【2023年MRデバイス徹底比較】代表的な6製品の紹介と特長を解説
2023年4月24日

こんにちは。エム・ソフトの有村です。

エム・ソフトは、MR(Mixed Reality)の技術を活用した個別のアプリ開発や自社アプリの提供などを日々行っています。
MRの技術を活用することで、ホログラムやバーチャルオブジェクトを実際の空間に重ねることができ、様々な産業分野で活用されています。

たとえば製造業においては、製品の組み立て作業の際、MRデバイスで実際の製品の3Dモデルを見ながら作業を行うことで、作業の正確性や効率性を高めることができます。

建設業においては、建物の設計図をMRデバイスで表示し、実際の建設現場で3Dモデルを重ね合わせることで、施工の進捗状況や設計の不備をリアルタイムで確認することができます。

当ブログでは、2020年にMRデバイスの種類や特長について紹介した記事を書きました。

あれから約3年、2023年現在の現状はどうなっているのでしょうか?
今回の記事では、最新の情報をもとに、MRデバイスの現状、それぞれのデバイスの特長、各デバイスの比較について改めてまとめてみたいと思います。

【2020年MRデバイス徹底比較】HoloLens 2、Magic Leap 1、NrealLightの特長は?
https://biz-ar.jp/news/blog/2020/04/mr-glass-comparison/
こんにちは。エム・ソフトの有村です。NTTドコモが、Magic Leap製のウェアラブルヘッドセット「Magic Leap 1」を5月に発売することを発表しました。昨年にはKDDIも中国のnreal社と戦略的パートナーシップを締結し、MRデバイス「NrealLight」の国内利用向けの対応をサポートすると発表しており、これからの5G時代に向けてMRの取り組みが日本国内でも進んできています。このように、近年ますます注目を集めるMRデバイスですが、「それぞれの製品の違いや特長がわからない。。。」といった方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。そこ…

MRデバイスの活用が広がる中、企業や研究機関での実用化が進みつつあり、今後の発展が期待される技術であるため、自社のMR導入、活用について考えるきっかけとなれば幸いです。

そもそもMRとは何か

そもそもMRという言葉に馴染みのない方もいらっしゃると思うので、簡単に説明します。

MRは、Mixed Reality(複合現実)の略で、現実世界と仮想空間を融合させることで、新しい体験を提供する技術です。
特殊なカメラやセンサーの付いているMRデバイスを装着することで、現実と仮想の空間を重ね合わせ、現実世界と仮想世界を同時に体験することができます。

AR(拡張現実)とVR(仮想現実)を組み合わせたような技術、と理解いただくのがわかりやすいかもしれません。

MRデバイスには様々な種類があり、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)型やメガネ型など、様々な形状のデバイスがあります。
これらのデバイスを使用することで、現実世界の風景やオブジェクトにバーチャルな情報を追加することができます。

例えば現実世界に現れた仮想物体をいろんな角度から見たり、触って動かしたりすることができます。また、VRでは難しい歩き回るといったことも、現実世界をベースにするMRでは実現可能になります。

MRについてのその他の情報はこちらのページをご覧ください。

技術について知りたい|MR(複合現実)とは|ビジネスに強いARの企画・開発【BIZ-AR…
https://biz-ar.jp/knowledge/mr.php
AR(拡張現実)技術を使った新しいプロモーション、販促、印刷物、観光案内に役立つ新しいARサービスプラットフォームです。BIZ-ARならマーカーレスやエアタグを使ったARサービスやARアプリををすぐに利用できます。iPhone/iPad/Android対応。

代表的なMRデバイス

MRデバイスには、多くのメーカーが製品を展開しています。代表的な製品としては、以下のようなものがあります。

・HoloLens 2(Microsoft)
・Magic Leap 2(Magic Leap)
・Nreal Light(Nreal)
・Nreal Air(Nreal)
・Meta Quest Pro(Meta)
・VIVE XR Elite(HTC)

それぞれの製品には、独自の特徴や強みがあります。以降では、それぞれの製品について詳しく説明します。

HoloLens 2(Microsoft)

出典:https://www.microsoft.com/ja-jp/hololens/hardware

HoloLens 2は、Microsoftが開発・販売する、ヘッドマウントディスプレイ型のMRデバイスです。HoloLens 2は、前モデルであるHoloLens 1と比較して、より高い解像度と視野角、手の動きのトラッキングにより自然な操作が可能になる等、多くの改良が施されています。また、新しいバッテリーシステムやデザインも改善され、長時間の使用にも耐えられます。

