2D CAD感覚で配筋をBIM/CIMモデル化!「3D配筋X」で図面作成の生産性は5倍に(テラドローン)
2025年6月6日

ドローン分野のスタートアップとして知られるテラドローン(正式名称:Terra Drone株式会社。本社:東京都渋谷区)は、国土交通省が推進する「i-Construction」施策対応の新製品「3D配筋X™」を発売した。AutoCADやCivil 3D、DWG互換CADのアドオンソフトとして機能し、鉄筋コンクリート構造物や配筋の主要寸法を入力するだけで、複雑な3D配筋モデルを自動で作成できる。しかも3Dモデルと2D CADが双方向に連動し、モデリングや修正も簡単だ。このツールによって、配筋図作成の生産性は5倍になると見込まれている。

「3D配筋X」の画面。CADの画面上に3次元配筋モデルと2次元図面が共存し、相互に連携するので修正も簡単だ

「3D配筋X」の画面。CADの画面上に3次元配筋モデルと2次元図面が共存し、相互に連携するので修正も簡単だ

 どんな構造物の3D配筋モデルも自動作成

国土交通省の「i-Construction」施策などによって、土木・建築分野にBIM/CIMが急速に普及してきた。

構造物の形や大きさを表す3Dモデルと、部材の材質や仕様などを表す属性情報が一体化したBIM/CIMモデルは、3Dによる干渉チェックや施工手順のビジュアルな表現から、図面作成・修正の効率化、そして部材数量の集計表など、様々な用途に使われ、業務を効率化することが期待されている。

中でも、以前から課題とされてきたのが配筋のBIM/CIM化である。これまでは鉄筋を一本一本、手作業で入力したり、構造物の設計ソフトから自動出力したりすることが多く、配筋モデルの作成に手間ひまがかかり、傾きを持つ基礎など特殊な形状の構造物に対応しにくいことが多かった。

そこで、こうした課題の解決を目指してテラドローンが開発したのが「3D配筋X™」というツールだ。

これまでのBIM/CIMと違うのは、面や立体からなる構造物の外形や配筋の3Dモデルを作成するとき、マウスを動かすのではなく、主要部分の寸法や鉄筋径・ピッチなどのパラメーターをいくつか入れるだけで、あとは自動的に3Dモデルを作成できる点だ。

マウスで一つ一つの部材を入力することなく、主要パラメーターから3次元配筋モデルを自動作成する手順

マウスで一つ一つの部材を入力することなく、主要パラメーターから3次元配筋モデルを自動作成する手順

パラメーターの入力画面(左)と自動生成された配筋モデル(右)

パラメーターの入力画面(左)と自動生成された配筋モデル(右)

「これまでの設計プログラムと違うのは、どんな形の構造物でも対応できることです」と、開発を担当したテラドローン i-Con推進部の宇都本彰夫氏は語る。

「3D配筋X™」は、AutoCADやCivil 3Dのほか、ARESやIJCADなどDWG互換CADのアドオンソフトとして機能する。構造物を囲む面を認識し、面と平行に離隔距離を保ちながら、配筋本数やかぶり厚などのルールに従って、配筋を3Dモデル化する機能を持つ。

そのため、勾配のある地盤に建設する基礎や途中で断面が変化する橋脚やカルバート、斜角を持った床版など、様々な形状の構造物の設計に活用できる。

 3Dモデルと2D図面が相互連動

配筋BIM/CIMモデルのもう一つの課題は、3Dモデルから自動的に2Dの図面作成ができないことだった。

「その理由は、単純に3Dモデルを投影しただけだと、図面として使えるものにならなかったからです」(宇都本氏)と語る。

そのため図面化の段階では、3Dモデルから平面図、断面図、立面図などに切り出して手作業で作図していく必要があった。

そして、設計に1カ所でも修正が発生すると、切り出した複数の図面のほか、3Dモデルも同時に修正する手間がかかっていた。

その点、「3D配筋X™」は3Dモデルと2D図面が同じ画面上に表示され、2D図面のどれかを修正すれば、他の図面や3Dモデルも同時に修正される。また、3Dモデルを修正すると各図面にも自動的に反映されるので、修正作業は大幅に楽になった。

