並行する橋桁を“追っかけ施工”した北条高架橋! KOLC+でBIM/CIMによる「4D工程管理」を実践活用(コルク)
2023年10月23日

鳥取県東伯郡北栄町で施工中の北条高架橋は、2cm間隔で並行する上下線用の橋桁を1スパン差で追いかけるように同時施工している。追いかける下り線側を施工する極東興和(本社:広島市東区)は、BIM/CIM共有クラウド「KOLC+」を導入し、4Dを軸とした統合モデルをクラウド上に構築。4Dモデルでの工程調整や施工計画を実践投入したほか、VR・ARを使った安全管理や工程説明にも活用し、効果を上げている。

先行する上り線工事(右側)を追いかけるように施工する下り線工事(左側)

先行する上り線工事(右側)を追いかけるように施工する下り線工事(左側)

「KOLC+」で構築した2現場の統合モデル。BIM/CIMモデルをクラウド上で統合し、工程表と連動して着工から完成までの工程を4Dシミュレーションできる

「KOLC+」で構築した2現場の統合モデル。BIM/CIMモデルをクラウド上で統合し、工程表と連動して着工から完成までの工程を4Dシミュレーションできる

  2cm間隔で並ぶ橋桁を時間差施工

鳥取県北栄町で施工中の北条高架橋では、140m区間の上り線・下り線の中空床版橋がわずか2cm間隔で並ぶ。工期の関係上同時施工が必要な状況のため、上り線側をピーエス三菱が先行して施工し、下り線側は極東興和が1~2スパン差で追いかけるように“時間差施工”しているのが特徴だ。

実際の工事箇所の断面図

実際の工事箇所の断面図

上り線(左側)と下り線(右側)の橋桁はわずか2cm間隔で並ぶ。隣接工事だけに精密な工程調整や施工計画が要求された

上り線(左側)と下り線(右側)の橋桁はわずか2cm間隔で並ぶ。隣接工事だけに精密な工程調整や施工計画が要求された

下り線側の工事を担当する極東興和 広島支店技術部工事課の茶木悟氏は「今までのやり方では、それぞれの事務所に足を運び、図面で状況を確認し、発注者へも都度共有するのが通例でした。今回の工事をどうスムーズに進めるか検討した中で、発注者の国土交通省 中国地方整備局 倉吉河川国道事務所の山﨑泰宏氏から『4D工程管理を活用してみてはどうか』との提案がありました」という。

先行する上り線工事を担当するピーエス三菱 広島支店 土木工事部 工事長の粟田伸一郎氏は、「Autodesk NavisworksでBIM/CIMモデルを既に作成していました」と振り返る。

そこで、下り線でもNavisworksで4Dシミュレーションを作成することが決まった。しかし、問題はそれぞれの工区で作成した4Dモデルをどのように合体して、隣接する工事同士の工程調整や施工計画を行うかだ。茶木氏は「各種システムを検討した結果、4Dモデルをクラウドで統合できる『KOLC+』を導入することになりました」と説明する。

KOLC+とは、BIM/CIMモデルや点群データを統合してデジタルツイン現場アプリを構築できるクラウドサービスだ。様々なファイルや写真、ライブ映像、計測データ、GNSSなどを連携させて工事関係者間で共有できる。ユーザーはウェブブラウザーとネット回線があればどこからでもデータにアクセスでき、現場のiPadでも参照可能だ。

BIM/CIM共有クラウド「KOLC+」のイメージ図

BIM/CIM共有クラウド「KOLC+」のイメージ図

  KOLC+で工程を4Dシミュレーション

極東興和は2023年1月に、シー・アンド・エヌ ネクスト(本社:鳥取県米子市。以下、C&NN)の営業統括、小谷泰樹氏を通じて「KOLC+」を導入し、同社に4Dモデルの作成を依頼した。C&NNは、3次元モデル作成やBIM/CIM活用支援、建設ITサポート事業などを手掛けている。

