH360 Projectsがあればウェブブラウザーで現地にいなくても簡単に確認できます。その便利さがみんなも分かってきたようです」と嶋村氏は言う。
施工管理の効率化は移動・手待ち時間の軽減から
これまでの建設業は、現場に行って仕事をするのが当たり前だった。施工作業や管理業務といったものづくりを行う作業はもちろん、工程管理や品質管理、安全管理といった情報管理的な作業まで、すべての仕事を現場で行っていたと言っても過言ではない。
「こうした仕事のやり方によって建設業は拘束時間の長い業種になっています。デスクワークをしている人も、ちょっとした確認をするために、わざわざ現場に出掛けなければなりません」と、エンジニアリングサービス統括本部副本部長を務める太田孝氏は言う。
「距離的には数分程度の現場でも、作業服に着替えたり、現場の入退場手続きを行ったりしていると、1時間くらいかかってしまいます。現場が遠いと仕事のうち半分くらいが移動時間ということもあります。移動負担を軽減し、別の業務に使えるようになれば生産性は上がるでしょう」(太田氏)。
RICOH360 Projectsは、こうした移動負担を軽減する“特効薬”だ。
「シャッターを1回押すだけで、部屋の内部が全部記録できますから、自分の業務に必要のない部分もちゃんと記録されます。そのため現場の担当者が撮ってRICOH360
Projectsのクラウドにアップした写真を、安全管理の担当者が使うといった部門間の連携や助け合いによっても効率化が図れます」と嶋村氏は言う。
またRICOH360 Projectsは、支店間と現場のコミュニケーションにも使える。パノラマ写真上に是正すべき事項を手書きしたり、メモを張り付けたりすることで、現場に伝えることができるのだ。
太田氏はリニューアル工事での現場現況記録に本サービスを使ううち、新築工事の進捗記録にも使えるのではないかと感じた。
「定期的に現場全体を撮影してパノラマ写真をクラウドにストックしていくと、現場の施工状況をエビデンスとして記録できます。内装工程後でも、その裏にどんな配管やダクトがあるのか確認できます。このほか、仕上げチェック後の是正報告などにも使えそうです」と太田氏はその利便性を説明する。
簡単な操作と手厚いサポートで全員活用
これまでの現場管理は、紙の帳票を使うスタイルが一般的だった。それをパノラマ写真やクラウドに置き換えるためには、現場にかかわる全員が無理なく使えることが必要だ。
日比谷総合設備は2020年10月にRICOH360 Projectsの存在を知り、2021年1月から一部の現場で試用した後、3月に全社導入を正式に決めた。そして7月にはトレーニングが完了し、全社で活用する状況になった。
「全社で活用するためには、機能がシンプルで、簡単に使える必要があります。また、誰でも使えるように、トレーニングやバックアップも必要です。大手企業のリコーの製品なので、これらの面ではとても安心感がありました」と嶋村氏は振り返る。
例えば、使い方講習のトレーニングでは、リコーの担当者が事業所や拠点ごとに現地講習やオンライン講習を行い、その様子をビデオ録画して後からいつでも見られるようにした。また、要点だけをまとめた、分かりやすい特別版のマニュアルも作成した。
導入後、使用方法などで困り事があれば、いつでもリコーの担当者がサポートしている。
RICOH360 Projectsで建設DXへの第一歩を
日比谷総合設備では2021年度から、建設業をデジタル技術で変革する「デジタルトランスフォーメーション(建設DX)」への取り組みを始めた。
現場担当者のヘルメットに「ウエアラブルカメラ」を取り付けたり、現場に定置式のポータブルカメラを設置したりして、現場を映像に自動記録することで施工管理効率化を目指している。
「RICOH360 Projectsを含むカメラシステムの利活用や様々なDXツールを導入・拡充することによって、より一層の安全品質と生産性向上を目指しています。スモールスタートから試行錯誤を経て、建設DXのベースを確立したいです」と、嶋村氏は締めくくった。
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