管理人のイエイリです。
東京駅八重洲口には、「光の帆」をモチーフとしてデザインされた巨大な幕屋根に覆われた、長さ約234mのペデストリアンデッキ「グランルーフ・ガーデン」があります。
東京駅直結の一等地であり、駅周辺の街並みを一望できる快適な空間であるにもかかわらず、以前はがらんとした感じで“過疎っている”感じも否めませんでした。
そこで日建設計は、この空間に植栽やベンチなどの什器を試験的に設置し、人の流れを分析したところ、滞在人数は平日で約12%、休日には約84%も増加していることが分かりました。
この広大なデッキ内で、いつ、どこで、何人が通ったのか、どのくらい滞在していたのかを定量的に計測するのに使ったのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
3D-LiDAR
だったのです。(日建設計のプレスリリースはこちら)
3D-LiDARとは、リアルタイムに現場を3D点群計測できる機器です。カメラやビーコンに比べて、位置検出の正確性が高く、個人情報を使わずにすむというメリットがあります。
日建設計は、デンソーウェーブ(本社:愛知県阿久比町)と協働し、この3D-LiDARを使って人流をリアルタイムに計測するシステムのプロトタイプを開発しました。
このシステムで、植栽や什器を設置する前後で、人の動きを比較すると、見た目だけでなく、データとしても滞在している人が多くなっている様子がわかります。
また、什器選びの点では、ベンチの形や向き、テーブルの大きさなどの種類や、配置位置による利用者数や滞在時間の違いもデータとして把握することができました。
こうしたデータの裏付けが、JR東日本に対して、
デッキ全体の改修
という、大きな投資判断を後押しした結果、工事が実現し、2023年7月1日にリニューアルオープンしたのです。(JR東日本のプレスリリースはこちら)
3D-LiDARで取得した大量の点群データから人の形状や不特定多数の行動を把握するためには、膨大な計算資源が必要で、操作や処理が思いという課題もありました。
そこで、現時刻と全時刻の点群の差分から移動体を抽出する解析方法を使いました。じっと座っている人を見失わないようにするため、「人は突然出現・消失しない」という特許出願中のアルゴリズムを盛り込む工夫も凝らしました。
その結果、移動体が停止しても見失わず、少ない計算資源でも把握できる3D-LiDARのシステムが完成したのです。
日建設計は、このシステムを建物の省エネ制御に活用するため、2024年にこのシステムを東京オフィスに設置し、滞在人数に応じた照明制御の検証を始めます。
将来的には、国土交通省の3D都市モデル「PLATEAU」や、建物のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と統合して、人流などの時系列データを付加した4Dデジタルツイン(デジタルの双子)の構築も視野に入れています。
これまでの通行量調査の質・量・スピード的を、大幅にイノベーションするシステムになりそうですね。