札幌市に本社を置く岩田地崎建設は、2017年にICT推進部を設置し、オートデスクのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)ソフトを本格活用し始めた。以来、建築・土木分野でのBIM、CIM利用率は急速に上がり、3年後の2020年には全物件の90%で活用する方針だ。BIM、CIMのスピード導入が成功した秘訣(ひけつ)は何なのか。同社に直撃取材した。
導入2年でBIM43%、CIM65%の利用率
「2018年度末で、建築案件では43%、土木案件では65%に、BIM、CIMを活用するまでになりました。2020年度には建築・土木の活用率をそれぞれ90%まで高めるのが目標です」と語るのは、岩田地崎建設ICT推進部推進課長の山田雅氏だ。
同社が本格的にBIM、CIMの活用に乗り出したのは、2017年4月、本社にICT推進部を設置してからだ。それからわずか2年で、急ピッチで実プロジェクトへの導入を進めた。
例えば、新千歳空港国際線ターミナルビルの新築工事では、鉄骨建て方作業の手順検討、さらには2018年9月に発生した北海道胆振東部地震に伴って天井を木製ルーバーから幕天井へ急きょ、変更する際の検討にも活用した。
このほか、建築プロジェクトとしては異例の3Dマシンコントロール付きバックホーによる基礎根掘りの情報化施工や、トータルステーションとBIMを連携させた杭の打設精度管理なども行った。
また、土木分野では東京・上野駅前の下水道シールドトンネル工事で、3Dレーザースキャナーで計測した地上部の点群データと、地下構造物のCIM (Civil 3D) モデルを合体させて地下を見える化しながら施工手順の検討や施工管理などを行った。
本社の役員フロア改装をBIMで計画
建築部門の根切り工事に、土木の情報化施工で使われる3Dマシンコントロール付き重機を使うなど、建築と土木が融合したBIM、CIM活用を実現しているのは、ICT推進部のメンバー構成にある。
「ICT推進部には、オートデスクのBIMソフト『Autodesk Revit』を担当するメンバー2人と、CIMソフト『Autodesk Civil 3D』を担当するメンバー3人がいます。建築と土木の社員が共存しているため、両分野の技術交流が自然に進んでいます」と、ICT推進部長の小田桐道弘氏は説明する。
岩田地崎建設のBIM活用は、北海道江別市にある「のっぽろクリニック」の建設プロジェクトから始まった。内装や外装デザインの検討のほか「スーパーフレーム」というトラス構造の屋根と設備機器の干渉検討を行ったものだ。
また、岩田地崎建設本社ビル9階の役員フロアの改修工事にもBIMを活用し、内装材や家具、照明などの検討に活用した。
建設会社の役員フロアとなると、様々な専門的意見やニーズが飛び出し、調整に苦労しそうだが、BIMの可視化力によってうまくプランをまとめることができ、竣工後も「こんなはずではなかった」といった問題も起こらなかったという。
このほかのBIM活用では、エア・ウォーター月寒の研究所ビルで複雑に入り組んだ屋上設備の配置検討や、東白石小学校の改築で工程によって変化する仮設の計画を3Dで行った。
また、支笏湖畔に建つホテル「しこつ湖 鶴雅別荘 碧の座」では、大浴場などで微妙な高低差のあるフロアの基礎配筋の施工検討や屋根形状の確認などをBIMで行った。
地下の見える化から始まったCIM
一方、土木のCIM活用は、地下の見える化から始まった。地下鉄在来線の上に建設した「西2丁目地下歩道」がそのプロジェクトだ。
「この地下歩道の下には、地下鉄在来線があり、周囲の建物や電気・ガス・水道等の埋設管があるので、これらの既設構造物や埋設管に悪影響を及ぼしてはいけません。そこで、地下に打設するH鋼や地下連続壁などの仮設構造物を見える化するためにCIMに取り組みました」と山田氏は振り返る。
その後、CIMの活用は、道路、橋梁、ダム、トンネル、下水道など様々な工種に広がった。新石狩大橋の建設工事では、圧気工法で建設する橋脚のケーソン構造をCIMで検討したほか、北24条大橋では上部工の仮設の計画や施工手順の検討をCIMで行った。
神奈川県内で施工した厚木環状道路のバイパス新設工事では、トンネルの施工計画、地盤改良杭の施工計画、3Dマシンガイダンス搭載のバックホーによる施工のほか、大タカ営巣地点の環境調査、日影による水田への影響調査など環境面での検討にもCIMを活用した。
さらに大谷川砂防ダムの建設では、3Dモデルによる完成予想と施工管理、仮設計画への利用、土砂崩れ災害の状況把握や変更計画への対応にもCIMを活用し、迅速で的確な判断につなぐことができた。
BIM、CIMを短期導入するコツは
本格導入から、わずか2年でこれほど幅広いBIM、CIMの展開が実現した背景はどこにあるのだろうか。
ICT推進部 担当部長の堀田繁夫氏は「初めは現場の技術者全員がBIM、CIMソフトで3Dモデルを作れるようにしようと考えていたが、それは難しいことがわかった。そこで今は、まずICT推進部でたたき台の3Dモデル作り、現場に持って行って現場のニーズを聞き、改良する方法に改めた」と語る。
BIM、CIMソフトを活用していく上の教育訓練は、ベンダーやCivilユーザ会による講習会のほか、インターネット上の教材なども幅広く利用している。
「また、ICT推進部から社内ユーザーへの指導には、テレビ会議システムを使い、相手のモニター画面を見ながら指導できるようにしています」と堀田氏は言う。
こうした取り組みの結果、社内ではBIM、CIM活用の効果も現れてきた。
「現場で発注者や設計者を交えて会議を行うとき、これまでは全部の図面とスケッチなどを準備するのが大変でした。ところが今ではBIM、CIMモデルが1つあれば、それを開いてあちこち見ながら検討できるようになりました」(山田氏)。
「2次元図面だと、合意形成できたと思って各自の理解やイメージに差が出てしまいます。その点、3次元モデルだと誰もが同じように理解でき、誤解が生じません。本支店間のコミュニケーションツールとしても、BIM、CIMは大いに役立っています」(堀田氏)。
「今後の課題は、オートデスクのクラウドサービス、『BIM360』を通してタブレット端末にBIM、CIMモデルを入れたり、測量機器と連動させたりして現場の最前線で活用したいと考えています」と、小田桐氏はしめくくった。
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