管理人のイエイリです。
免震構造の建物に使われる免震基礎のコンクリート打設では、“ミリ単位”の品質管理が行われています。
というのも、免震支承(アイソレーター)を設置する基礎の上面に設置される「ベースプレート」と呼ばれる鋼板と基礎コンクリートを一体化させるため、鋼板とコンクリートの接合面にある細かい空げきの大きさを一つ一つ計測し、その面積が所定の基準内に収まっていることを確認しなければならないのです。

免震建物で使用される免震装置。ベースプレート(赤色の鋼板)下のコンクリートを一体化されることが求められる(以下の資料、写真:大林組)
実際の工事では、事前に実物大試験を行ってコンクリートを打設し、ベースプレートを取り外してコンクリート面の写真を小さな区画ごとに25~100枚程度撮ります。
それぞれの写真に台形補正などを行ったうえ、人間が画像編集ソフトで空げき部分をマーキングし、空げきの合計面積を算出する、という手作業が必要でしたが、場合によっては1週間以上かかることもありました。
![]() 実物大試験の様子。ベースプレート中心部からコンクリートを打設する |
![]() コンクリート打設後、ベースプレートを取り外した後の状態 |

コンクリート上面を細かい区画に分けて撮った写真。この後、空げき部分を手作業でマーキングし、面積を算出する
そこで大林組は、この作業を自動化するため、
ナ、ナ、ナ、ナント、
AIで空げきを自動検出
する技術を開発したのです。

コンクリートの空げきをAIで自動検出し、着色した写真。ミリ単位で寸法や面積も自動算出されている
この技術はAI(人工知能)のディープラーニングを画像解析に応用したものです。コンクリートの空げき部分の特徴をコンピューターに学習させて、自動的に検出・着色し、コンクリート充てん率を算出できます。
その性能ですが、従来の方法と判定結果を比較したところ、空げき判定の間違いの少なさを意味する精度(Precision)が約84%、見落としの少なさを意味する再現率(Recall)が約95%という結果でした。
まだ、AIに完全に仕事を任すわけにはいきませんが、システムが出した結果を人間が確認して着色漏れを修正することで、従来と同等の精度を確保できるそうです。
また、これまで手作業だった写真の台形補正などの画像処理も自動化しました。
その結果、従来は1人で5日~1週間以上かかっていた作業が、
約2~3日で完了
できるようになったのです。生産性で言うと、2~3倍の向上といったところでしょうか。

通常の作業と本システムを用いた場合の所要日数比較。トータルの生産性は2~3倍に上がった。検査対象が試験体1体(撮影写真約80 枚)の場合
このシステムは、コンクリート充てん率の検査意外にも、様々な目視検査に応用することができます。
まだまだAIは完全ではありませんが、その不完全さを認めた活用姿勢が重要ですね。人手不足への対策には、完全な自動化ではなく、作業の7~8割をAIやロボットに任せ、残りの部分は人間が手助けすねるという分業的なアプローチが有効なようです。