管理人のイエイリです。
日本では建築分野ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)がかなり普及し、土木分野でもCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の導入が始まろうとしています。
アジア各国でもBIMの導入が急ピッチで進んでいます。8月3日、東京・芝で開催された「アジア建設IT円卓会議 記念講演会」(主催:土木学会土木情報学委員会、日本建設情報総合センター)では、
ナ、ナ、ナ、ナント、
アジア各国・地域の最新BIM
活用動向が、来日した建設IT研究者によって報告されたのです。
日本からは土木学会土木情報学委員会委員長の大阪大学大学院工学研究科 環境・エネルギー専攻の矢吹信喜教授が参加しました。
各国・地域から集まった研究者の発表は、アジアにおけるBIMの急速な普及を物語るものばかりで驚くべき内容のものも多く、講演会は予定を大幅に超過して約4時間半にわたって行われました。その一部をご紹介しましょう。
AR(拡張現実感)を専門とするオーストラリア・カーティン大学のシャンギュー・ワン教授が紹介したのは、配管工事の練習をARシステムで行った事例でした。ARで実際の工事の手順を事前に体験しておくことで、図面を使った説明を受けた場合に比べて作業時間、作業ミスとも半減したそうです。
ARを使った配管工事の練習システム(左)と練習中の風景(右)(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より) |
また、台湾では大学や企業などにBIMの導入や教育訓練、開発、コンサルティングなどをワンストップサービスで行う「BIMセンター」という部門が続々とオープンしているそうです。2009年に台湾国立大学に設置されたのを皮切りに、2010年にはCECIエンジニアリング、2011年にはMAAグループ、シノテック・エンジニアリング・コンサルタンツ、国立高雄応用科技大学などに開設されています。
また、台湾国立大学の土木工学科では、「エンジニアリング・グラフィックス」という週3時間の授業や、「工学情報管理」や「BIM技術と応用」など、建設IT関係の授業が正式に導入されています。日本の大学も建設ITを単なるツールとして軽視せず、建設を情報産業として変えていく戦略分野としてしっかりと取り組んでもらいたいですね。
台湾国立大学のBIM研究センターで行われているBIMのハンズオン講習(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より) |
建設ラッシュにわく香港では、建設廃棄物の処分に困っています。そこで香港科学技術大学土木環境工学科のジュン・シャン・クワン教授は、BIMを使って建物のライフサイクルにおける廃棄物の管理を行うシステムを、Revit Architectureとデータベースを組み合わせて開発しました。
現場での施工、維持改修、解体に発生する廃材の種類や搬出用のトラック台数、廃棄物処理にかかる費用などを自動的に計算できる機能をRevitの外部ツールとして開発したものです。
BIMによる廃棄物管理システムの概念(左)とRevitの外部ツールとして開発したシステム(右)(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より) |
韓国・延世大学土木環境工学科のサンホ・リー教授は、土木構造物の設計・施工にBIMを導入するCIM的な取り組みを行っています。例えば、橋桁の架設時におけるクレーン作業を4Dで事前にシミュレーションしています。
橋梁架設の施工シミュレーションと実際の工事(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より) |
BIMの先進国、シンガポールでは「CORENET」というネットワークを使い、「eサブミッション」というBIMによる建築確認の電子申請を受け付けてきましたが、これがますます進化しつつあります。
2011年には構造や設備、配管のBIMによるeサブミッションも始まり、
2015年までには、
5000m2超のすべての建物
について、意匠、構造、設備ともBIMによる確認申請が義務付けられるそうです。
私はこれまでアメリカ建築家協会(AIA)など欧米のBIM活用動向に注目してきましたが、アジアの各国・地域でもBIM活用がどんどん進化していきつつあります。日本もうかうかしていられませんね。
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