管理人のイエイリです。
清水建設は、2024年2月5日、東京・京橋の本社でVR(バーチャル・リアリティー)ゴーグルで、建物のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルや点群データを、立体的に見るシステムのデモンストレーションを行いました。
このシステムは「xRチェッカー」というもので、建築確認申請を受けて施工した建物が設計通りに出来上がっているかを審査機関などが確かめる「完了検査」を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
メタバース空間
で行えるのです。(清水建設のプレスリリースはこちら)
このシステムは、清水建設が日本建築センター(BCJ)の指導と、積木製作(本社:東京都墨田区)の協力を得て開発されました。BIMモデルをVRに変換し、メタバース空間に表示する機能には、Unity Reflectを使っています。
これまでの完了検査は、検査の担当者が2D図面を持って現場に出掛け、図面と実物を比較しながら行うものでした。このシステムでは、2D図面の代わりにBIMモデル、実物の建物の代わりに3D点群データを使い、両者をメタバース空間内で比較して行うのが特長です。
従来の検査と違うのは、建物全体が設計通りに造られているかどうかを、BIMモデルと点群データを比較して、「差分」を色分け表示することで、一目で確認できることです。土木工事で出来形管理に使われる「ヒートマップ」と同じようなものです。
BIMモデル上に火災時の排煙や延焼防止の確認に必要な空間を表示して、点群と比較したり、施工中に撮影した天井裏設備の写真表示したりして、効率的にチェックが行えます。
さらに複数の検査員がメタバース空間内でオンライン会議を行えるので、複数の防火扉が火災感知器の動作と同時に閉まる様子を、リアルタイムに実況中継して確認することもできます。これはメタバース検査ならではの確認方法と言えるでしょう。
BIMモデルと点群を比較すると、相互の位置関係がよく分かります。そのため、屋上の避雷針が保護する範囲に、
建物が収まっているか
という確認も、分かりやすく行えます。
清水建設は2020年から日本建築センターや積木製作などの協力を得て、BIMソフト「Revit」を使った建築確認申請の審査システムや、AR(拡張現実)と連携した中間検査システムを開発してきました。
ただARを使った検査システムの場合、BIMと実物の前後関係(オクルージョン)が分かりにくいという点もあったため、今回、VRを使ったシステムを新たに開発したものです。VRとARを合わせ、両者のメリットを生かして「xRチェッカー」として運用していきます。
まだ国土交通省は、メタバースによる完了検査を始めていませんが、2022年5月に出した通知で、今後、完了検査をリモート化する方向性を打ち出しています。
土木分野では、既に発注者による立会検査が「遠隔臨場」として定着し、移動のムダ削減による生産性向上と働き方改革に大きな効果を発揮しています。建築確認申請の業務も、リモート化が実現が待たれますね。