施工管理業務をクラウド化する建設システムの「クラウドデキスパートシリーズ」の第3弾として、「品質管理クラウド[コンクリート]」が登場した。事務所のパソコンで行っていたコンクリートの品質管理業務を、タブレットなどで行えるほか、AI(人工知能)やセンサーとの連携で入力も自動化。残業仕事だった帳票作成を、現場のすき間時間に「前倒し」することで、残業時間は確実に減らせる。2024年問題解決の特効薬となりそうだ。
データ入力作業を昼間の現場に“前倒し”
建設システムの「品質管理クラウド[コンクリート]」は、工事写真管理業務をクラウド化した「写管屋クラウド」や、「出来形管理クラウド」に続き、クラウドデキスパートシリーズの第3弾として発売された。
土木工事のコンクリート品質管理業務をクラウドシステム化し、タブレットやスマートフォンなどを使って、どこでもいつでも、データ入力やリアルタイムな閲覧を可能にするものだ。
例えば、現場で生コンクリートを受け入れたときに行うスランプや空気量、塩化物濃度などの試験結果をタブレットで入力すると、リアルタイムにクラウドにアップされ、そのまま品質管理のデータとして活用できる。そのデータは、本社や支店、発注者などの工事関係者も、ネットを介して即座にデータを確認できる。
クラウドのおかげで、データ入力や配布のための「移動のムダ」や、データが届くのを待つ「手待ちのムダ」、メールや電話などで確認する「連絡のムダ」などが一掃されるのだ。
それだけではない。現場の施工管理者自身のトータルな作業時間も、クラウドによって減らすことができる。
これまでのコンクリート品質管理業務は、現場事務所に戻ってから、パソコンでデータ入力や、工事写真の添付を行い、帳票を作成していた。
その点、品質管理クラウド[コンクリート]は、データ入力を現場作業の合間に行えるので、事務所に戻ってからの業務を昼間の作業時間帯に“前倒し”できる。その分、残業時間は必ず減らせるのだ。
さらに品質管理クラウド[コンクリート]には、AIやセンサーによるデータの自動入力機能も搭載された。「手入力のムダ」や「ヒューマンエラーのムダ」も大幅に減らせる。
AIやセンサー、工事写真との連携も
コンクリートの品質管理は、生コン工場から届いた「配合計画書」から、呼び強度やスランプ、粗骨材の最大寸法、水セメント比などの数値を拾い出し、システムに入力するところからに始まる。
しかし、配合計画書の数値を取り違えたり、データ入力時にタイプミスが起こったりすると大変だ。
そこで、品質管理クラウド[コンクリート]には、AIによる配合計画書の自動読み込み機能が搭載された。PDFの配合計画書をAIが分析し、品質管理で使うデータを自動的に入力してくれるのだ。手打ちの手間が省力されるほか、ヒューマンエラーの心配もなくなりそうだ。
さらに、温度計測器との連携機能も搭載された。外気温や養生温度など、複数箇所に設置した温度計測器から送られてくるデータを連続的に記録するものだ。この機能も現場での温度計測の手間を大幅に削減してくれそうだ。
さらにコンクリート試験中の状況も写真は、電子小黒板付きの工事写真がスマホで撮れる「SiteBox」と連動して、品質管理クラウド[コンクリート]の管理図表とともに自動表示できる。
現場最前線での施工業務を行いながら、タブレット上には品質管理に必要な計測データや写真データが自動的に集まってくる。このラクラクさを知れば、もう以前の施工管理には戻れないだろう。
遠隔臨場システム「SiteLive」とも連携
コンクリートの品質管理は、生コンの受け入れや打設時だけではない。養生後にも「7日強度」や「14日強度」、「28日強度」など、決まった日に強度試験を行う必要がある。
しかし、強度試験を行う施設まで、現場からクルマで30分や1時間かかることもざらだ。多忙な発注者のスケジュール確保も難しい。そこで発注者にとってはリモートで立会検査を行う遠隔臨場が、欠かせないツールになっている。
品質管理クラウド[コンクリート]は、建設システムの「遠隔臨場 SiteLive」とも連動し、強度試験の現場をリアルタイム中継しながら、試験体の帳票を同時に表示し、強度基準などを確認できる。この帳票は、クラウド上に保存してあるものを表示するだけなので、事前に資料を用意するなどの作業も必要ない。
提出用の帳票は印刷するだけ
昼間、現場で品質管理クラウド[コンクリート]を使って業務を行えば、発注者などに提出する品質管理帳票の入力データは既に出来上がっている。あとは、従来の「デキスパート品質管理システム[コンクリート]」に、データを連携して印刷するだけだ。
このほか、品質管理クラウド[コンクリート]には、強度試験などのスケジュールが一目でわかる「ダッシュボード」機能もある。工事関係者は、クラウドを見るだけで現場の工程や品質管理の状況がわかるので、これまでのようにいちいちメールや電話で連絡する手間がなくなる。こうした「ひと手間」「ひと手間」の削減も、生産性向上につながるのだ。
国土交通省では、従来のASPによる電子納品に代えて、日本建設総合情報センター(JACIC)が整備する「ICTプラットフォーム」の導入を進めており、2024年度から本格的に稼働させる予定だ。
品質管理クラウド[コンクリート]など、建設システムの「クラウドデキスパートシリーズ」は、ICTプラットフォームに対応予定だ。
残業時間規制が厳格化される「2024年問題」は、建設業にとっては企業の存続にもかかわるという点でピンチと言えるが、逆に本格的な働き方改革を実践するチャンスでもある。
この機会に、クラウドデキスパートシリーズを導入し、今の業務に潜む「移動のムダ」をはじめとする様々なムダの削減や、書類作成やデータ入力の自動化に取り組み、施工管理改革にチャレンジしてみてはいかがだろうか。
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