ArchiCAD 活用事例: 戸田建設
BIMモデルを設計から積算、施工計画に活用
CASBEE「Sランク」のテナントビルを実現(グラフィソフトジャパン)
2011年10月27日

2011年3月、東京・青山に竣工した「TODA BUILDING青山」は、建物環境総合性能評価システム「CASBEE」で最高の「Sランク」を獲得しました。戸田建設はビルの設計・施工にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)対応の「ArchiCAD」を状況に応じて活用し、建物のBIMモデルを設計から生産設計、施工部門への流れで適宜活用しました。設計を担当した戸田建設建築設計統轄部の設計者に実プロジェクトでのBIM活用についてうかがいました。

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建築設計統轄部 計画設計部 業務施設系
主管
  護摩堂 淳
建築設計統轄部 設計管理部 技術課
北川 剛司

   BIMモデルからの図面化に挑戦

 戸田建設計画設計部では2008年にArchiCADを導入し、若手社員を中心として実務での活用について検討を開始し、翌2009年には設計コンペの企画設計レベルでの活用を始めました。そして2010年、BIMモデルから本格的な図面の作成に取り組みました。その第一号となったのが、「TODA BUILDING青山」です。

 「2DCADで作成していた図面類をBIMで作成することが、このプロジェクトの課題でした。さらにBIMの特性を活かして建具表や面積表などの作成における効率化を検証しました」と、建築設計統轄部計画設計部業務施設系主管の護摩堂淳氏は説明します。

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工事中のビルを再現したBIMモデル(左)と現場写真(右)

 BIMモデルから図面類を作成することは、BIM活用における一つのハードルとも言えます。今後BIMによる図面作成基準を考えていく必要性が出てくると思いますが、現状は従来の自社図面仕様に合わせています。そのため細かなカスタマイズが必要になります。例えば、BIMモデルを切り出して図面を作ったとき、外形線や隠線、寸法線などに対して、太さや線種をどう設定するかで、図面の表現や見栄えが大きく違ってくるからです。

 「最初は、ArchiCADのデフォルト設定でやってみました。それから自社の図面仕様に近くなるように、線の太さを太線、中線、細線、極細線というようにシンプルに分けながら、メリハリが出るように設定しました」と建築設計統轄部設計管理部技術課の北川剛司氏は語ります。

 建具情報や仕上情報についてはBIMモデル作成段階であらかじめ入力しておくことで、それぞれの情報を表として出力できるようにしました。従来、一つ一つ表に書き込んでいた情報をBIMモデルから直接出力することにより、省力化を図ることを目指しました。

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建物のBIMモデル
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BIMモデルを基に作成した基準階平面図(上)と矩計図(下)

「建具表や仕上表を自動作成するためには、BIMに対応したフォーマットを確立するとともに、モデルの各部材に属性情報を入れておくことが重要となります」(護摩堂氏)。

  デジタルモックアップで部材の納まりや施工手順を検討

 周囲をビルに囲まれた狭い現場で、敷地を有効に使った施工計画の作成にもBIMモデルが役立ちました。地下から地上へと進む工事の仮設計画を3次元モデルで表現することにより、建物外周部と山留壁との取り合いの検証や、重機の乗り入れ構台と躯体との干渉チェック、枠組足場のサイズ検討や重機の搬出入計画などを正確に行うことができました。

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サッシ部のデジタルモックアップ(左)と時系列による施工手順の検討(右)

 また施工現場では、デジタルモックアップを使って外壁の部材間の取り合いや納まりの検討を行いました。例えば、押出成形セメント版と笠木・サッシの2次シールとの取り合いを可視化したり、時系列による施工手順の確認をしたりしました。

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ビルに囲まれた現場でのクレーン作業シミュレーション(左)と重機の乗り入れ構台と躯体の干渉チェック(右)

  BIMを使った数量集計の誤差は1%以内に

 さらに、工事費の見積りや原価管理に重要な要素の一つである躯体コンクリートの数量算出を、基礎部と各階スラブ部のコンクリート数量をBIMモデルから算出したところ、従来の積算との誤差は1%程度に収まり、現場での打設数量との誤差も5%程度でした。

