管理人のイエイリです。

建築計画の初期段階で欠かせないのが「この土地にどれくらいの大きさの建物が建てられるか」を検討する“ボリューム検討”です。

しかし、建ぺい率や容積率、道路斜線制限など、建築基準法に関する知識が必要なため、建築士でなければ判断が難しい作業でした。

そのため、営業担当者や若手社員が自ら試算するのは容易ではなく、人手不足に悩む中小ゼネコンではいかにこの作業を自動化するかが課題となっていました。

そこで福岡市の老舗ゼネコン、山田工務店（本社：福岡市博多区）はユニークな解決策を生み出しました。

Googleの生成AI（人工知能）「Gemini」を活用し、専門知識がなくても、簡単な入力だけで、

ナ、ナ、ナ、ナント、

建築可能な建物規模

を算出できる「建築ボリューム検討アプリ」を開発したのです。（山田工務店のプレスリリースはこちら）

「建築ボリューム検討アプリ」により自動生成された3Dボリューム（以下の資料：山田工務店）

階ごとの平面図。後退距離や建築面積がひと目でわかる

アプリの最大の特長は、AIが建築の可能性を“瞬時に3D化”して見せてくれる点です。

敷地の間口や奥行き、建ぺい率、容積率、前面道路幅などを入力するだけで、Geminiが法規制を考慮しながら、建築可能な最大ボリューム（建物の高さや延べ床面積など）をリアルタイムで算出します。

その結果は3Dモデルとして自動生成され、誰でも直感的に理解できるようになっています。

また、用途地域を選ぶと道路斜線制限の勾配も自動で設定され、階高や緩和条件も自由に調整できます。

計算結果はCSV形式で出力でき、3DビューはDXFや画像として保存可能。営業から設計まで、共通のデータで打ち合わせが進められるのも大きな利点です。

このアプリは、2025年11月10日の「AIの日」に合わせ、無償公開を開始します。

さらに注目すべきは、

教育面での活用可能性

です。

3Dの変化を見ながら建築法規の基礎を理解できるため、建築を学ぶ学生や子どもたちにとっても、楽しく学べる教材となります。

それもそのはず、開発を主導した山田邦彦社長は、BIM（ビルディング・インフォメーション・モデリング）関連の研究で知られる熊本大学・大西康伸研究室でBIMの中小企業導入を研究しており、「AIを誰もが扱えるツールにする」ことを目指してきたからです。

BIMによる建築設計の先駆者であるビム・アーキテクツ（本社：東京都世田谷区）の山際東代表取締役や、ixrea（本社：鹿児島市）の吉田浩司代表取締役も、このアプリを使用し、わかりやすさを高く評価しています。

このアプリは、AIが専門知識の壁を取り払い、3Dのわかりやすさによって現場と教育の双方で建設DX（デジタルトランスフォーメーション）を推進するものです。

今後は法規データの拡充やBIMアプリとの連携など、さらなる発展も期待されますね。