Archicad活用事例●トヨタ T&S 建設株式会社
2022年7月4日

PCa工法とArchicadとのマッチングで、より安心安全なものづくりを

左から順に、設計部兼BIM 推進グループの小島渉さん、北川幸尚さん、中條江里さん、平松達郎さん。

いち早く不燃住宅の研究に着手し、組立式鉄筋コンクリート住宅の先駆けとなったトヨタT&S建設。

トヨタT&S建設には、一般建築に加えて「PCa(プレキャストコンクリート)工法」という特別な技術がある。この技術は、母体であるトヨタ自動車の創業者・豊田喜一郎氏が、戦後の日本の焼け野原を見て、「燃えない住宅を世の中に広く普及させたい」という強い思いから生まれた。

当時、木造の住宅価格で鉄筋コンクリート住宅を建てることを可能にした工法は、ものづくり大国の日本を長く牽引してきたトヨタのDNA がなせる技。そんなトヨタT&S建設とArchicad との関係は、車のディーラーが広告などで使うための店舗パースに使っていたことが始まりだった。

BIM 推進グループ・設計部の小島渉さんが、20 年前の当時を振り返る。
「その頃は Archicad の販売自体も、BIMソフトという位置付けではなく、3D のパースを表現できるソフトという見せ方でした。そのため、車の販売店舗の外観図として使っていたようです。その後、モデルに色を付けたり、テクスチャーの表現が増えたり、素材の情報を入れられるようになったりと、Archicad が進化した流れに合わせて、われわれもBIM として使うようになったのです」
トヨタT&S 建設では、設計部が意匠、構造、設備、積算と分かれており、分業作業となる。まずは、とくに意匠グループに配属されるデザインを得意とする人が、パースを描くときにArchicad を使うようになったという。

PCa工法 × Archicadの設計でさらに進んだ効率化

トヨタT&S 建設の強みであるPCa 工法では、建物の構造体や部材などをあらかじめ専門工場で製造して現場に輸送し、揚重機を使って組み立てていく。通常は現場でコンクリート製品を完成させることが多いため、天候に左右されたり、熟練工不足で品質にムラが生まれたりしがちだが、そうした心配は不要だ。

「Archicadとの相性はとてもいいです」
と、BIM 推進グループ・部長の北川幸尚さん。
「PCa 工法では、工場で標準化された部品を作るので、想定できる素材をあらかじめ設計するんです。だから、計画段階から完成形を“見える化” できArchicad の設計は、使いやすいですね」

「意匠、構造、設備と、それぞれでデータを作ってArchicad 上でそのデータを集約することができるのは、われわれのように分業制の会社にとっては使いやすいですね」と北川さん。
現在は、Archicad で作ったモデルから積算ができるフローを思考中だという。

 数多くあるBIM ソフトの中でArchicad を選んだ理由は、「パースでイメージを表現しやすかったのでプレゼン資料を作りやすかった点、それから、レンダリングが早くてきれいに仕上がる点。他社データとの互換性もよく、総合的に判断して、全てのツールをひとつのソフトで使う際にメリットを感じました」
そう話すのは、BIM 推進グループ・主任の中條江里さん。
「Archicad は他社のソフトに比べて、基本操作がとても使いやすく設定されています。高度なことができるソフトなんですが、1 日弱の講習でなんとなく建物が作れるようになりました。足場の図面を描くなど、目的に合わせてコマンドを選べば、直感的に作ることができます」
と、小島さんも続く。今では、社内の意匠担当者全員がArchicad を使えるようになったという。

小島さん、中條さん、北川さんは、会社がBIM を主軸に運用するために発足した、BIM 推進グループの主要メンバーだ。
「2024 年を目標に、まず第 1 段階として本社以外の支社営業所のメンバー全員が使えるようになることを目指しています。そのために、リーダーとサブリーダーを支社内の各部署から選任しました。営業所ごとに取り扱う建物が異なるので、次のステップでは、その特色に合わせた使い方をそれぞれでチャレンジしてもらう予定です。そういうふうに各自が自分に合った技術を修得していけば、お互いに情報を共有することもでき、BIM をメインにした運用がどんどん広がっていきます」

本社は、トヨタのものづくりDNA が根付く愛知県豊田市にある。他に、3 つの工場、3 つの支社、5 つの営業所、5 つの出張所が全国に点在する。

Archicadで出来ることを共有し、応用していく。
広がるほどに、見える世界が広がっていく取り組み

Arichicad の技術習得には、「グラフィソフトが開催する講座を受けたり、教材資料を活用したりしている」という中條さん。グラフィソフトには、お客さまに寄り添うカスタマーサクセスチームがあり、お客さまの声から必要とされる技術修得のセミナーなどを随時案内している。「設計をしながら、画面横に出てくるメールをチェックしたり、グラフィソフトのyoutube『BIM 相談室』に耳を傾けたりして、常に最新情報にアンテナを張っています。有料級の役立つ情報が無料で入手できるので、とても役立っています」

共有事例① 会社のナレッジとして蓄積されていく「創意工夫」レポート

トヨタT&S建設では、毎月全社員が提出する「創意工夫」というレポートがある。「自分が当たった課題を他の社員のヒントに」という思いでまとめる「創意工夫」レポートでは、見えづらい設計での表現の工夫や、複合構造での複雑なデータをラベルツールを使ってわかりやすくリスト化する方法など、みんながArchicad を使っていく際に応用できる情報を教え合う。

応用事例① 一つのデータで完成形のイメージが可能になった、デジタルモックアップ

①防水シート②ガルバ③屋根など、意匠ごとに“見える化” したモックアップ。

「これは、小さな工場の複雑な設計部分だけを抜粋したデジタルモックアップです。もともとは現場で実際に材料を取り寄せて検証する予定だったのですが、Archicad を使って3DCAD で描けるようになったので、予算と時間が大幅に削減できました。修正する時も、パソコンの画面上で1 か所修正すれば、すべての図面に反映されます」
と、中條さん。他のソフトを使っている構造や設備担当者にも、データを引き継ぎやすい設定に工夫しているという。
「熟練の職人さんになると事前にわかる部分かもしれませんが、若手の社員や部下と一緒に作業する場合は、どこにリスクがあるのかイメージするのはまだむずかしい。デジタルモックアップでは、施工手順を画面上で順を追って確認することができるし、問題がないかどうかも施工前に細かくチェックできるので、誰が設計しても安心な図面ができ、現場の負担を減らせるようになったのはうれしいですね」

応用事例② 制約のない外部との連携で、知識や技術を修得する

最近では、株式会社エスエスアイ・ラボが提供しているマッチングサービスを活用して、外部ともArchicad 上で仕事を行なっている。
「これまでは、地元で交流がある会社にしか外注をしていなかったのですが、このサイトで出会う会社は全国津々浦々。
Archicad は意匠に特化しているところがあるので、正直なところ施工や製図でArchicad を使える会社は少ないのかな思っていたのですが、意外とやっているところが多くて驚きました。BIM 上で完成形は共有できますし、Archicad のチームワークを使ってクラウド上で作業内容を随時確認で
きるので、今のところ距離のデメリットは感じていません。
協働していく中で、私たちが知らない相手の知識や技術も吸収できるので、一気に視野が広がりました」
BIM 推進グループを筆頭に、今後もBIM 改革に取り組む。

詳しくは、グラフィソフトジャパンのウェブサイトで。

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