  テナントへの営業にウォークスルーを活用

 ArchiCADを活用したメリットとして、テナントへの営業活動にウォークスルーが利用できたことが挙げられます。ArchiCADのデータを「Virtual Building Explorer(以下、VBE)」というソフト内蔵のデータに変換すると、ArchiCADがインストールされていないパソコンでも、建物の外観や内観をウォークスルーによって見て回れるのです。

 「建物が完成する前から、テナントの営業先にBIMモデルを持っていき、お客さん自身にコントローラーを操作してもらって建物の空間イメージを見てもらいました。ゲーム感覚のプレゼンは効果的でした」と護摩堂氏は語ります。

 こうした取り組みを通じて、「TODA BUILDING青山」は2010年6月に着工し、2011年3月に竣工しました。

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VBEによるウォークスルーを営業活動に生かす

  実プロジェクトでのBIM活用基盤を整備中

 戸田建設では設計部の若手社員を中心に、約30人がArchiCADを使用することができます。「今回は設計部が主導的にBIM活用を行った結果、BIMモデルからの設計図書作成については、実プロジェクトで使える状態に近付いています。今後は他部門とも連携を図りながら、BIMの活用を質量ともに充実させていきたいと思います」と北川氏は語ります。

 今後、営業では事業計画の概算ツールとしての活用や営業と設計の連携。設計ではBIMモデルを使ったシミュレーションや、意匠・構造・設備、さらには生産設計も含めた連携強化を。そして積算では、今回精度を確認したコンクリートなどの躯体数量や、これに加え今後は仕上げ数量などの算出と、積算用のモデル構築手法の確立などを計画しています。

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戸田建設におけるBIM活用は、ArchiCADを中心として質量ともに今後も拡大していく

 施工においては掘削や仮設計画、コンクリートの打設管理、プレキャスト部材や鉄骨の建方管理、そして仕上げ工程の管理などにBIMを活用し、生産性や施工品質の向上に取り組む予定です。さらに竣工後のFM(維持管理)での利用も視野に入れています。

 また、設計段階における意匠・構造・設備の統合されたBIMモデルを協力会社に展開し、鉄骨部材の詳細設計や詳細設備設計に生かすことを検討しています。鉄骨部材の設計では、ArchiCADで作成したBIMモデルをIFC形式に変換し、協力会社が持つBIM対応の詳細構造設計用ソフトに引き継ぎ、鉄骨部材一つ一つの設計や、溶接継ぎ手、ボルト継ぎ手などの設計を行うことが考えられます。

 同様に、サブコンにもBIMモデルから作成したIFCデータを提供することで、設備用ソフトによって、意匠や構造と干渉しないように空調ダクトや給排水管などの設計を行うことが可能です。IFCというBIMモデルのデータ交換用共通フォーマットを使うことで、それぞれの専門ソフトと連携するグラフィソフトジャパンが提唱する「OPEN BIM」の考え方を実務に生かせるのです。

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設備専用CADで作成した設備モデルをArchiCADに読み込み、躯体や構造のモデルと組み合わせた

 戸田建設はArchiCADをベースとして、様々なソフトとBIMモデルデータを連係する「OPEN BIM」の考え方に基づき、営業から設計、積算、生産設計、施工、そして竣工後のFMに至るまで、一連の建築生産プロセスにおいてBIMを積極的に活用していく方針です。

 13-image.jpg TODA BUILDING青山

設計・施工・運営管理を戸田建設が手がける自社事業。「クリーン&グリーン」というコンセプトに基づき、透過型太陽光発電パネルやダブルスキンカーテンウォール、輻射天井空調システム、地中熱利用システムなど50もの環境配慮技術を盛り込んだ。その結果、建物の環境評価指標では2008年版、2010年版ともに最高の「Sランク」の認証を取得した。様々なテナントが入居する中規模テナントビル(床面積:3755m2)で、これだけ高い環境性能を実現したビルは異例だ。

 

【問い合わせ】
グラフィソフトジャパン株式会社
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