2020年との比較

端末自体の進化という観点では、残念ながら2020年時点にブログを書いた時点からそれほど大きな変更はありません。
以前のブログの時点からHololens 2は発売開始されており、新機種(Hololens 3?)のリリースもまだ未定となっています。

ただし、ソフトウェアのアップデート、機能追加は随時行っています。代表的な変更点は以下です。

・USB 5G/LTE のサポート
→拡張された USB イーサネット機能により、5G/LTE のサポートが可能に

・ WebXR および 360 ビューアー
→Web上のXR(VR,AR)コンテンツや、360度の動画を体験することが可能に

・その他、UI・UXの改善や既存機能のアップデートなど

新デバイスの情報はないものの、現行のHololens 2の時点でもトップクラスの性能であり、現在進行形で様々な分野で使用されている為、今後もしばらくはMRデバイスの代表としてのポジションは維持されるのではないかと予想しています。

特長:外部機器との接続が不要

他の製品ではMRグラスにPCやスマホ、バッテリーなどを接続するタイプが多いのですが、
HoloLens 2はPCや他の機器に接続することなく、ヘッドマウントディスプレイだけで本格的なMR体験を行うことができます。

完全コードレスの為、他製品に比べて移動するときの自由度が高くなります。

特長:ハンド、ヘッドトラッキングによる直感的な操作

HoloLens 2は高性能のセンサーにより、両手の指すべての追跡(トラッキング)ができるようになっています。
また、頭部の動きもトラッキングしており、表示される映像の位置を自動で調整します。

これにより、手や頭の操作のみでホログラムやコンテンツを操作できるようになり、現実空間と仮想空間をよりシームレスにつなげることができる為、より直感的な操作が可能になります。

特長:高画質・広範囲の視覚体験

2K解像度と、水平視野角52度、垂直視野角42度の広い視野角を実現しています。これにより、仮想空間での作業がより自然になり、より広い範囲を見ることができます。
見えている視界に対してのデジタル合成領域が広くなり、よりリアリティのある映像体験を可能とし、使いやすさも向上しています。

活用例

HoloLens 2は、産業分野での活用が期待されており、例えば自動車メーカーでは、車体の設計や生産工程の改善、修理のトレーニングに使用されています。
また、医療分野では手術のシミュレーションや診断支援にも活用されています。

MRデバイスとしては比較的高価格帯であるため、一般消費者向けの市場ではまだあまり普及していませんが、企業や研究機関、教育機関などでの使用が進んでいます。

エム・ソフトのアプリ事例

エム・ソフトは、「Microsoft Mixed Reality パートナープログラムの認定パートナー」に認定されており、HoloLens 2を使ったアプリケーションの開発やMRソリューションの提供を行っております。
以下に自社開発したアプリの例をご紹介します。

Pinspect MR

Pinspect MRは、HoloLens 2による高精度な環境認識機能を用いた点検業務ソリューションです。
点検現場の3次元座標を把握し、その場にデジタル付箋(ピン)をホログラム表示することで、検査箇所を記録・可視化することが可能になります。

サービス一覧|MRを使ったハンズフリーの点検業務ソリューションPinspect MR|ビジ…
https://biz-ar.jp/service/pinspect-mr/
Pinspect MRは、Microsoft社のHoloLensによる高精度な環境認識機能を用いた点検業務ソリューションです。点検現場の3次元座標を把握し、その場にデジタル付箋(ピン)をホログラム表示することで、検査箇所を記録・可視化することが可能になります。

MR Meeting

HoloLens 2を使用し、高精度な環境認識機能を用いた次世代会議ツールです。
現実世界に設置した3Dモデルを複数のユーザとリアルタイムで共有。現実世界を超えたコミュニケーションを実現します。

サービス一覧|次世代MR会議アプリ MR Meeting|ビジネスに強いARの企画・開発【B…
https://biz-ar.jp/service/mr-meeting.html
Microsoft社のHoloLensを使用し、高精度な環境認識機能を用いた次世代会議ツールです。現実世界に設置した3Dモデルを複数のユーザとリアルタイムで共有。現実世界を超えたコミュニケーションを実現します。

Magic Leap 2(Magic Leap)

出典:https://www.magicleap.com/ja-jp

Magic Leap 2は、米国Magic Leap社が開発したAndroidベースのヘッドセットです。複数のセンサーとシースルー型のヘッドセットにより、AR体験はもちろん、高度なMR体験を可能にしています。
2020年6月に同社から発売されたMagic Leap 1の後継機になります。

日本ではまだ発売されていませんが、2023年初頭に発売予定との告知がされています。

2020年との比較

以前のブログ公開時点ではMagic Leap 1が発表されて間もないタイミングだった為、後継のMagic Leap 2がリリースされたことで、以前より大きな進化があったと言えます。

