ARCHICAD BIM事例レポート 一宇一級建築士事務所
2015年11月3日

ARCHICAD BIM事例レポート 一宇一級建築士事務所

1925年献堂長崎教会保存修復のための3D断面 1925年献堂長崎教会保存修復のための3D断面

軍艦島を 3D モデル化した先駆者が選ぶ いま最も優れたコミュニケーションツール

長崎県長崎市の一宇一級建築士事務所は、建築家・中村享一氏が主宰するアトリ エ設計事務所である。建築業界で40年以上のキャリアを持つ同氏は、建築家として多彩な建築設計や都市計画を手がける一方、歴史的建造物の存続・再生活動 にも力を注ぎ、世界文化遺産となった「軍艦島」のフル3D モデル制作等でも知られている。そんな中村氏は、最初期から 3DCAD を活用してきた 3DCAD 活用の先駆者でもある。あらゆる建築系3DCAD を使ってきた同氏が行き着いた「ARCHICAD」 の魅力についてお話を伺った。

 一宇一級建築士事務所 代表 中村享一 氏

一宇一級建築士事務所 代表 中村享一 氏

ARCHICAD で軍艦島を 3D モデル化

「せっかくだからヨットに乗っていきませんか?話は船の上でしますよ」。そういって中村氏はいたずらっぽい笑みを浮かべた。これまで多くの ARCHICAD ユーザにお会いしてきた取材隊も、クルージングしながらのインタビューは経験がない。常識に囚われない中村氏らしい提案に驚きながら頷くと、同氏はまた笑 みを浮かべ、素早く出港準備を開始した。待ち合わせは夕暮れ迫る長崎港、出島ワーフ。海に面したこの複合商業施設にはマリーナがあり、中村氏の愛艇もここ を母港としているのである。ほどなく準備が整い、私たちを載せてヨットはゆっくりと出港した。波はそれほどでもなく、強い陽射しと潮風を感じながら沖に出 ると舵輪を握った中村氏が振り返り、出港してきたマリーナを指さした。

「いま出港してきたあたりにはスーパーマーケット等も建っていますが、元は埋め立て地に建てたものなんです。その再開発コンペで、私は“埋め立てない” プランを提案し入選したんですよ」。1991年のことだった、と中村氏はいう。日本建築家協会主催の設計コンペ「長崎の都市の再構築」に提出された同氏の プランは、廃船となった石油掘削船に自然エネルギー機器を搭載。自然エネルギーの研究基地となる海上都市を作ろう――という、当時としてはきわめて斬新か つ先進的な提案だった。

「みんなに“早過ぎた”と言われましたね。そのせいか銅賞留まりでしたが、この時から、地球環境や建築物の保存再生問題に取り組むようになったんです。軍艦島の研究もこれがきっかけで、以来20年間ずっと取り組んでいます」。

現在では中村氏は軍艦島研究者として広く知られ、特に明治期の軍艦島研究では第一人者といわれる存在だ。そんな同氏が ARCHICAD で軍艦島の 3D モデルを制作したのは2007年頃のことである。

「ほら、正面に島が見えるでしょう」。そういって、中村氏はヨット前方を指さした。青い波の彼方、意外なほど近く緑豊かな島が浮かんでいるのが見える。ゆっくり舵輪を回しながら中村氏は言葉を続ける。

「あれが伊王島です。当時、私はこの伊王島に3DCAD センターを作ろうと構想していたんですよ。で、そのオペレータを訓練する教材に、軍艦島は最高だと考えたんです」。このプロジェクトにおいて重要な課題と なったのが、センターで「どの3DCAD を使うか?」である。中村氏自身は以前から3DCAD を試用してきたが、事業化となるとまた視点が違ってくる。あらためてあらゆる3DCAD製品を詳細に調査し、比較検討して、最終的にARCHICAD を選定したのだという。

長崎港再開発コンペ応募作incubator 1991年
長崎港再開発コンペ応募作incubator 1991年

 

事務所継続のための 3DCAD 選び

「3DCAD センターで使うCAD をどれにするかは、当初から最重要課題と思っていました。実際、ツールの選び方を間違えると、事業は簡単に潰れてしまいます。事務所経営の経験から私はそ れが分っていました」。そう語る中村氏に ARCHICAD 選定の経緯についてあらためて聞いた。同氏は軽く頷くと艇の進路を確認し、舵をオートパイロットに任せながら言葉を続けた。

「アトリエ事務所が導入できる CAD はせいぜい2〜3台。しかも所員はいずれ事務所を移ったり独立します。だから所長も使えなければならないし、新人には1〜2年で習熟してもらう必要があ る。でないと事務所は継続できません」。実は自分も何度も失敗したと中村氏は言う。古参スタッフやオペレータに頼り過ぎ、いざ彼らがいなくなるとたちまち お手上げになったのだ。

「となると選ぶべき 3DCAD はまず“教育訓練しやすい”もの。そして“トラブルなくバージョンアップされる”こと、“先生が自分でも使える”ことが重要になる。こうした条件を前提 に、当時の主要 3D CAD 製品全部でデータ入力から1つ建物を作り比べたんです」。結果、行き着いたのが ARCHICAD だったのである。

「歳を取ると3次元を勉強するのもなかなかやっかいなので、自分のためにも、やはり扱いやすくて高性能な 3DCAD が必要でした。贅沢な要求ですが、その要求に一番近かったのが ARCHICAD だったんです。建築の手順やイメージをそのままトレースして形にできる。より組み立てやすく模型感覚に近い CAD だったんですね」。

中村氏が伊王島で進めていた3DCAD センターの事業化プロジェクトは、残念ながらさまざまな事情から中止となってしまった。しかし、これを契機に中村氏の事務所に導入されたARCHICAD は、そのままメインツールとなって活用フィールドを広げていったのである。

実測調査資料集に基づき復元した軍艦島遠景
実測調査資料集に基づき復元した軍艦島遠景
崖地にへばりついて建てられた軍艦島日給社宅
崖地にへばりついて建てられた軍艦島日給社宅

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