建設業界の無駄コンの課題を解決するアプリ「ピタコン」
2024年5月19日

こんにちは。エム・ソフトの有村です。

エム・ソフトは、AR・VR等の技術を強みとしており、建設業界等の現場の課題を解決するアプリやソリューションの開発を行っています。

今回は、建設業界で課題になっているキーワード「無駄コン」についてと、その解決の手段として活用できるエム・ソフトのアプリ「ピタコン」についてご紹介します。

建設業界における無駄コンの課題

建設業界では不要になってしまったコンクリート、いわゆる「無駄コンの削減」が大きな課題となっています。

無駄コンとは

無駄コンとは、建設現場に運ばれたものの使われずにそのまま廃棄処分されてしまう生コンクリート(生コン)のことです。
無駄コンには具体的には以下の2つのケースがあります。

1.残コンクリート(残コン)

建設現場に運ばれたコンクリートの一部が、使われずに残ってしまう生コンを指します。
たとえば、品質の検査に使うコンクリートやミキサー車(アジテータ車)の中に残るコンクリートがこれにあたります。生コンというのは使用期限がありますので、期限が過ぎてしまった残コンは、別の建設現場で再利用することができないため、廃棄となってしまいます。

2.戻りコンクリート(戻りコン)

ミキサー車から建設現場に運ばれた生コンが、荷降ろしされずに出荷元の生コン工場に戻されるケースを指します。
これも残コンと同様、再利用することができないため、廃棄処分となってしまうコンクリートです。

無駄コンによって起こる問題

無駄コンが大量に発生すると、主に以下のような問題が生じます。

生成、廃棄コストの増加

無駄コンの処理や廃棄には大きなコストが発生します。

たとえば、使われなかった生コンはコンクリートメーカーに返すことになるのですが、返す際には「キャンセル料」が発生します。無駄コンが多くなればなるほど、このキャンセル料は大きくなってしまいます。

さらに、使われずにコンクリートメーカーに戻った無駄コンは産業廃棄物として中間処理会社が買い取り、別の素材として販売することが多いのですが、無駄コンが多くなると出荷ができず、結局廃棄処理をしなければならないといったケースも多くなります。

結果、その処理コストも発生してしまい、関係業者全体のコスト増加につながります。

資源の浪費、環境への影響

生コンの生成には原材料やエネルギーを必要とするため、無駄コンが大量発生するということは、それだけ有限な資源を無駄にしてしまうことになります。

また、CO2の排出量も問題となっています。
生コンの生成をするときや、無駄コンを産業廃棄物として運搬する車両のCO2排出量は非常に大きいものになっており、環境への影響が危惧されているのが実情です。

無駄コン削減の課題

こういった理由から、建設業界では「無駄コンをできるだけ減らす」ということが大きなミッションとなっています。

では、そもそもなぜ無駄コンは発生してしまうのでしょうか?
また、これらの原因を解決するためには、どのような対策を取れば良いのでしょうか?

無駄コンが発生する主な原因

そもそも、無駄コンが発生してしまうのは、主に建設現場が見込みの量より多めに生コンを発注してしまうことが原因で生じます。

ではなぜ建設現場は多めに生コンを発注してしまうのでしょうか?

・生コンが足りなくなるデメリットが大きい

生コンの発注数量が足りなくなってしまう場合、本来やりたかった打設工事を中断しなくてはならなくなります。
工事の期間が延長すると当然人件費なども発生し、無駄コンによって発生するコストよりも大きくなってしまう可能性も高いです。

このような事情から、「足りなくなるくらいなら多めに発注しよう」という業者が少なくありません。

・必要な生コン数量管理が難しい

工事に必要な生コンの数量を把握するのが大変、といった問題もあります。

生コンの発注を管理する担当者は、工事そのものの管理や書類手続きなど様々な業務を兼務していることが多く、打設に必要な残りの数量を計算・把握する余裕があまりない、といった状況になりがちです。

また、残り打設数量の計算は、巻き尺(コンベックス)で2人がかりで計測したり、その後結果を電卓で計算などの作業が必要になるため、限られた時間でその作業を行うのが困難、というのが実情です。
さらに、電卓での計算ミスといったリスクもあります。

このように、現場では様々な問題を抱えており、これらの問題が重なり合うことで、必要な生コンの数量を正確に把握するのが難しくなります。

無駄コンを削減する解決策

このような建設現場の現状から、無駄コンを削減する為には「発注数量の精度を(作業者の手間が少ない方法で)向上させる」というのが最も効果的な解決策となります。
具体的には、以下のようなアプローチが考えられます。

・生コン数量計算の手間を削減

前述のように、生コン数量の計測・計算は2人以上でやることが多く、人手や手間がかかる作業です。
この作業を極力1人で簡単に行うことができれば、作業者の手間を減らし、結果として計測にかかる精度の向上が期待できます。

・計算のミス防止

工事中、生コン数量の計測・計算に使える時間は限られているため、計測ミスや電卓での計算ミスが起こるリスクがあります。
電卓の計算は、打ち込みミスや漏れによって簡単に起こってしまうため、この計算ミスをできるだけ防止できるできるような仕組みがあれば、数量計算の精度が改善します。

無駄コン削減の課題を解決するアプリ「ピタコン」

エム・ソフトでは、このような「無駄コンの削減」という課題解決に役立つアプリ「ピタコン」を提供しています。

ピタコンとは?