3次元配筋配筋モデルと2次元配筋図面が同じ画面上に表示され、修正内容は相互に反映される

3次元配筋配筋モデルと2次元配筋図面が同じ画面上に表示され、修正内容は相互に反映される

こうした不便は、配筋図作成にかかわるBIM/CIMユーザーが感じてきたことだが、市販のソフトではなかなか機能に反映されなかった。それが「3D配筋X™」で実現したのは、開発者の宇都本氏がもともと準大手ゼネコンや設計事務所で、配筋図作成の実務に携わった経験があるからだ。

「私自身、が設計実務を行った経験があり 、既存のBIM/CIMソフトの使い勝手にはユーザーとして不満がありました。その不便を解消しようと、今回のツールを開発しました。従来のように3Dモデルと2D図面を同時に修正する必要がないので、配筋図の作成にかかる時間は、約8割削減できる感覚です」と宇都本氏は語る。配筋図の作成時間の省力化(※1)により、生産性は、約5倍になる計算だ。

※1 3次元配筋モデル、2次元構造図・配筋図、鉄筋加工図、鉄筋数量表の作成を含む。

 大手ゼネコン、建設コンサルタントの共同開発にも採用

テラドローンはこれまで、ドローン(無人機)分野のスタートアップとして、国内外で業績を伸ばしてきた。海外市場にも積極的に進出し、 「ドローンサービス企業 世界ランキング」では、5年連続トップ2にランクイン、2024年には世界1位の地位を誇るまでになった。

ドローン専業のイメージが強かったテラドローンだが、国交省の「i-Construction」施策を軸にして関連分野にも事業を拡大しつつある。その中で2024年1月に誕生したのが、BIM/CIM関連の事業も手掛けるi-Con推進部だ。

その実力は早速、建設業界でBIM/CIM活用の最先端を行く企業にも受け入れられている。例えば、大林組、建設技術研究所、八千代エンジニヤリングの3社が進めている配筋のBIM/CIMモデル自動作成に関する研究開発プロジェクトだ。

3社は土木業界で需要の多いボックスカルバートの配筋図作成を、効率化するための技術開発を行っていたが、3次元モデルを2次元化するアルゴリズムの開発が課題となり、
実現していなかった。

「これとは別に3D配筋X™を開発していた当社が、偶然、そのプロジェクト関係者に3D配筋X™を紹介したところ『これは使える』ということになり、採用されました。そして2024年4 月からは、テラドローンもこのプロジェクトに参加することになりました」と、i-Con推進部マネージャーの松崎慎太朗氏は語る。

 利用料金は年間5人利用で50万円から

配筋図作成の生産性を5倍に上げる「3D配筋X™」の価格は、ユーザー数に応じた形での料金設定となっている。ユーザー数が5人までの「ライトプラン」の場合、導入時の1年目に50万円(税別)、2年目以降は10万円とリーズナブルだ。このほか10人までの「スタンダードプラン」、ユーザー数無制限の「プレミアムプラン」が用意されている。

これまでドローンの分野で建設業界に貢献してきたテラドローンは、2024年11月29日、東京証券取引所グロース市場に上場を果たした。これをきっかけに、今後はBIM/CIM分野などでもi-Constructionを支えていくことになりそうだ。

i-Con推進部マネージャーの松崎慎太朗氏(左)と宇都本彰夫氏(右)

【問い合わせ】
Terra Drone 株式会社
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2丁目12-19
東建インターナショナルビル3階
TEL 03-6419-7193
ウェブサイト https://terra-drone.net/
3D配筋X™の製品ページ https://3d-x.terra-drone.net/
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