管理人のイエイリです。
山岳トンネル工事では、掘削に伴って地山がじわじわと変形する状況を把握するため、施工中のトンネル内壁に測量用プリズムを複数、取り付けて日々、断面の変位計測を行っています。
しかし、掘削最前線の“切羽”付近では、重機や発破による飛び石によって、プリズムが破損することがあるので、計測のたびに高所作業車によってプリズムの取り付け・取り外し作業が行われています。
何度も繰り返すので、計測の効率性や安全性に問題がありました。
そこで、西松建設は日常的な変位計測を楽に、そして安全に行えるようにするため「スマートプリズム」を開発しました。
測量するとき以外は、リモコン操作によって、
ナ、ナ、ナ、ナント、
地山内に引っ込む
機構を備えているのです。(西松建設のプレスリリースはこちら)
スマートプリズムは、360°プリズムの送出・格納機構を有する「プリズム伸縮装置」と、プリズム伸縮装置を孔内に固定する「固定筒」、そしてプリズムの遠隔操作を行う「リモコン」の3つから構成されています。
計測を行うときは、地山内に設置したプリズム伸縮装置から360°プリズムをリモコンで送出し、計測後はリモコンでプリズム伸縮装置に格納します。
プリズム伸縮装置には、精度よく送出と格納を行うアクチュエーターと遠隔操作用の無線モジュール、充電式のバッテリーが内蔵されています。
リモコンは通信距離が15m以上あるため、切羽から離れた場所で安全に操作できます。
そして、トンネル用の測量装置らしいのは、プリズム伸縮装置を地山に取り付ける固定筒です。
後継がロックボルト孔と同じく、直径45mmの孔にピッタリ収まるサイズなので、
ロックボルト工と並行
作業で、削孔や設置が可能なのです。
また、プリズム伸縮装置のずれや抜け落ちを防止するための返し部や、所定の深さで止める突出部があり、内側には防水シートが張られて湧水などが浸入しにくい構造になっています。
ロックボルト工の工程を拡大し、複数のロックボルト孔を掘削する作業の中に、プリズム用の孔も「ついでに」入れ込むことができます。わざわざ別の作業を行う必要がなくなるので、“工程DX”を実現したと言えそうですね。
西松建設では、この装置を施工中の山岳トンネル現場に導入し、検証しています。今後、精度や耐久性、使用感などを継続的に改良し、将来的には内空変位計測の自動化を目指しています。