管理人のイエイリです。
線路や橋梁、盛り土、トンネルなど線状構造物の施工管理や維持管理では、一定間隔ごとに上下左右の変位を計測することが求められる場合があります。こうした測定にはトータルステーションなどの測量機器や、折れ曲がる棒の関節部分に角度センサーを付けた変位計などが使われてきました。
ただ、トータルステーションなどは機器の設置や計測に手間がかかります。角度センサーを使う方法だと、センサーの数だけ配線が必要だったり、角度センサー自体が構造上の弱点だったりします。
そこで飛島建設は、これらの問題を解決する「FBG光ファイバセンサを用いた高精度な2次元変位計」を開発しました。外観は直径8cm弱のホース状で、これを線路や橋梁などの軸方向に沿って設置するだけで、各部分における上下左右2方向の変位分布を高精度で計測することができます。
変位計は耐久性が高く、変位を測る光測定器は最大9km離れた場所から測定可能です。また、配線数は大幅に減り、計測に電気信号を使わないので電磁気によるノイズが発生しないというメリットがあります。
FBG光ファイバセンサを用いた高精度2次元変位計の外観(資料、写真:飛島建設。以下同じ) |
軌道の沈下・移動モニタリングの例。数mmのわずかな変化もリアルタイムで分かる |
トンネル側壁のはらみ出しモニタリングの例。光測定器は最大9km離れた場所に設置できるので機器の管理が容易 |
橋梁のたわみモニタリングの例。障害物があって見通しのきかない場所でも測定できる |
長さ10mの区間にこの変位計を設置し、中央に20mmの変位を与えて計測試験を行ったところ、
ナ、ナ、ナ、ナント、
1mm未満の誤差で計測
できることが実証されたです。
計測試験の概要平面図 |
||
|
内部には角度センサーなどは付いていないのに、なぜ、軸直角方向の2方向の変位が分かるのでしょうか。その秘密は、変位計の外周に沿って埋め込まれた3本の「FBG光ファイバーセンサー」にあります。
外径0.15~0.25mmの光ファイバーセンサーの中には、一定間隔に“節”のような「ブラッグ回折格子(Fiber Bragg Grating:FBG)」が仕込まれており、特定の波長の光だけを反射する性質があります。
反射光の波長は、光ファイバーセンサーのひずみに応じて変化するため、波長の変化を計測すると、光ファイバーセンサーの軸方向のひずみを数μの高精度で計測できます。
変位計の構造。外周部に3本の光ファイバーセンサーが埋め込まれている。内部の空洞は無収縮モルタルを注入し、センサーの位置を固定している |
2次元変位計に使用するFBGセンサーの外観。外径3mm、FRPで被覆している |
特定の波長の光を反射するFBG |
軸方向の引っ張りひずみを高精度で計測する |
3本の光ファイバーセンサーによって高精度で求めたひずみの差から、変位計各部の「曲率」を求め、
曲率を2回積分
することで、各部分の上下左右方向の変位がわかるという仕組みです。
なるほど、軸方向のひずみから軸直角方向の変位を求めるというのは、発想の転換ですね。
また、1つの変位計に多数のFBGを設けられる「時間分割多重化方式(TDM)」という方式を使っているため、最長50mの変位計に100個のFBGを設けることもできます。
時間分割多重化方式(TDM)の原理 |
こんな変位計を使うと、高精度な施工管理や維持管理の作業が、リアルタイムかつ簡単にできるようになりそうですね。