以前のMagic Leap 1がコンシューマー向け、エンターテインメント向けのデバイスとして売り出していたのとは対照的に、Magic Leap 2では法人向け、産業向けの利用を想定しており、デバイスとしてのコンセプトはもちろん、利用シーンが大きく変わり、今後の動向が気になるデバイスです。

特長:長時間利用しても疲れにくい

Magic Leap 2はヘッドセットがプロセッサ・バッテリー・コントローラと分離しており、通常のヘッドセットと比較して軽いデバイスとなっています。
Magic Leap 1の時点からこの方式を採用していましたが、2になったことでさらなる軽量化に成功しています。
これにより、装着ストレスが少なく、長時間装着していても疲れにくい仕様です。

特長:操作性の高いコントローラ

Magic Leap 2はコントローラが搭載されており、片手とコントローラで操作を行います。

コントローラーを使用することで、例えば視界に入っていない範囲の手の動きを読み取るといったことができるようになります。両手を使用するHoloLens 2とはまた異なった操作性の高さを体験することができます。

特長:独自の視覚技術と視野角の広さ

高度な技術を用いた自然な映像表現です。Magic Leap社が独自に開発した「6DoFリアルタイムポジショニング」と呼ばれる技術により、リアルな立体映像を実現しています。また、視野角が95度と広く、リアルな世界観を体感できます。

また、Dynamic Dimming(動的調光)と呼ばれる新機能が導入されており、明るい(暗い)場所でも安定して画面を表示させることが可能です。

活用例

Magic Leap 1がコンシューマー向け、エンターテインメント向けの利用も想定していたのに対し、Magic Leap 2はほぼ企業向け、産業用途としての利用を想定したデバイスとなっています。
このため、今後はHololens 2のように、企業や研究機関などでの活用が広まっていくことが想定されます。

Hololens 2よりも後にリリースされたこともあり、処理性能や画角等などMagic Leap 2の方が上回っている点も多く、今後は産業用途での活用事例が多くなりそうです。

エム・ソフトのアプリ事例

XRコンテンツ「Tokyo Godzilla Museum」 ※Magic Leap 1を使用

株式会社NTTドコモと東宝株式会社が共同で制作したXRコンテンツ「Tokyo Godzilla Museum」のアプリ開発を担当しました。Magic Leap 1を通して見ることで、ジオラマの中で繰り広げられるゴジラのバトルを目の前で体験することができます。

XRコンテンツ「Tokyo Godzilla Museum」|活用事例|ビジネスに強いARの企画・開発…
https://biz-ar.jp/casestudy/tokyogodzillamuseum.html
株式会社NTTドコモと東宝株式会社が共同で制作したXRコンテンツ「Tokyo Godzilla Museum」のアプリ開発を担当しました。

Nreal Light、Nreal Air(Nreal)

出典:https://www.nreal.ai/

Nreal Light、Nreal Airは中国のNreal Ltd.が開発した、軽量さと低価格さが特長の次世代MRグラスです。
従来では、高価・高機能が当たり前だったMRグラスを一般消費者にも手の届く価格帯にまで下げたことで、MR市場で新たな需要を生む製品として注目を集めています。日本市場参入に力を入れており、Nreal AirはNTTドコモ、KDDI、さらにソフトバンクの3大キャリアで取り扱っています。

2020年との比較

Nreal Lightよりもさらに軽量化、かつ低価格化したNreal Airが新しく発売されました。
これにより、MRが個人の手に届きやすい、より日常的な技術として世の中に浸透していく流れができつつあると考えています。

日本市場にも広く参入しつつあるため、MRデバイスとしては最も早く普及する可能性のある製品となるかもしれません。

特長:小型で低価格

何といっても軽いこと、価格が安いことが最大の特長です。
重量で比較すると、HoloLens 2が566g、Magic Leap 1(ヘッドセットのみ)が325gなのに対し、Nreal Lightは106g、Nreal Airは79gと非常に軽量となっています。

また、価格も他2製品が日本価格で数10万円以上するのに対し、NrealLight,Airは現在数万円台での価格となっており、桁が一つ違うほどの安さとなっています。

特長:メガネ・サングラスのようなデザイン

Nreal Light、Airは日常での使用を想定しているため、普段装着しても違和感がないよう、私たちが普段かけているメガネやサングラスに近いデザインとなっています。

特長:スマホと接続して使用

一般ユーザ向けのNreal Light、 Airは、スマートフォンと接続して利用するように開発されています。
スマートフォンのカメラ機能などと組み合わせて、様々な体験が可能です。

