管理人のイエイリです。
リニア中央新幹線などで使われる山岳トンネルの工事で重要なのは、トンネル先端の「切り羽」付近の壁面がじわじわと変形するのを精密に計測し、異常がないかを常時、監視することです。この測定は切り羽近くの壁面に「トータルステーション」という測量機器を取り付けて行っています。
切り羽が前進すると、トータルステーションも前方に移設する必要がありますが、この作業に半日程度かかるため、その間、計測が中断してしまうという問題がありました。
この問題を解決するため、奥村組は地球観測、マックと共同で変位計測を中断せずに行える「移動式坑内変位自動計測システム」を開発しました。トータルステーションを軽自動車の屋根に載せることで、
ナ、ナ、ナ、ナント、
わずか15分で移設
できるようにしたのです。
軽自動車の屋根に搭載したトータルステーション(写真・資料:奥村組。以下同じ) |
トータルステーションを垂直に保つ自動整準機構 |
トータルステーションをスピーディーに移設するためには、移動後にトータルステーションを水平に置く必要があります。そこで傾斜計とアクチュエーターで±1°の粗い精度で水平にする「ステージ」と、±10″の高精度で調整する「精密整準機」を備えています。
移設するときは、トータルステーションを積んだクルマを新しい計測地点まで動かして停車し、整準スイッチを押すと自動的にトータルステーションが水平になるというわけです。
そして操作パネルで2つの基準点の概略位置を入力すると、トータルステーションが自動的にこれらの基準点を見つけて正確な自分の位置を測定します。
このとき、もう一つ問題なのがトータルステーションで計測したデータを現場事務所に送る通信ケーブルを延長する必要があることです。そこで採用したのが、
高感度無線伝送システム
です。
トンネル内に150m程度以内で中継機を設置することで、大型機械などの影響を受けずに安定してデータ送信が行えます。
奥村組では半径250mの曲線区間のある道路トンネルの現場でこのシステムを使い、切り羽からトンネルの外まで安定してデータが送れることを確認しました。
高感度無線伝送システムを使ったデータ伝送 |
トンネル内に設置する中継機 |
実工事での中継機の設置位置(数字は坑口からの距離m) |
トータルステーションなどの測量機器は据え付けが面倒というイメージがありましたが、このシステムを使うとトンネルに限らず、いろいろな現場でスピーディーかつ高精度の測量が行えそうですね。