管理人のイエイリです。
GNSS(全地球測位システム)は、建設現場にとってとても便利な道具です。ところが、トンネル内や地下空間、高架橋下のような場所では衛星電波が届きにくく、一気に使い勝手が落ちてしまいます。
都市土木の現場ほどICTを活用したいのに、肝心の位置情報が不安定になる――。そんなもどかしさは、設計者にも施工者にも、DX担当者にも身近な悩みではないでしょうか。
こうしたお困りごとを克服しようと、大成建設(本社:東京都新宿区)とセイコーグループ(本社:東京都中央区)は、東京・日本橋の首都高地下化工事の現場で、“GNSSの死角”を埋める技術を検証しました。 舞台となったのは、GNSSの電波が届きにくい高架橋下の施工エリアです。ここで試されたのが、
ナ、ナ、ナ、ナント、
“地上GPS衛星”
のような基準局を設置し、センチメートル級精度の測位を実現しようという仕組みなのです。(セイコーグループのプレスリリースはこちら)
使ったのは、セイコーグループの次世代測位技術「Chrono Locate」です。空のGPS衛星が使えないなら、現場の周囲にGPS衛星のような役割を果たす基準局を複数置いて、位置を測ろうという発想です。
なかなか大胆ですが、建設現場の課題を真正面から解こうとする、実に面白いアプローチですね。 では、その中身はどうなっているのでしょうか。
Chrono Locateは、最低4カ所の基準局から得られる距離情報を統合し、移動局の3次元位置を特定します。 GNSSのように衛星から一方向に電波を受けるのではなく、基準局と移動局が双方向に通信し、電波の到達時間差から距離を測る仕組みです。いわば、現場の中に“ローカルGPS空間”をつくるようなイメージです。
セイコーフューチャークリエーション(本社:千葉県松戸市)のウェブサイトによると、使用周波数帯は920MHz帯、測位精度は水平で±5cm未満。つまり、センチメートル級精度の位置決めが可能というわけです。
標準の電波到達距離は最大150m、更新レートは10Hz。電源はUSB給電で、サイズは160×90×40mm、重量は約200gの小型デバイスです。この機器を現場周辺に置けば基準局になり、通船やバックホウなどの動く対象に取り付ければ移動局として使えるわけです。
今回の実証実験では、首都高速道路高架橋下の施工エリアに基地局を12カ所設置し、日本橋川を行き来する通船を追尾しました。 さらに、浚渫作業を行う台船上のバックホウでは、運転席と車体後部に移動局を取り付け、ブームの旋回状況まで追尾しています。
その結果、通船の軌跡は
レーザー測量とほぼ一致
し、複数エリアをまたいだ連続測位も実現したとのことです。
単に「位置が分かる」だけでなく、施工対象の動きや向きまでデジタルで把握できるところが、この技術の大きなポイントです。
大成建設は、これを自社の統合プラットフォーム「T-iDigital Field」のアプリケーションとして活用し、3D設計図のAR表示や作業員動線管理、重機や施工機械の位置把握につなげる構想まで描いています。
これまで、GNSSの電波が届きにくい都市土木や地下工事、建築の屋内工事などでは、高精度な位置計測の決定版といえる仕組みは、まだ少なかった印象があります。
その点、Chrono Locateのように、小型軽量で設置しやすく、しかもセンチメートル級精度を狙えるシステムは、かなり実用性が高そうです。非GNSS空間の建設DXを、一段と前に進めてくれそうですね。























