管理人のイエイリです。
節電やピーク電力カットが求められる今日このごろ、建物の風通しや空調性能の向上に関心が集まっています。
ひと昔前に比べて、最近はパソコンの性能が大幅に上がっているため、建物内を通り抜ける風やエアコンから吹き出す気流の流れ、そして日射による室内空気の対流などを熱流体解析(CFD)で求めることも比較的簡単になりました。
ただ、熱流体解析ソフトで解析するとき、建物を丸ごと3次元でモデリングするのは結構、手間ひまがかかります。
そこで、建設業界で普及している熱流体解析ソフト「STREAM」の販売元のソフトウェアクレイドルは、画期的な新製品を本日(7/15)リリースすることになりました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
BIMモデルをCFD用に変換
するソフトなのです。
Revit ArchitectureのBIMモデル(上)を、熱流体解析ソフト「STREAM」用のモデル(下)に変換する「Revit2STREAM」(資料:ソフトウェアクレイドル。以下同じ) |
STREAMで解析した地上0.5mでの建物周りの風速ベクトル図(左)と建物表面の圧力コンター図(右) |
新製品の名前は「Revit2STREAM」というもので、オートデスクの意匠設計用BIMツール「Revit Architecture」用のアドオンソフトで、インストールするとRevitのメニュー画面にSTREAM ver9にデータを受け渡すための「Revit2STREAM」パネルが追加されます。
このメニューで建物の輻射率や発熱量などの物性値を入力したり、熱流体解析に必要な壁や床などの解析部品を選んだり、地理情報などを入力することができます。
Revit Architectureのメニュー画面に追加された「Revit2STREAM」パネル |
一通りの設定を行った後、「STREAM起動」のボタンをクリックすると、STREAMが立ち上がります。Revitから変換されたモデルには、解析にあまり影響しないカーテンウォールのマリオンや壁の凹凸が自動的に簡略化されます。必要に応じて、これらの形状を渡すこともできます。
解析領域の設定やメッシュ分割、風向きや風速などを設定すれば、すぐにSTREAMでの解析ができるというわけです。また、比熱や熱伝導率、日射の透過率、吸収率などの値は部材の材質を選ぶことで設定されます。
STREAM上でのメッシュ分割作業 |
日射による床面の温度上昇や自然対流の解析も可能です。エアコンや空調の吹き出し口、吸い込み口の形状はRevitで入力しておき、STREAMで吹き出し温度や流速などを設定します。
Revit Architectureで作成した建物モデル |
日射による窓際の自然対流を解析下例 |
エアコンからの気流を解析した例 |
空気や熱の流れは人間の目で見えないので、思わぬトラブルが発生することもあります。例えば天井中央にエアコンの吹き出し口、吸い込み口を設けたときなど、エアコンの冷気が窓際から上昇気流と干渉して、ダイレクトに吸い込み口から排出される
ショートサーキット
が起こることもあるのです。
STREAMで解析したショートサーキットの例。右の吹き出し口からの冷気がそのまま吸い出されていることが分かる |
空気や熱の流れを可視化することにより、これまで分からなかった問題点が発見できます。これを改善することにより、省エネ性能の高い建物が設計できそうですね。
Revit2STEREAMは日本語版と同時に英語版もリリースするそうです。BIMを通じても、日本の省エネ技術が世界に進出しはじめていますね。また、ソフトウェアクレイドルでは他の建築CADとも同様の連携を検討しています。
Revit2STREAMは7月12日に東京・品川で開催された「建設革命2011 123D」(主催:オートデスク)でも展示されていた(写真:家入龍太) |