管理人のイエイリです。
都市の地下を通るシールドトンネルの建設で、気をつけなければならないのが地表面の地盤沈下です。
そのため、シールド機の真上や周辺の地表面に多くの観測点を設け、レベルやGNSS測量機などで定期的に沈下を観測する必要があり、大変な時間と労力がかかっています。
そこで奥村組は、立ち入りが難しい場所を含めて、広範囲に地表面の沈下計測を行える方法を編み出し、実際の現場で実証しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
合成開口レーダー衛星
のデータを活用したのです。
合成開口レーダー(SAR)衛星とは、地上に向かってマイクロ波を照射し、その反射波から地表面の高さなどを観測するものです。
地球を周回しながら何度も電波を照射し、地表面からの反射波に生じる位相差から、わずかな変位量を求めることができます。
奥村組は京都市上下水道局発注の新川第6排水区新川6号幹線(雨水)(その1)公共下水道工事(シールド機外径:φ2,890mm、掘進距離:1,176m)の現場で、計画線全長を幅100mにわたってSAR衛星による計測を行いました。
掘進ルートの周辺は、交通量が多く、歩道が狭い、戸建て住宅や集合住宅密集するエリアでしたが、立ち入り困難な私有地などを含めて広範囲なエリアを計測することができました。
下図右側の黄色い線がシールド機の掘削ルート、赤い部分が沈下計測を行ったポイントですが、無数の点で計測できたことがわかります。
シールド機による沈下計測は、シールド機による掘進開始から完了までの約1年2カ月間に計30回以上行いました。
そこで気になるのが計測精度です。地表のはるか上空を飛ぶ人工衛星から、沈下を測ること自体、信じられませんが、レベル測量と比較したところ
誤差はほぼ1mm以内
だったことがわかりました。驚くべき精度ですね。
私は以前、別のトンネル建設現場で地表に多くのセンサーを設置して沈下計測を行っているのを見ましたが、それに比べるとSAR衛星による計測はずっと楽で、広範囲に行えるのがいいですね。
現在、SAR衛星は「だいち2号(ALOS-2)」が計測を行っており、そのデータはパスコが運営するALOS-2 dataなどから購入できるようです。
残念ながら価格感はわかりませんでしたが、興味のある方は購入方法や価格などを問い合わせてみてはいかがでしょうか。