「現場の仕事に集中したいのに、雑務に追われて長時間労働が解消しない―――」。こんな建設実務者dの悩みを解決してくれるのが、建設業向けにスポットワークを活用する新たな取り組みだ。現場が多忙な時に、1日単位で事務作業やITサポートなどを手伝ってくれる人を募集できるため、技術者や実務者は本来の現場業務に集中できる。CIVIL
CREATEとタイミーが手を組んで実現した新しい働き方は、建設現場にどんな変化をもたらしてくれるのだろうか。
建設業でスキマバイトを実現
年々、人手不足が深刻化する建設業界では、現場の施工管理者や実務者の業務量は減るどころか、ますます増えているのが現状である。
しかも2024年度から適用された時間外労働の上限規制、いわゆる「建設業の2024年問題」によって、これまでのように無制限に残業をすることは不可能となった。いったい、どのように働けばいいのか、と途方にくれてしまいそうだ。
そんな心配を解決してくれるのが、CIVIL CREATE(本社:千葉県船橋市)と、タイミー(本社:東京都港区)が業務提携して生産性向上と人手不足の解消を図る、建設業向けの取り組みである。
タイミーは働き手の「働きたい時間」と、企業の「働いてほしい時間」を、スマホアプリによってマッチングするスキマバイトサービス「タイミー」を運用している。既に1000万人以上のワーカーが登録している。
今回の取り組みでは、このスキマバイトサービスを活用し、CIVIL CREATEが有するノウハウをもって、短時間・単発での勤務となるスポットワーク人材にも任せられるような事務業務を切り出し、業務の細分化によって、生産性向上と人手不足の解消を図る、建設業向けに特化した取り組みだ。
建設業の未来を切り開く新しい働き方
建設会社がタイミーを導入すると、求人募集はスマホやパソコン上で、スポットワーカーに来てほしい日時、職種、業務内容や条件などを入力するだけ。
するとタイミーのアプリ上に求人情報が掲載され、求人情報を閲覧したスポットワーカーから、働きたい人が応募してくる。
仕事の当日は、システム上で発行されたQRコードをスポットワーカーにスマホで読み込んでもらうだけで出勤手続きが完了。仕事が終わったら再びQRコードを読み込むだけで報酬が確定し、ワーカーには当日中に報酬が振り込まれる。
事業者のタイミー活用サポートを担当するタイミー九州支社の大城祐二氏は「アルバイト料はタイミーが立て替えて本人に当日、振り込むので、建設会社側は月末などにまとめて支払うだけです。そのためバイト料支払いの手間がかかりません」と説明する。
建設実務を熟知したCIVIL CREATEが提案
既に物流や飲食、小売りなどの業界で人手不足問題を解消する方法として実績を上げているが、建設業での実現には課題も多かった。その理由は、建設現場で行う建設や解体など作業のスポットワークは、法律上の制約で実施が難しいことにある。
その困難を克服したのはCIVIL CREATEの代表取締役、川西敦士氏からの提案だった。
「建設現場ではモノづくりを行う現場業務のほかに、書類整理や写真管理、IT業務のサポートなど、建設業法に該当しない仕事も多くあります。建設業でもタイミーが扱える業務があることを説明しました」と川西氏は振り返る。
川西氏はCIVIL CREATEの代表を務める一方、大手ゼネコンの現役社員でもある。長年、様々な工事現場で施工管理などに携わってきたため、建設業の実務を熟知した視点でスポットワークの活用を提案してきた。
一方、タイミーの大城氏は「建設業と言えば、現場での作業ばかりなので法律的にスポットワークは難しいというイメージを持っていたので対象業種から外していました。しかし、川西さんの話を聞き、事務作業やデジタルサポートといった業務が多いことを知り、建設業の実務を熟知したCIVIL
CREATEと業務提携を結び、進出することにしました」と語る。
こうした両社の出会いが、建設業界向けのスポットワーク導入の実現に結びついたのだ。
意外に多い現場の事務作業
「事務的な業務を行ってくれるだけで現場の人手不足問題を解決し、2024年問題も克服する」と言うと、「そんな都合のいい話があるのか?」と思う人もいるだろう。そんな人は自分の1日の仕事を振り返ってほしい。
現場に出て作業や施工管理の仕事はもちろんあるだろう。しかし、それ以外に現場事務所に戻ってからは工事写真の整理や日報の入力、さらには近隣住民に工事への協力を求めるビラ配りなど、必ずしも施工管理技術者としての資格やスキルが必要でない事務処理的な仕事も多いのではないだろうか。
