日本建設が『Super Build/SS3』でBIMワークフロー構築
構造データを天空率検討、意匠設計に連携 (ユニオンシステム)
2015年5月2日

東京・文京区の日本建設は、ユニオンシステムの一貫構造計算ソフト『Super Build/SS3』(以下、『SS3』)を組み込んだBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ワークフロー構築を目指している。既に『SS3』と企画設計ソフト『TP-PLANNER』との双方向データ連携を実現。現在は意匠設計用BIMソフト『GLOOBE』とのデータ連携の実現に向けて取り組んでおり、将来は『GLOOBE』上で意匠と構造のデータを統合管理するのが目標だ。

『Super Build/SS3』を組み込んだBIMワークフローの構築を目指す日本建設

『Super Build/SS3』を組み込んだBIMワークフローの構築を目指す日本建設

   『SS3』から天空率検討、BIMモデルへとデータを連携

「ユニオンシステムの一貫構造計算ソフト『SS3』と、コミュニケーションシステムの企画設計ソフト『TP-PLANNER』の間で双方向のデータ連携が実現し、鉄筋コンクリート構造の仮定断面算出から意匠パース作成までがスピーディーに行えるようになりました」と語るのは、日本建設東京本社建築本部構造設計室の内村友重室長だ。

「『SS3』のデータは『TP-PLANNER』から「ST-Bridge形式」に書き出し、福井コンピュータアーキテクトのBIMソフト『GLOOBE』とも連携できます。そのため、BIMモデルを使った本格的なCGパースも作成できます」(内村室長)。

日本建設はこれまで20数年にわたり、『SS3』(『SS1』『SS2』を含む)を活用してきた。そのデータを元にBIMのワークフローを構築するきっかけとなったのは、2013年11月に『TP-PLANNER』、2014年10月に『GLOOBE』を相次いで導入したことだった。

『SS3』で設計した建物の構造部材

『SS3』で設計した建物の構造部材

「会社でBIMソフトを導入するときに、構造設計をBIMのワークフローとどう連携できるかを考えました。オフィスビルや商業施設などの案件が持ち上がったとき、まずは構造設計で仮定断面を出し、それをTP-PLANNERと連携させてクオリティーの高いパースを作ることで客先にスピーディーな提案を行えるようにしようと考えたのです」と内村室長は語る。

   日本建設を中心に勉強会を開催

しかし、日本建設がBIMソフトを導入した2014年10月当時は、『SS3』と『TP-PLANNER』の間でのデータ交換機能は、例えば一度『TP-PLANNER』で入力した建具情報などがデータ連携をするたびに上書きされて情報が消えてしまうなど、日本建設が目指すワークフローには十分でなかった。そこで内村室長が呼びかける形で日本建設とユニオンシステム、コミュニケーションシステムの代表者が集まる勉強会を毎月1回、開催し、両ソフトのデータ交換機能を改善した。

「その結果、鉄筋コンクリート構造については差し替えたい情報のみを両ソフト間でデータ連携することを可能にいたしました。現在は鉄骨のデータが連携できるように改良をお願いしています」(内村室長)。

*『TP-PLANNER』では、床情報から梁柱の仮定断面データが自動配置されます。そのデータを『SS3』にインポートし解析することが可能です。その際『TP-PLANNER』で配置した建具情報は、『SS3』では開口情報に自動変換されます。『SS3』の解析結果を再度『TP-PLANNER』に読み込む場合は、建具、階段室など『TP-PLANNER』で入力済み情報がそのまま利用されます。

一方、以下の例は『SS3』で入力したデータからBIM情報を作成するための手法です。『SS3』で入力した開口情報を建具に変換し、さらに壁柱の階段室を『TP-PLANNER』で追加入力することによりIFC情報が構築されます。このことは構造計算を起点とした情報から『TP-PLANNER』連携により意匠要素が付加されたIFC形式のBIM情報が作成されることを意味します。

