安井建築設計事務所のBIM・技術開発センターが
AMDの「FirePro V3900」を検証(ACUBE)
2013年12月16日

安井建築設計事務所では設計業務のほとんどにBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用するまでになった。同社のように設計実務者だけでなく、管理職もBIMを活用する企業では、やや古くなったパソコンでもBIMに対応できるように整備することが課題だ。そこで同社の設計者にグラフィックボード「AMD FirePro™ V3900プロフェッショナルグラフィックス」(以下、FirePro V3900)を使ってやや古くなったパソコンをどうリニューアルできるのかを検証してもらった。

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「FirePro V3900」(左)でやや古くなったパソコンをBIM対応にリニューアルする安井建築設計事務所情報・プレゼンテーション部の幡宮祥平氏(右)

   設計部に「IPD/BIMスタジオ」が発足

安井建築設計事務所は、基本設計業務の8~9割、実施設計業務の7~8割でBIMを活用するまでになった。同社は2013年4月、経営部門と直結し社内への技術的支援を行う「BIM・技術開発センター」と、企画・設計監理機能を担う設計部の中に「IPD/BIMスタジオ」を発足させ、さらに組織的、効果的なBIM活用を推進している。

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安井建築設計事務所に設置されたIPD/BIMスタジオ

同社のように、全社でBIMを活用する企業にとっての課題は、高スペックな能力を持ち、BIMソフトをスムーズに動かせるパソコンやワークステーションを社員全員が使えるようにすることだ。しかし、年々、機能が進化するBIMソフトや、情報量が増加する設計業務に対応するために、毎年、全員のマシンを買い替えることはコスト面でも難しい。

そこで同社のBIM・技術開発センターは、やや古くなったマシンのグラフィックボードを、最新の「FirePro V3900」に入れ替えることで、最新のBIMソフトに対応できるようにリニューアルできないかという課題に挑戦した。

  2世代前のマシンの動作速度が4割も向上

BIM・技術開発センターが実験対象に選んだのは、「HP Compaq 6000 Pro SFF」というパソコンだ。最新のBIMソフトによる設計や大規模な建物の設計に使うには、画面が「カクカク」と動くなど、性能面でやや厳しくなりつつあった。

BIMソフトで設計中に画面の縮小・拡大や視点の移動などを行う時、グラフィックボードが画像処理の多くを担う。

もともと搭載されていたグラフィックボードはAMDの「ATI Radeon HD 4550」で、現在から2世代前のものだ。そこで、これを最新の「FirePro V3900」に交換してみたのだ。

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2世代前のグラフィックボードを最新の「FirePro V3900」に交換した
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BIMソフト「Revit」でウォークスルーなどの速度を比較する実験を行った(左)。実験に使ったBIMモデル(右)は細部まで詳細に作られていた

「FirePro V3900」は、BIMソフトで一般的な建物を設計するのに適したエントリークラスのグラフィックボードだ。しかし、1GBの高速DDR3メモリーと480個ものストリーム・プロセッサーを備え、AMDのマルチモニターやマルチストリーミングの技術によって2台のモニターへの同時表示を行えるなど、高い性能と信頼性を発揮する。

「BIMソフトのRevitによって、ウォークスルーを行う時の描画速度で比較してみました。モデルの規模などにもよりますが、グラフィックボードを最新型に変えただけで、処理速度は1.3倍から1.4倍にスピードアップしました」と、同社情報・プレゼンテーション部部長兼BIM・技術開発センターの繁戸和幸氏は語る。

  組織横断型のIPD/BIMスタジオ

建築設計事務所でBIMを活用し、成果を上げていくためには意匠、構造、設備の各設計者が情報交換を行いながら、コラボレーションできる環境が必要だ。そこで安井建築設計事務所は2013年4月に「IPD/BIMスタジオ」という十数人の部署を設計部内に設置した。

「IPD」とは「インテグレーテッド・プロジェクト・デリバリー」の略で、建築物の設計・施工にかかわる関係者が協力しながらプロジェクトを進めていくことを意味する。

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IPD/BIMスタジオに設置された巨大なモニター。これを使って大阪や名古屋の事務所ともテレビ会議を行うこともできる

「IPD/BIMスタジオを設置した狙いは、BIMというツールを使って新しいビジネスを開発していくことと、IPDやBIMの技術力やプロセスを高度化することにあります」と、同社執行役員の村松弘治氏は説明する。

「意匠、構造、設備の設計者を全社横断的に集めたマトリックス型の組織です。異なる職能の設計者がコミュニケーションをとりながら、少人数で複数のプロジェクトを効率的にこなしています」(村松氏)。

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BIM・技術開発センターを統括する執行役員の村松弘治氏(左)と情報・プレゼンテーション部、BIM・技術開発センターを兼務する繁戸和幸氏

その効果は顕著に表れてきた。まずは業務のスピードアップだ。意匠、構造、設備の干渉問題は設計を行いながら解決するので、従来のような手戻りが発生しない。構造設計ソフトで作ったデータを基に、1~2日で図面化するといった従来では考えられなかった効率化も実現した。

複数のプロジェクトをこなしていく中で、BIMで業務を進めていくプロセスもこなれてきた。「少人数で設計を進めていくため情報交換が緊密になり、次にやることが見えている」(村松氏)という。

また、メンバー間での知恵の共有効果も生まれてきた。「例えば隣にいる設計者が、気流解析などのシミュレーションは使って効果があれば、すぐに他のメンバーにも広がっていきます」と繁戸氏は言う。

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IPD/BIMスタジオでは、意匠、構造、設備の各部門の設計者が机を並べて業務を行うため、コミュニケーションが活発化し、新技術の活用ノウハウもメンバー間ですぐに広がる

同社は最近、数式やルールで曲面や配置などをデザインする「アルゴリズミック・デザイン」の導入にもチャレンジしている。これも効果がわかると、すぐにIPD/BIMスタジオを通じて各部門の設計者に広がっていくだろう。

  コストパフォーマンスが高い「FirePro V3900」

グラフィックボードの性能は向上する一方、価格は以前よりずっと下がってきている。例えば「FirePro V3900」の価格は今、2万円を切る水準になっている。5年前なら同クラスの製品が4万~5万円だったことを考えると半額以下に下がっているのだ。

ArchiCADやRevit、3dsMaxといった主要BIMソフトでも、動作保証がされているため、安心だ。

BIMで行う業務やマシンの種類にもよるが、この例のように2万円弱のわずかな投資でマシンをさらに2~3年は使えるように変身させることも可能なのだ。新品のワークステーションを買うと少なくとも10万~20万円程度はする。それに比べて圧倒的に低いコストと言えるだろう。

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2万円弱のグラフィックボード「FirePro V3900」(左)への投資で、やや古いマシンもBIM対応が可能に(右)

「当社のように、BIM用に200台近いワークステーションやパソコンを持つ設計事務所にとっては、マシン1台当たりの投資額が全体のコストは大きく影響してきます」と同社情報・プレゼンテーション部の吉田正行氏は説明する。

安井建築設計事務所のように、全社でBIMを活用する設計事務所はこれからどんどん増えてくるだろう。その時、マシンスペックが不十分だとせっかくのBIM活用の効果も生かせない。

BIMの導入と活用促進には、高いコストパフォーマンスと信頼性を持つ「FirePro V3900」のようなグラフィックボードの活用も併せて考えたい。 

【問い合わせ】

株式会社エーキューブ

〒102-0076 東京都千代田区五番町2-4 カサ・ド・タク30C
TEL:03-3221-5950(代)  FAX:03-3221-5953
ホームページ : http://www.acube-corp.com/


 
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