管理人のイエイリです。
ドローン(無人機)による測量では、地上に既知点となる「対空標識」を置き、これが写真に写り込むようにして空撮を行います。通常の対空標識は、地上に置いた後、トータルステーションなどでその位置を測量して回る必要があります。
その点、エアロセンス(本社:東京都文京区)が開発、販売する対空標識「エアロボマーカー」はGNSS(全地球測位システム)の受信機を内蔵し、自動的に測位できるので“手間いらず”の対空標識として知られています。
地面に置いてスイッチを入れるだけで1cm以下の高精度で位置が測れるという機能を生かして、ドローンと関係なく、杭打ち工事の墨出し作業などにも使われています。(詳細は2018年10月1日付けの当ブログ記事を参照)
この“裏ワザ”的な使い方が進化して、最近では
ナ、ナ、ナ、ナント、
基準点測量
にも使われているのです。(エアロセンスのプレスリリースはこちら)
エアロボマーカーは、対空標識の位置データや空撮した写真を処理して現場の3Dモデルを作成する「エアロボクラウド」と連動するようになっています。
このクラウドシステムを使えば、位置データの後処理や測量した点全体の誤差を最小限にする「網平均計算」など面倒な作業を自動化することができます。
そのため、専門的な知識がなくても、所定の場所にエアロボマーカーを置いてスイッチを入れ、数十分待って回収し、次の場所に置く、という作業を繰り返すだけで、誰でも基準点測量ができるというわけです。
また、コスト的にもエアロボマーカーは1個20万円(税別)と、トータルステーションやRTK(リアルタイムキネマテック)-GNSS方式の測量システムに比べて大幅に安いというメリットもあります。
ただ、エアロボマーカーの場合は1カ所当たりの観測時間が最低20分~数十分と、長い時間がかかるのがデメリットとも言えます。
そこでエアロセンスは25点の多角網を測量する工数を、トータルステーションを使った場合と比較してみました。
トータルステーションを使った場合は、現場での測量に2人必要で延べ9時間、その後、ソフトウエアを使った網平均計算による後処理作業に3時間、計算時間が2時間と、合計14時間となりました。
一方、エアロボマーカーを使った場合は、現場での計測に4時間、エアロボクラウドによる自動網平均計算と計算結果の検討に2時間で、合計6時間となりました。
つまり、
労働生産性は2.3倍
に向上することなります。
また、見通しが悪い区間を測量する場合、トータルステーションなら測点を増やして迂回(うかい)測量する必要がありますが、GNSSの場合は見通しに関係なく測量できるという点でも、効率が上がりそうですね。
エアロボマーカーの累計出荷台数は1000台を突破し、活用された現場は全国で3000カ所を超えています。
今後、エアロセンスでは安く簡単に測量が行えるエアロボマーカーとエアロボクラウドのメリットを生かして、測量機の普及が進んでいない国や地域に対して、海外展開も図っていく計画です。
まさか、ドローン用に開発された対空標識が、基準点測量の強力なツールとして海外に打って出る展開になるとは、思ってもみませんでした。日本発の建設ITシステムが世界に普及していくのは、うれしいことですね。