ArchiCAD BIM事例「福島給食センター」プロジェクトを掲載
2014年11月10日

ArchiCAD BIM事例レポート 特別インタビュー  東京電力株式会社 「福島給食センター」建設プロジェクト

福島給食センター

「福島第一原子力発電所」廃炉作業の労働環境改善を目指して BIMを生かし、より速くより精確な設計施工を実現

2011年3月の東日本大震災とこれに伴う福島第一原子力発電所事故から3年半。東京電力は福島の復興を目指し、さまざまな取り組みを進めている。その柱の1つが福島第一原子力発電所の廃炉作業である。30~40年続く、この息の長いプロジェクトを安全・確実に進めるには、ここで働く人々の作業環境の改善は重要な課題だ。その改善策の1つが、現場に温かい食事を提供する給食センターの建設である。2013年暮れに始まったこのプロジェクトは、かつてないスピード設計と施工が求められたが、ArchiCADを用いたBIMの活用により、設計者は確実にこの要求に応えた。プロジェクトの具体的な展開について、福島給食センター建設事業のプロジェクト・マネージャーである児玉達朗氏にお話を伺った。

長期に亘る廃炉作業を安全・確実に進めるために

児玉 達朗 氏

原子力安全・統括部 Jヴィレッジ復旧推進グループマネージャー 児玉 達朗 氏

―― 本プロジェクトが生まれた背景をご紹介ください

児玉氏  当社では、2013年11月8日に福島第一原子力発電所での廃炉作業や汚染水処理対策の加速化・信頼性向上を目的として、原子力規制委員会からの指摘事項等も踏まえつつ、自らが緊急に取り組むべき安全対策を取りまとめた『福島第一原子力発電所の緊急安全対策』を記者発表しました。その方策の中でも作業環境の改善上、重要なものとして、執務スペースの確保や大型休憩所の建設、休憩所での温かい食事の提供等を掲げています。そして、このうち3つ目のミッションである「休憩所での温かい食事の提供」の実現のために計画されたのが、福島給食センターの建設です。

―― 廃炉作業の作業環境はどのような状況なのでしょうか

児玉氏  福島第一原子力発電所では、現在も多くの作業員が廃炉に向けた作業に従事しています。しかし、現状では、作業に従事する方たちのための食事の準備や休憩場所は十分とは言えず、厳しい作業環境となっているのは否定できません。現場で発生するトラブルを未然に防ぎ、長期に亘る廃炉作業を安全・確実に進めていくため、このような労働環境の改善を進めて行くことは、私たちにとって重要な課題の一つでした。

―― 「福島給食センター」の計画概要をご紹介ください

児玉氏  簡単に言えば、実際の作業場所である福島第一原子力発電所内に事務所建物と大型休憩所を建設し、これらの建物に1日約3,000食の調理した食事を運んで食べていただくための福島給食センターを建設するプロジェクトです。建物ができても給食センターとして機能できなければ意味がありません。つまり、建物を建てることだけでなく、調理した必要十分な給食を運んで喫食してもらう所まで含めた一つのシステムですね。このようなシステムを安定的に運営できるようにすることが、私のミッションということになります。

―― このプロジェクトでまず課題となったのは?

児玉氏  まず最初の重要なポイントとなったのは、どこに建てるかという敷地の問題です。給食センターという施設は、建築確認だけでなく保健所から営業許可をいただかないと営業できません。そこで重要になるのが「調理後喫食2時間」という給食センター方式の大原則です。調理後、運んで配膳して食べ終わるまで2時間で済ませるようにしなければ、保健所の営業許可が得られません。ですから敷地は喫食してもらう大型休憩所へ車で1時間以内の範囲で、上水の供給が受けられる場所でなければなりませんでした。

―― 場所は決まっていたのでしょうか

児玉氏  給食センターの建設が決まったのは、前述の2013年11月8日だったんですが、この段階ではまだ敷地は決まっていませんでした。すぐに施設の規模感も考慮しながら候補地を絞り込む作業に入り、翌12月に敷地を決定することができました。給食センターは2015年3月末の完成が求められていたことから,これに間に合わせるには、遅くとも2014年6月までに着工する必要がありました。当時は、自分の経験から言っても、この規模の工事をこのスケジュールで進めるのは相当厳しいと感じました。

鳥瞰パース

鳥瞰パース

「前田建設工業のBIM」

―― どのような点が「相当厳しい」と感じられたのですか

児玉氏  双葉郡大熊町の建設用地が決まったのは、前述の通り2013年12月で、プロジェクトの実質的なスタートは翌2014年1月。6月着工するには、当然それ以前に確認申請を出す必要があります。このタイトなスケジュール下では、確認申請段階での大きな変更はやはり避けたいところですから、その前の早い段階で保健所と細かく調整を行い、計画のスケルトンをきちんと固め、その上で確認申請を行おうと考えました。もちろん保健所との打合せも1回では終わらないでしょうし、これもできるだけ早い段階――例えば1月の早いうちに始めたかった。そして、具体性のある打合せを行うには、そのベースとなる図面が必要になるわけですが……そんな短期間で、いったいどれほどの設計が進められるのだろうか、と考えていました。

―― その設計を行ったのが前田建設工業のBIMチームでした

児玉氏  ええ。とにかくスケルトンがある程度固まった図面を確認申請に出す必要があったので、規模感や動線が読み取れる図面が必要となります。設計者に「最速でいつ上がりますか?」と確認したところ1月下旬なら行ける、というんですね。前述の通り、そんな短期間でこの規模の建物の設計ができるのか?と思いました。保健所の担当者の方とも調整し、最初の打合せを1月22日に決めました。

―― 「BIM」については意識してらっしゃいましたか?

児玉氏  もちろん知識としては知っていましたし、前田建設工業が先進的に取り組んでいることもわかっていましたが、この時点ではまだ、さほど意識していませんでした。というより実務でどこまでそれが効果的なのか、信用はしていませんでした。2週間後に届いた図面は単なるスケルトンの絵などではなく、衛生器具を含めた詳細情報がひと通り入った一般図にきちんと仕上がっていました。いま思い返せば凄いことです。とにかく到底2週間そこそこで出来たとは思えないレベルの図面だったのは間違いありません。

続きは、グラフィソフトジャパンのウェブサイトで。

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