管理人のイエイリです。
貴重な文化財は、保存上の理由で一般公開を行っていないものが多くあり、たとえ調査目的でも立ち入ることができないものが多いそうです。
そこで凸版印刷と東京大学池内研究室は、装飾古墳を対象とした「屋外文化財バーチャル体験システム」を開発しました。
文化財や遺跡などをリアルな3次元空間として再現し、ヘッドマウントディスプレーで見られるようにしたものです。
このシステムにより、遺跡などの内部を、鑑賞者自身が歩きながら“ウオークスルー”して、好きな角度から見られます。
そのため、通常は立入禁止になっている場所はもちろん、
ナ、ナ、ナ、ナント、
現存しない遺跡
まで、見られるのです。
「屋外文化財バーチャル体験システム」のシステム構成(左)と利用イメージ(右)(写真:凸版印刷) |
このシステムは1台のナビゲーター用パソコンと、複数の鑑賞者用パソコンで構成されています。これらのパソコンはバッテリー駆動のモバイルパソコンを使用しており、肩掛けカバンのように持ち運びできます。
ナビゲーター用パソコンは、鑑賞者の位置や移動を把握し、無線LANによって各鑑賞者のパソコンにコマンドを送ります。
鑑賞者用パソコンには姿勢検出センサー用のヘッドマウントディスプレーが付いており、鑑賞者の視線方向をリアルタイムで検出することにより、それにあった画像を見られるようになっています。
遺跡などは、3次元形状計測や高精度色彩計測、微細形状計測などの技術からなる高精度3次元計測技術によって計測します。
活用方法としては、専門家による文化財の調査や、博物館などで一般の来場者が盛られる映像コンテンツとして活用できます。
凸版印刷は、東京大学から「複合現実形デジタル・ミュージアム」の研究開発を受託し、バーチャル体験システムやコンテンツ生成のための高精度3元計測技術の研究開発を担当しています。
複合型デジタルミュージアム博物館とは、
「モノ」と「コト」を融合
した新しい展示手法を実現し、博物館への導入を目指すものです。
この研究には、MR(複合現実感)技術やバーチャルリアリティー技術を用いた展示技術のほか、来館者の鑑賞支援技術やコンテンツを生成・蓄積するコンテンツ基礎技術の開発も含まれています。
また、博物館などの「学芸員」に相当する「デジタルキュレーター」の養成やビジネスモデルについての検討も行うそうです。
単なる遺跡の画像だけでなく、当時の服装をしたバーチャルなキャラクターを空間に登場させて、当時の言葉で来館者に話しかけてくるといった演出もできそうです。博物館はこの技術によって、一大アミューズメントパークに大変身するかもしれませんね。
建設業界でも、この技術はいろいろと使えそうです。例えば、立地がよい場所にある歴史的建造物などが開発によって取り壊しに直面したとき、このシステムで内部や外部を保存しておけば、保存と開発を両立できそうです。皆さんのアイデアも聞かせてくださいね。