山岳トンネル工事の岩判定会議を“バーチャル開催”
遠隔地での切羽評価の実現可能性を確認(大林組コンソーシアム)
2020年2月26日

岩判定会議をバーチャル開催するイメージ

岩判定会議をバーチャル開催するイメージ

大林組コンソーシアム(大林組・伊藤忠テクノソリューションズ)は、山岳トンネル工事で前方の岩質変化などをわかりやすく表示する「予測型CIM」をクラウド化し、岩判定会議の“バーチャル開催”を試行した。その結果、遠隔地でも切羽評価が実現可能であることを確認した。遠隔地にいる発注者や専門家が、クラウド経由で現場の検査に立ち合えることで「移動のムダ」削減による生産性向上や働き方改革の実現も可能になりそうだ。

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   岩判定会議の“バーチャル開催”を試行

発注者の主任監督員は、遠隔地からモニターに映る映像を見て「切羽の右上を映して」「湧水箇所をアップで見せて」と、切羽にいる技術者に指示した。すると、モニターには確認したい地山箇所が映るとともに、その箇所の詳細な状況の説明を受けることができる。まるで切羽にいるような感覚で、岩判定会議が進んでいった。

大林組と伊藤忠テクノソリューションズからなる大林組コンソーシアムが、福井県と岐阜県の県境に位置する冠山峠道路第2号トンネル(発注:国土交通省近畿地方整備局)の現場で行った、岩判定会議を“バーチャル開催”する実証実験の一コマだ。

遠隔地にいる発注者からの指示に基づき、切羽の映像をスマホで撮影する技術者

遠隔地にいる発注者からの指示に基づき、切羽の映像をスマホで撮影する技術者

実験が行われたのは2020年1月22日だ。山岳トンネル工事で前方の岩質変化などをわかりやすく表示する「予測型CIM」をクラウドシステム化し、前方地山の情報を現場から発注者の事務所に見立てた遠隔地(現場事務)へ伝達した。

さらにWeb会議システムを用いてトンネルの掘削最前線から遠隔地へ、坑内Wi-Fiと公衆電話回線を介してリアルタイム中継した。切羽でのWeb会議にはスマートフォンを用いている。

遠隔地では切羽から送られてくるスマホの映像や、伊藤忠テクノソリューションズが情報共有プラットフォーム「CIM-LINK」上に構築した予測型CIMの画像などを見ながら、切羽にいる施工者と会議を行った。

こうして岩判定会議を切羽から離れた場所で“バーチャル開催”するという、前例のない取り組みが実現したのだ。

実証実験で使われた通信システム

実証実験で使われた通信システム

この日の岩判定会議には、発注者である国土交通省福井河川国道事務所の監督職員2人、大林組の技術者4人、そして伊藤忠テクノソリューションズの技術者4人が参加した。

このプロジェクトは、国土交通省が内閣府の「官民研究開発投資拡大プログラム」(略称:PRISM)を活用して進める、「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」の一つとして2019年度に同コンソーシアムが取り組んでいるものだ。

   驚くほど鮮明なスマホからの映像と音

「これまで岩判定会議は、切羽の前でしか行えないと思っていましたが、クラウドシステムによって遠隔地でも行えることが実感できました」と大林組トンネル技術部上席主席技士の木梨秀雄氏は語る。

その理由は、スマホで撮影した写真や動画の鮮明さだ。「スマホで切羽や岩盤をアップで撮影した写真や動画は、暗いところも明るく写っているので、現場を肉眼で見るよりもわかりやすいくらいでした」(木梨氏)というほど、切羽の様子をリアルに伝えることができたのだ。

また、岩盤をハンマーで打撃する様子もスマホでリアルタイムに撮影して、視覚だけでは伝わらない様子も中継した。

ハンマーによる側部岩盤の打撃試験。リアルタイムに遠隔地のモニターに映し出された

ハンマーによる側部岩盤の打撃試験。リアルタイムに遠隔地のモニターに映し出された

これらの映像は、音付きで現場事務所のモニターに映し出され、まるで現場に行っているかのように切羽の状態を理解できた。

主任監督員らは、これらの映像や音などに基づき、現場事務所で切羽の評価を行った。

   現地切羽と遠隔地の評価比較

その後、従来の岩判定会議と同じ方法で切羽を直接観察し、切羽評価を行った。

国交省の主任監督員からは、「遠隔地で行った採点結果に比べて、各項目の差はプラスマイナス1点差に収まっていた。ほとんど差異はないので、実用化の可能性がある。支保パターンを継続する時の岩判定会議であれば、活用を始めやすいのでは」という講評があった。