『SS3』のデータを『TP-PLANNER』に読み込んだところ

『SS3』のデータを『TP-PLANNER』に読み込んだところ

『TP-PLANNER』で建具や階段を入力した例。このモデルで天空率の検討を行う

『TP-PLANNER』で建具や階段を入力した例。このモデルで天空率の検討を行う

勉強会には『GLOOBE』の発売元である福井コンピュータアーキテクトが加わったほか、鉄筋積算システムなどのBIM関連ソフトベンダーもゲストとして参加し、データ連携の改善に取り組んでいる。

内村室長はさらに高度な連携を目指している。それは、『SS3』から構造用のデータ交換標準である「ST-Bridge形式」のデータを書き出せるようになった際、『SS3』と『GLOOBE』を直接データ連携できるようにすることだ。

『SS3』のデータを、『TP-PLANNER』を経由して『GLOOBE』に読み込んだ直後のBIMモデル

『SS3』のデータを、『TP-PLANNER』を経由して『GLOOBE』に読み込んだ直後のBIMモデル

『GLOOBE』で外壁仕上げを自動張り付けしたBIMモデル

『GLOOBE』で外壁仕上げを自動張り付けしたBIMモデル

「現在でも、『SS3』は『TP-PLANNER』を介して『GLOOBE』とデータ連携は可能です。しかし、「ST-Bridge形式」で直接連携できるようになると、ひと手間が減るのでさらに効率的になります。将来的には、『GLOOBE』上で意匠と構造の設計を行いながら『SS3』や『TP-PLANNER』で検討し、その結果をフィードバックして設計を最適化できるワークフローを目指したいと思います」と内村室長は語る。

現在、ユニオンシステムは『SS3』のデータを「ST-Bridge」のデータに書き出すプログラム開発作業を行っている。

『SS3』から「ST-Bridge形式」のデータが書き出せるようになると、日積サーベイの積算ソフト『HEΛIOΣ(ヘリオス)』との連携も可能になり、日本建設のBIMワークフローはさらに広がるのだ。

ユニオンシステムの一貫構造計算ソフト『Super Build/SS3』を軸としたBIMワークフロー構想

ユニオンシステムの一貫構造計算ソフト『Super Build/SS3』を軸としたBIMワークフロー構想

   ユニオンシステムのソフトの魅力とは

日本建設では『SS3』(『SS1』『SS2』を含む)を20年以上にわたって業務に活用しているほか、ユニオンシステムのソフトのほとんどを導入している。その理由はどこにあるのだろうか。

この問いに対し、内村室長は導入当時「『SS3』は圧倒的にシェアが大きく、他のソフトともデータ連携性がよいのが魅力です。例えば、構造を見直して設計を合理化する構造VEの業務では、元設計の構造計算でも『SS3』が使われていることが多くあります。改善後も同じ『SS3』で計算すると比較が明確に行えるのもメリットですね」と語る。

「このほか、ユニオンシステムは構造設計関連の最新情報を電話や訪問によってユーザーに随時、提供しています。こうした構造設計業務に関するアフターサービスも便利に活用しています」(内村室長)。

『SS3』(『SS1』『SS2』を含む)が誕生してから2015年で28年目に突入する。Windows95やMS-DOSが誕生するよりもはるか前のことだ。こうした長い歴史こそが、ユニオンシステムのユーザーに対する手厚いサポートを証明しているとも言えそうだ。

そして、BIMの時代になり、『SS3』は他のソフトとのデータ連携機能を強化することにより、さらなる進化を遂げつつある。

日本建設 東京本社建築本部構造設計室 内村友重室長

日本建設 東京本社建築本部構造設計室 内村友重室長

【問い合わせ】
ユニオンシステム株式会社
〒542-0012 大阪市中央区谷町6-1-16 ナルカワビル
TEL 03-3352-6121(東京)、06-6768-9338(大阪)、052-269-3311(名古屋)
WEB http://www.unions.co.jp/
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