管理人のイエイリです。
2011年の東日本大震災で被災した、福島第一原子力発電所では廃炉に向けた作業が着々と進んでいます。
3つの原子炉が同時にメルトダウン(炉心溶融)を起こすといった大事故だったため、いまだに原子炉内部の損傷状態はわからない部分があります。
1号機の原子炉格納容器(以下、PCV)の地下部分は、水につかっており、これまで水中ロボットなどで調査が行われてきましたが、その上の1階部分はあまり調査が進んでいませんでした。
そこで、東京電力ホールディングス(本社:東京都千代田区)は、2024年2月28日と3月14日、この1階部分の調査に乗り出しました。
使用したのは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
狭小空間専用ドローン
として開発された、Liberaware(本社:千葉市中央区)の「IBIS」だったのです。(Liberawareのプレスリリースはこちら)
2月28日は、原子炉圧力容器(RPV)を支える「ペデスタル」という分厚いコンクリート壁の外側を飛行させて調査しました。
確認できた範囲では、原子炉格納容器の貫通孔(X-6ペネ)や、制御棒駆動機構(CRD)の交換用開口部、レールなどの設備や構造物に大きな損傷がないことがわかりました。
3月14日は、ペデスタルの内部にドローンを進入させて、内部を確認しました。その結果、ペデスタル内部においては、CRD交換用開口部付近につらら状や塊状の物体があることや、内壁のコンクリートに大きな損傷がなかったことが確認できました。
東京電力ホールディングスなどの情報によると、この時はドローンとのWi-Fi通信範囲を広げるため、アンテナを積んだヘビ型ロボットも投入されたようです。
東京電力ホールディングスは、ドローンによる調査時の様子を「燃料デブリ取り出しに向けて」という動画の中で公開しており、7分46秒付近から後でその様子が見られます。
「IBIS」の大きさは20cm四方と小さく、LED証明と超高感度カメラを搭載しているため、暗い場所でも鮮明な映像を撮影できます。
これまでもJR新宿駅の天井裏の点検(2020年5月18日の当ブログ参照)や、京急百貨店の天井裏点検(2020年10月6日の当ブログ参照)、日本製鉄の製鉄所内設備点検(2022年7月29日の当ブログ参照)など、数多くの点検に使われてきた十歴があります。
そして、今後、期待されるのは撮影された映像から、格納容器内の状況を、
3Dモデル化
することです。
これが実現すると、燃料デブリ取り出しに向けての具体的な計画がまた一歩、実現しそうですね。
Liberawareの閔弘圭代表取締役にとって、今回の成功は執念の挑戦が実った瞬間とも言えます。閔氏は11年前、千葉大学の研究員として、資源エネルギー庁から受託した福島第一原発の原子炉建屋内を自律飛行するドローンの開発に携わっていました。
当時は実証実験を最後にプロジェクトは終わりましたが、11年後の今、再びそのミッションに挑み、プロジェクトの一員として、ついに現場で成功させることができたからです。
ここにも、平成から令和にまたがる“プロジェクトX”がありました。