管理人のイエイリです。
山岳トンネル工事では、掘削最前線の壁面、「切羽(きりは)」の状態を確認する作業が欠かせません。技術者は切羽に近づき、岩盤の状況を見極め、支保工の種類やロックボルトの配置、次の掘削方法を決めてきました。
しかし掘削直後の切羽は落石や崩落のリスクがある危険な場所。そして評価の多くは、目視や写真、スケッチに頼る部分が多く、どうしてもベテラン技術者の経験に依存しがちです。
つまりトンネル施工では、「切羽の状態をどう安全に、客観的に把握するか」という課題がずっと続いてきたわけです。
この課題に対し、安全かつ客観的なデータに基づく「切羽評価システム」が鹿島(本社:東京都港区)によって開発されました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
AIで切羽を“7D診断”
するという、なかなか野心的な技術なのです。(鹿島のプレスリリースはこちら)
このシステムではまず、切羽をスマートフォンで写真撮影した切羽の画像から、風化や割れ目性状を評価します。この評価には、同社が開発した風化変質システム「JudGeo」の技術を使っています。
切羽の形状は、ドリルジャンボに取り付けたLiDARによる3D計測で取得します。レーザーを照射して距離を測定することで、切羽の凹凸や岩盤表面の形状を三次元の点群データとして取得する仕組みです。
この点群データをAIで解析すると、岩盤の割れ目(節理)や地層の面構造が抽出され、岩盤の走向や傾斜といった地質構造を推定できるようになります。従来は技術者が目で見て判断していた部分を、データとして解析するわけですね。
さらにこのシステムでは、掘削用ブレーカーに搭載した加速度センサーによる振動データも取得します。振動データから岩盤の圧縮強度を求めて、地山の状態を評価するためのデータとして活用する仕組みです。
そしてもう一つ使われているのが赤外線カメラです。赤外線カメラは対象物の温度分布を取得し、切羽表面を流れる湧水の厚さと範囲を取得し、
湧水量の評価
に使うのです。
なぜ、“7D”なのか。このシステムでは、スマホによる2D写真、LiDARによる3D点群データ、加速度センサーによる振動データ (1D)、赤外線カメラによる湧水量データ
(1D)といった合計7Dのデータを組み合わせて切羽を評価する仕組みになっているからです。
今回のシステムの面白いところは、これらの情報を統合して解析する点です。
トンネル工事の世界では、長い間「ベテランの目」が頼りでした。もちろんそれは今後も重要ですが、こうしたセンサーとAIの技術が加われば、切羽評価はかなり客観的なデータに基づくものになりそうです。
トンネル施工管理の世界も、「見る切羽」から「測る切羽」の時代に入りそうです。
鹿島は、トンネル施工の自動化を目指すシステム「A4CSEL」の開発も進めており、今回の切羽評価システムは、こうした自動化施工技術とも連携することが期待されています。






















