管理人のイエイリです。
広い範囲で行われる土木工事では、現場内の移動にも時間がかかります。特に海上工事ともなると、移動手段は船となり、乗降や行き来にいっそう手間ひまがかかります。
そこで五洋建設は、船による移動時間や作業に必要な人員を大幅に削減する海上工事用のドローン(無人機)を、続々と開発しています。
その一つが、3D計測用のLiDARと、空中で携帯電話の回線が使えるLTE通信機能を搭載したドローン「Penta-Ocean Vanguard-DroneLiDAR」(以下、POV-DL)を使った「リアルタイム船舶土量検収システム」です。同社とACSL(本社:東京都江戸川区)が共同で開発しました。
このドローンは、防波堤や岸壁などの築造工事で、土砂運搬船が納品してきた基礎用の石材や砂などの積載量を計測するために開発されました。
これまで、元請け職員が数人の作業員とともに、標尺やリボンテープを使って計測していた作業を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
20分から5秒に短縮
できるのです。(五洋建設のプレスリリースはこちら)
このシステムでは、3D-LiDARで計測した点群データをクラウドにアップし、積載土量の算出や帳票の作成が行えます。
波の影響で揺れる土砂運搬船でも安定して計測できるように、LiDARと写真計測で使われるSLAM技術と組み合わせたシステムを実装しました。
また、上空でのLTE通信機能を利用して、POV-DLの帰還を待たずに計測データをクラウドにアップロード・検収できるので、土運船の待機時間も削減できます
このシステムを使って、横浜港本牧地区防波堤築造工事で実証試験を行ったところ、土運船(積載量約2100m3)の土量検収に要した時間は20分から5分に、人員は6人から1人に削減でき、大幅な生産性向上が可能なことを確認しました。
このほか五洋建設は、プロドローン(本社:名古屋市天白区)とともに、海洋観測用のドローン「Penta-Ocean Vanguard-DroneAqua」(以下、POV-DA)も開発しました。
現場の水深を計測する深浅測量や、波の高さ・周期を観測するためのドローンで、
海面上に着水
して計測を行えるのです。(五洋建設のプレスリリースはこちら)
POV-DAには着水用にフロートのほか、高精度GNSS(全地球測位システム)、水上用の推進装置「スラスター」、そして測深ソナーを搭載しています。
これまで現場の水深を計測する時は、測量船で現場の海上に向かい、音響探査機器や重り付きロープで計測していました。
一方、POV-DAは水深を測りたい場所まで飛行・着水し、内蔵の測深ソナーでリアルタイムに計測できるので、スピーディーです。精度は一般的な深浅測量方法と比べて±10cmで、施工管理上、十分な精度となっています。
また、波浪観測では、着水したドローンのGNSSデータから波高や周期をリアルタイムに計測できます。精度も波高計との差を平均すると10%以内となっています。
これまで、海上工事の施工管理や安全管理は、気象や海象の予報データや現場付近の波浪観測データ、海岸からの目視などに基づいて行ってきました。
それがドローンによるピンポイントの計測や上空からの空撮映像が使えるようになることで、施工管理や施工可否の判断もスピーディーに行えます。
今後は多項目水質系や採水器の搭載により、環境関連の計測機能も広げていく計画です。
様々な建設分野で活躍するドローンですが、ついに海洋工事のDX(デジタル・トランスフォーメーション)まで担うようになるとは驚きです。