小谷氏は「今回、様々なツールを検討した結果、ネット環境があれば皆が現場の状況が分かり、使いやすい点が気に入り、お勧めしました」と話す。

取材には受注者のほか発注者、他工区の施工者、4Dモデル作成者が一堂に会した

取材には受注者のほか発注者、他工区の施工者、4Dモデル作成者が一堂に会した

C&NNの技術担当リーダー、野坂浩一氏は「極東興和とピーエス三菱から、それぞれが施工する構造物のBIM/CIMモデルをもらい、下り線工事の支保工や仮設足場モデルにタイムライナーを設定した後、KOLC+上でNavisworksを統合しました。BIM/CIMモデルの各部分は工程表とひもづけられているので、タイムライナーの時間軸のスライダーを動かすと、着工から完成までをパラパラ漫画のように4Dシミュレーションできます」と説明する。

上下線の4Dモデル(Navisworks)をKOLC+で統合して共有したイメージ

上下線の4Dモデル(Navisworks)をKOLC+で統合して共有したイメージ

「特に各工程の始まりと終わりの部分は注意が必要です。前工程の足場解体が終わっていないのに、次工程の足場架設が始まると干渉が発生し、手戻りなどの原因となります。KOLC+で工程を精密に確認・調整することで、スムーズな施工が行えます」と極東興和 工事統括課の下向井隆希氏は説明する。

KOLC+の4Dシミュレーション機能で確認したところ、当初の工程では先行する上り線(右側)に、後から施工する下り線(左側)の支保工(足場)が干渉することが判明した

KOLC+の4Dシミュレーション機能で確認したところ、当初の工程では先行する上り線(右側)に、後から施工する下り線(左側)の支保工(足場)が干渉することが判明した

そこでKOLC+上で工程表を調整し、施工計画段階で足場の干渉を防ぐことができた

そこでKOLC+上で工程表を調整し、施工計画段階で足場の干渉を防ぐことができた

  4D工程計画を本社と共有。応援人員のタイミングを調整

現場事務所での工程会議では、KOLC+の4D工程をクラウド上で調整し、工程表の最新化を行った。国土交通省の山﨑氏は「クラウドで編集すれば、変更後の工程表を関係者がすぐに確認できるのが良いところです」と話す。

この最新化された4D工程計画は、極東興和の本社ともKOLC+で共有された。極東興和の茶木氏は「コンクリート打設時は、広島の本社から鳥取の現場まで4~5人が応援に行きますが、本社でもKOLC+を確認しているので、いつごろ、コンクリート打設が行われそうかが確認できます。そのため、現場と頻繁に電話連絡などを行わなくても、現場に行くタイミングが予想できました」と語る。

現場事務所で決まった工程で更新された4D工程表は極東興和本社でも随時確認し、応援のタイミングを予想できた

現場事務所で決まった工程で更新された4D工程表は極東興和本社でも随時確認し、応援のタイミングを予想できた

現場の進ちょく状況などがわかる4Dモデル。広島市の本社でもこれと同じものが常時、見られる

現場の進ちょく状況などがわかる4Dモデル。広島市の本社でもこれと同じものが常時、見られる

  統合モデルを「支保工の高さ管理」に活用

構築した統合モデルは、工程計画のほかにも幅広く活用している。例えば、型枠を支える柱となる支保工の高さは、設計との誤差があるとコンクリート打設時に荷重が集中し、崩壊の危険がある。

そこで型枠組み立て時には、統合モデルのデータから設計値を参照しながら、自動追尾式トータルステーション「杭ナビ」で支保工1本1本の高さを計測し、施工精度を確認した。

「従来は2~3人1組で行っていた作業ですが、KOLC+で取得した座標をもとにトータルステーションに入力して位置確認することで1人でも測量できました。その結果は統合モデル上に表示して、情報共有を図りました」と、下向井氏は説明する。