ユーザーはスマホやタブレットの使用に慣れている人が多い為、親しまれやすいというのも一つのメリットと言えるでしょう。

Nreal Light、Nreal Airの違い

どちらも形状や特徴が似ている両グラスですが、以下のような違いがあります。

Nreal Light

・深度カメラ、RGBカメラが搭載されており、より高精度のMR・AR体験が可能

Nreal Air

・約2割の軽量化
・画面サイズが少し大きく動画の再生がしやすい
・画質・音質がLightよりも向上している

活用例

NrealLightは低価格、軽量、小型が最大の強みではありますが、その代わりに他2製品に比べて全体的に性能や機能に制限があります。
この為、ライトなMR体験やイベントでの利用など、一般ユーザが気軽に、日常的にMRを体験できるツールとして期待されています。

その他製品

Meta Quest Pro(Meta)

Meta Quest Proは2022年10月に発売された、Meta社のヘッドセットです。
前機種であるMeta Quest 2はVR機能がメインのデバイスでしたが、Meta Quest ProではMR対応のデバイスとして現実世界と仮想世界をシームレスに繋いたアプリを体験することができるようになりました。
前機種と比べ、コンシューマー向けとしてだけでなく、ビジネス向けの機能にも重点を置いた製品です。

ただし、QuestシリーズはもともとはVRに特化したデバイスとして開発された為、精度や使いやすさなど、MRデバイスとしての実用度はまだそれほど高く無く、
実用的といえるかどうかは微妙な印象です。
現時点ではまだ様子を見ておいて、追加のアップデートや後継機のリリースに期待するのが無難なのでは、と考えています。

とはいえ開発元がMeta社ですから、資金力やリソースなども含め、今後の発展に大きく期待できるデバイスと言えるでしょう。

VIVE XR Elite

VIVE XR Eliteは、2023年1月6日にHTCが発表した新型XRヘッドセットです。ヘッドセット単体で動作する一体型ヘッドセットであり、かつVRに加えてMR表現にも対応しています。
モジュールを付け替えることでVRグラスとして持ち運んで利用することも可能で、優れたグラフィックス性能と高解像度のパススルー機能などを搭載しています。

こちらもMeta Quest Proと同様、MR機能はあるものの、現状はVRの機能の方に重点を置いており、実用的なMRを扱うにはまだまだ発展途上、といった印象です。
また、ゲーム等のエンターテインメントの分野での用途がメインとなっているようで、ビジネスでの利用を想定したデバイスと言えるかは微妙なところです。

ただし、他のデバイスが産業向けの活用に重点を置いていることから、VIVE XR Eliteも近い将来、このあたりを意識したアップデートを行っていくのではないかと考えています。
VR、MRの機能をハイブリッド的に使えるというのは、大きな魅力なので、こちらも今後の動向を期待したいところです。

まとめ

今回は最新のMRデバイスについて、2020年時点と比較して進化した点や、新しく発表されたデバイスについて紹介しました。
要点を整理すると、以下のようになります。

Hololens 2 Magic Leap 1 NralLight その他
・2020年時点から大きな変化はなし
・外部接続機器がなく、移動しやすい
・両手を自由に使える
・高画質、広範囲の視覚体験ができる
・企業、教育機関など産業向けの活用
が進んでいる
後継機のリリースにより、
全体的な性能が向上
・長時間利用しても疲れにくい
・操作性の高いコントローラ
・独自の視覚技術と視野角の広さ
・コンシューマー向けから産業
用途向けにシフトチェンジ
・新たにNreal Airがリリースされ、
MRがより身近に
・小型で低価格
・日常的に使いやすいデザイン
・スマホと接続して使用
・一般ユーザが気軽に日常的に
使えるデバイスとなり得る
Meta Quest Pro(Meta)
VIVE XR Elite(HTC)
など、今後に期待できる
製品が続々と発表

 

全体的に「企業向け、ビジネス向け」の活用に重点を置いてきているところが、非常に興味深いですね。

今回、様々なMRデバイスや活用事例を紹介しましたが、これらの製品はまだ発展途上の技術であり、日々動向が変わっていきます。
今後もMRについての最新情報や動向など、役立つ情報を発信していきますので、引き続きチェックしてみてください。

エム・ソフトでは、MRはもちろん、ARアプリ製品の開発、VRを含めたXRシステム開発に日々取り組んでいます。
これらの技術を活用したアプリケーション開発のご相談や、各種デモ・事例紹介のご依頼など、お気軽にご相談下さい。

詳しくは、エム・ソフトのウェブサイトで。

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