ピタコンは、iPhone/iPadのAR技術を用いてコンクリート残り打設数量を簡単に計算できるアプリです。
従来、複数の作業員が巻き尺(コンベックス)や電卓を用いて行っていた測量を、iOS端末でひとりで行うことが可能になります。


※ピタコンは、株式会社大林組と株式会社エム・ソフトが共同開発したスマートフォンアプリケーションです。

ピタコンの使い方

ピタコンの使い方のイメージは以下動画(48秒あたり)をご覧ください。

①仕上がり面の高さをARで認識する

まず、最終的にコンクリ―トが仕上がる面の高さを指定します。
iPhone/iPadに搭載されているAR機能を用いることで、床面の認識が可能です。
これにより、基準となる床面の高さを端末に記憶させることができます。

②仕上がっていない面の各点に仮想ポールを設置

次に、生コンの打設が終わっていない箇所を囲うように、各点に仮想的なポールを設置していきます。
ピタコンはAR機能でポールを任意の点に仮想的に打ち込むことができ、また各点の座標を記録することも可能です。
これにより、仕上がっていない面の面積を算出することができます。

③深さを指定

次に、底面の深さを算出していきます。
LiDARスキャナが搭載されているiPhone/iPadであれば、自己位置から数m離れた場所の距離を求めることができるため、この機能を用いて底面までの距離(深さ)を算出します。
※LiDAR非搭載の端末もしくは数m以上深い場合は、コンベックス等で手動で深さを求めた後、手入力が可能です。

④計測結果の算出、表示

①~③の作業が完了すると、仕上がっていない面の面積・深さを計算し、自動的に残りの生コン数量が算出されます。
計測した図形や各辺の長さなども確認できるため、直感的に結果を把握することも可能です。

また、車台数計算機能も搭載しており、コンクリート注文の際、ミキサー車(アジテーター車)の容量(?)を入力することで、必要な車の台数を自動計算することも可能です。

無駄コンを削減可能なピタコンの特長

無駄コンを削減するという観点で、ピタコンには以下のような特徴があります。

1人で簡単に測量が可能

従来の測量方法では、2名の計測員での作業が必要でしたが、ピタコンを使えば、ひとりの計測員がその場で簡単に測量することが可能です。
計測員を2人から1人に減らすことができるため、担当者の作業負担の削減や生産性向上の効果が期待できます。

即座に結果確認、計算ミスの防止

計測が終わった後、即座にその場で測定結果を確認することができます。
待ち時間がほとんどなく、かつアプリ側で自動計算されるため、計算ミスを防止することが可能です。
これにより、コンクリート注文数量の精度向上に貢献します。

その他のメリット

計測員の心理的負担の軽減

生コンの数量計測中は一時的に作業を中断しなければならないため、計測員は「迷惑をかけないよう、素早く計測を終えなければならない」という心理的負担にさらされているケースが多い、という実態があります。
また、数量計算後の追加発注は打設終了よりも1時間以上前に済まさなければならないことも多く、これによるプレッシャーもあります。

ピタコンによって計測を早くスムーズに行うことで、これらの問題を解消でき、計測員の心理的負担を減らすというメリットが期待できます。

企業のイメージアップ

無駄コンの削減は環境問題にも密接に関わる課題となっているため、無駄コン削減のための活動をすることで、企業のイメージアップに貢献できます。

ピタコンを利用し、生コンの計測の効率化・注文数量精度の向上を行うことで、「環境に配慮している企業」としてアピールすることも期待できます。

まとめ

今回は、建設業界で問題となっている「無駄コン」についてと、無駄コン削減に貢献できるアプリ「ピタコン」についてご紹介しました。
無駄コンの削減は企業のコスト的な観点はもちろん、環境的な影響も大きい問題なので、業界全体で課題解決に向け動きを進めています。

また前回「プラントメンテナンス業の2024年問題」というテーマでも記事をアップしましたが、建設業界でも同様に2024年問題(時間外労働規制、人手不足)の対応とも関わってきます。
これについては日経新聞でも同様のテーマの記事で紹介しています。

日本経済新聞:
建設業界悩ます「無駄コン」 東京でマンション17棟分

エム・ソフトは建設業界を始め、様々な業界の現場DXを推進するお手伝いを進めています。
無駄コンの削減を始め、現場のDXについて課題感をお持ちの方はぜひお気軽にご相談ください。

また、今後も様々な業界のDXについて情報発信を行いますので、宜しければ引き続きブログをチェックしていただけますと幸いです。

詳しくは、エム・ソフトのウェブサイトで。

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