計画通りの位置に支保工があるかを確認するため、KOLC+で大座標を拾い、自動追尾式トータルステーション(杭ナビ)で位置確認を行った

計画通りの位置に支保工があるかを確認するため、KOLC+で大座標を拾い、自動追尾式トータルステーション(杭ナビ)で位置確認を行った

KOLC+の計測ツールで支保工の大座標を取得している様子

KOLC+の計測ツールで支保工の大座標を取得している様子

支保工を1本ずつ再現したデジタルツイン。現場で計測した高さデータもデジタルツイン上で参照できるようにした

支保工を1本ずつ再現したデジタルツイン。現場で計測した高さデータもデジタルツイン上で参照できるようにした

  BIM/CIMを墨出しや施工計画、VR・ARにも活用

さらに、BIM/CIMモデルと自動墨出しロボット「SumiROBO」を活用した型枠の墨出しにも挑戦した。「実際にやってみると、大座標への変換に苦労したり、直射日光が当たると熱で止まってしまうなど課題もありました。しかし、前日に自動で墨出しされていれば翌日すぐ作業が開始できるので、今後、人材不足の改善にも役立つと思います」と極東興和の茶木氏は話す。

自動墨出しロボット「SumiROBO」を使った墨出しの様子

自動墨出しロボット「SumiROBO」を使った墨出しの様子

また、橋桁のコンクリート打設時には、複数のコンクリートポンプ車を配置する位置や、打設用のブームやアームが足場と干渉せずに打設範囲をカバーできるかといった精密な施工計画にも使われた。

コンクリート打設を待つ橋桁の型枠(左)。Autodesk Navisworksを使用し、コンクリートポンプ車の打設可能範囲を確認した(右)

コンクリート打設を待つ橋桁の型枠(左)。Autodesk Navisworksを使用し、コンクリートポンプ車の打設可能範囲を確認した(右)

コンクリートポンプ車の打設可能範囲を「半球ドーム」で可視化したもの

コンクリートポンプ車の打設可能範囲を「半球ドーム」で可視化したもの

この現場では、1カ月に4時間以上の安全教育が義務付けられている。そこで高所作業をVRゴーグルで体験しながら、危険を体験・予知する訓練や、翌月の作業の手順や流れを説明することも行われている。言葉だけでコミュニケーションが図りにくい外国人労働者に対して、作業手順を説明するときも、アニメーションやVRによる説明は”万国共通語”として機能している。

このほか、GNSSを搭載したニコン・トリンブルの屋外型ARシステム「Trimble SiteVision」や、裸眼で3Dモデルを立体視できるソニーの「空間再現ディスプレー(Spatial Reality Display)」を使って、地域住民を対象にした現場見学会や現場の安全教育で、将来の現場がどう変わるかを3Dのイメージで説明した。

BIM/CIMモデルを「Trimble SiteVision」で活用

BIM/CIMモデルを「Trimble SiteVision」で活用

コンクリート打設前の現場の高欄

コンクリート打設前の現場の高欄

コンクリート打設後の高欄イメージ

コンクリート打設後の高欄イメージ

全日本建設技術協会を招いたイベントではKOLC+の4Dシミュレーションを使った現場説明を実施した

全日本建設技術協会を招いたイベントではKOLC+の4Dシミュレーションを使った現場説明を実施した

国土交通省の山﨑氏は「ここまで4Dモデルを活用している現場はなかなかないと思います」と最後に語った。

現場で3D/4Dモデルを使用して統合モデルを作成することは、「移動のムダ」を削減できる特効薬であることは認知されつつある。

この現場では、それにとどまらず、外国人労働者を含む現場の安全管理や、周辺住民の理解度の向上によるスムーズな施工など、単純な生産性向上の定義では計り知れない効果を上げているようだ。

左から極東興和 下向井隆希氏、C&NN 小谷泰樹氏、国土交通省 山﨑泰宏氏、ピーエス三菱 粟田伸一郎氏、C&NN 野坂浩一氏、極東興和 茶木悟氏

左から極東興和 下向井隆希氏、C&NN 小谷泰樹氏、国土交通省 山﨑泰宏氏、ピーエス三菱 粟田伸一郎氏、C&NN 野坂浩一氏、極東興和 茶木悟氏

※現場の今は「TikTok」でも配信されている:https://www.tiktok.com/@hozyokokakyo

 【問い合わせ】
株式会社コルク
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-11-1 メトロポリタンプラザビル14階
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問い合わせ https://kolcx.com/support/contact/
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