この事務処理的な仕事は意外と多い。建設事務を専門に担う人材を育成する建設ディレクター協会(所在地:京都市)によると、施工管理者の業務のうち資格や専門知識が必要でないため、他の人に任せられる仕事は最大6割にも上るという。事務処理的な仕事こそが、実務者を忙しくさせている最大の原因なのだ。
「もちろん、事務的な仕事を他人に任すと言っても、すぐに任せられる単純作業から建設実務の知識が必要な事務作業、そしてBIM/CIMやドローンのデータ処理など専門的な知識が必要なものまで様々です。平常時は『固定人員』だけで業務を行い、業務量が増えてきたら『変動人員』としてタイミーのスポットワーカーに、比較的簡単な作業をサポートしてもらうことで、スムーズな業務運営が可能になります」と、CIVIL CREATEの取締役 COOの長田将吾氏は説明する。
こうした事務処理的な仕事を切り出して、スポットワーカーに任せることで、建設実務者の仕事は劇的に楽になりそうだ。
スポットワークで建設DXの推進効果も
ひと昔前に比べて、建設業にはIT技術が大幅に導入され、現場での事故は大幅に減り、女性技術者も増えるなど、大きく変化している。その一方で一般の人には、「建設業はなんとなくこわい」「ブラックなイメージがある」という意識が多いのも事実だ。
そこに、最短1日単位で働けるタイミーが参入することは、一般の人が気軽に建設業を体験できる「窓口」を作ることとして大きな意義がある。
「タイミーにはスポットワーカーが働いた職場を評価するシステムがあるので、労働環境がブラックな企業や職場は自然に淘汰されていきます。そんな場所で建設業の求人が紹介されていれば安心感も高まり、一度、建設業で働いてみようかなと思う人も増えるでしょう」とタイミー コーポレート本部 PRチームリーダーの東郷章人氏は説明する。
「建設業はこわそうなイメージもありますが、意外と優しい人が多いです。一度でも建設業に携われば、『思っていたのと違う!意外と働きやすい!』と思ってくれる人も多いでしょう」(川西氏)
「またデジタル技術で生産性向上や働き方改革が求められている時代に、ITが苦手な人も多くいます。そんな建設業の職場に、スマホなどを使いこなすスポットワーカーが入ってくることで建設業を見直したり、建設DXの業務に興味を持ったりして、正社員として就職してくれる人も出てくるのではないでしょうか」(同)
建設会社にとって”朗報”なのは、タイミーの気に入ったスポットワーカーを正社員として引き抜いても、紹介料などは一切、かからないことだ。いろいろな人に建設業の職場で就労体験してもらい、これまでは出会うことができなかった人材を見つける可能性があることもタイミーを利用するメリットだろう。
CIVIL CREATEが導入をサポート
CIVIL CREATEは、タイミーのスポットワーカー向けに「建設業入門マニュアル」を作成中だ。建設業で使われる用語や、建設事務の仕事の種類などを一般の人にもわかりやすく説明するものだ。
「現場事務所の仕事を、シュレッダー処理、ヘルメットの清掃、ファイリング、掲示物のラミネート加工、近隣住民へのビラ配りなど、細かく種類分けしています。ここまで細かく整理してスポットワーカーに『切り出し』を行えるようにした例は、これまでなかったでしょう」(川西氏)。
これまでの現場事務所では、施工管理者などが高度な知識やスキルが必要な仕事から、単純作業までをごちゃまぜに行っていた。
しかし、貴重な施工管理者の人材不足は深刻化し、給与もうなぎ上りの昨今、限られた労働時間を高付加価値な業務に集中してもらい、それ以外の仕事は事務処理の専門家やスポットワーカーに任せるという切り分けが現場運用で不可欠になってきそうだ。
CIVIL CREATEは今後、スポットワークと建設ディレクター制度との連携を進めるほか、全国の建設会社への導入、自治体との連携による建設事務の標準化を進めていくと同時に、このサービスの普及活動を進めるパートナー企業も募集中だ。
建設業での新しい働き方を導入し、共に建設業の未来を創り、切り拓いていきたい企業は、同社にアクセスしてみてはいかがだろうか。
【問い合わせ】 | |
CIVIL CREATE 株式会社 本社:千葉県船橋市上山町1-162-40 ホームページ:https://www.civil-create.com/ |