切羽の前で岩盤の評価を行う主任監督員

切羽の前で岩盤の評価を行う主任監督員

一方、課題もあった。主任監督員からの指摘事項としては、モニターを通じて見た動画では、湧水の位置は色で判断できたが流れが確認できなかったことや、岩盤の表面の状態がわかりにくかったことが挙げられた。

また、打撃調査のハンマー音もスピーカーを通すと変わっており、圧縮強度の判定が難しいという指摘もあった。

これらの原因の多くは、通信環境が悪いことによるものだ。今後の対策としては、通信環境を改善するほか、撮影時にライトやカメラワークを工夫したり、3Dカメラを使ったりして解決できる可能性がある。

岩盤には所々、鏡肌と呼ばれる光沢のある割れ目面を有した箇所があり、カメラワークを工夫することで、これらの状態もわかりやすく映像で伝えられそうだ

岩盤には所々、鏡肌と呼ばれる光沢のある割れ目面を有した箇所があり、カメラワークを工夫することで、これらの状態もわかりやすく映像で伝えられそうだ

「今後は写真から3Dモデルを作るフォトグラメトリーなどを併用して、遠隔地でも切羽の3D形状が把握できるようにすれば、さらに高精度な評価ができるでしょう」と大林組生産技術本部 トンネル技術部 技術第二課主任の鈴木拓也氏は語る。

   「移動のムダ」削減や専門家の遠隔参加も可能に

今回の実証実験を行った冠山峠道路第2号トンネルは、岩判定会議へ参加するために発注者が主任監督員福井河川国道事務所から往復約3時間かけて移動する。

岩判定会議をバーチャル開催し、発注者が自分のオフィスから遠隔参加できるようにすれば、移動時間が不要になり、その時間で別の仕事をこなすことができるのだ。そのため、今回の実証実験は、発注者にも好評だった。

今回の実証実験が成功したことで、山岳トンネル工事の岩判定会議だけでなく、現場での働き方改革に大きな可能性が出てきた。

「本システムは立会業務全般に応用できます。ロックボルトの挿入状況やモルタル充填状況など後に不可視となり施工時にしか確認できない状況の立会などに活用することで、移動のムダ削減だけでなく、スケジュール調整の難しさからも解放されそうです」と大林組技術研究所 地盤技術研究部主任の藤岡大輔氏は語る。

また、伊藤忠テクノソリューションズ 建設ビジネス推進部建設システム課の山根裕之氏は「岩判定会議がクラウド上で開催されることで、難しい判断を迫られるときは全国各地の大学の先生など、岩盤の専門家にも参加してもらえるようになるでしょう」と展望を語る。

岩判定会議を“バーチャル開催”することで、いざというときには、全国各地から大学の先生など、岩盤の専門家にも参加してもらうこともできそうだ

岩判定会議を“バーチャル開催”することで、いざというときには、全国各地から大学の先生など、岩盤の専門家にも参加してもらうこともできそうだ

鈴木氏は「今回の試行は既存のICTツールを組み合わせて活用することで達成しました。どうやったら上手く利用できるかに着目した取り組みです。昨今、急速に進んだICTツール開発ですが、実際に使いこなすのは難しいことが多いです。次のステップとして、その活用方法に注力するのが今後目指す方向になると思います。」と、プロジェクトを振り返る。

国交省の「i-Construction」施策の中核となるBIM/CIMは、クラウド化して遠隔地で使うことで、移動のムダ削減など、さらなるメリットが生まれることも実証したと言えそうだ。

岩判定会議の“バーチャル開催”を実現した技術者たち

岩判定会議の“バーチャル開催”を実現した技術者たち

 【問い合わせ】
株式会社 大林組
生産技術本部 トンネル技術部
〒108-8502 東京都港区港南2-15-2 品川インターシティB棟
TEL 03-5769-1319、FAX 03-5769-1976
WEBサイト https://www.obayashi.co.jp

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
科学システム本部 建設ビジネス推進室
〒141-8522 東京都品川区大崎1-2-2 アートヴィレッジ大崎セントラルタワー
TEL 03-6420-2666、FAX 03-3494-1940
WEBサイト https://www.ctc-g.co.jp/

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