本間組の施工BIMに鉄骨、設備会社も続々参加! 企画から竣工までをワンモデルで一気通貫(オートデスク)
2021年8月4日

2013年に設計BIM、2018年に施工BIMの取り組みを始めた本間組(本社:新潟県中央区)は、2020年に施工した新潟いすゞ自動車長岡支店のプロジェクトにおいて、ついに本格始動した。鉄骨ファブリケーターや電気・機械設備会社が制作したBIMモデルを組み込んだ「ワンモデル」によって設計から施工までを“一気通貫”で推進し、手戻りがほとんどないまま竣工を迎えたのだ。

自社の意匠BIMモデルと協力会社の構造・設備BIMモデルを統合したワンモデル(左)計画通りに完成した新潟いすゞ自動車長岡支店の整備工場(右)

 設計BIMから施工BIMへ着々と前進

企画設計部担当課長
南雲 裕貴 氏

本間組は2013年にオートデスクのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト、「Revit」などを導入して以来、企画設計から基本設計、建築確認図、さらには携帯端末やVR(バーチャルリアリティー)での利用と、設計部門でのBIM活用を着実に前進させてきた。

そして2018年には施工BIMへの取り組みもスタートさせて、仮設足場や重機配置の検討などを手始めに、モデル現場で試行した。

その集大成とも言えるのが2020年に施工した新潟いすゞ自動車長岡支店の移転新築工事だ。新潟県長岡市内の約2万2000m2の敷地に立つ、延床面積6000㎡弱、地下1階、地上2階建ての鉄骨造で、事務所と自動車整備工場からなる。本間組は設計・監理に続き、本間・丸運特定共同企業体として施工も請け負った。

「建築確認申請後、着工まで約5カ月あったので、着工までに施工BIMモデルを“竣工”レベルまで作り上げることができました」と語るのは、本間組 建築事業本部 企画設計部 担当課長の南雲裕貴氏だ。

本間組の施工BIM活用技術の集大成とも言える、新潟いすゞ自動車長岡支店の新社屋のBIMモデル

同社はこのプロジェクトで施工BIMへの取り組みをさらに進化させるため、本間組は建築部と企画設計部が中心となってプロジェクトチームを結成した。

2019年11月27日に開催した第1回のBIM推進会議では、施工BIMへの取り組み方針を決め、(1)鉄骨ファブリケーターやサブコンが作成した詳細BIMモデルを使った干渉チェック、(2)仮設足場のBIMモデル化、(3)鉄骨建方の4Dシミュレーションを行うこととし、スケジュールを決めた。

本間組のBIM活用の歴史

建築確認申請後から着工まで5カ月間を主な活動期間に充てたBIM推進会議の参加メンバーと内容

 協力会社も施工BIMに続々参加

これらの取り組みには、協力会社とのBIMモデル連携が必要となる。そこで同12月19日に開催した第2回会合では、設備課のスタッフにも参加してもらった。

鉄骨ファブリケーターへの協力依頼を行うに先立って、他の現場で作成した鉄骨BIMモデルの読み込みテストを行った。また、設計部門ではドローン(無人機)測量結果を点群化し、仮設足場のモデルも作成した。

「ドローン測量は、以前に当社土木部門より操作やデータ管理についてレクチャーを受けていたためスムーズに実施できました。土木部門には国土交通省のi-Construction対応工事で培った経験やノウハウがあったため、助かりました」(南雲氏)。

自社のドローンで撮影した着工前の現場

ドローンで空撮した写真を点群データ化

点群間を面でつないだサーフェスデータ

翌2020年1月23日の第3回には鉄骨ファブリケーターの樋口鉄工建設(本社:新潟市秋葉区)が参加し、鉄骨専用ソフト「REAL4」で作成した3DモデルをIFC形式で受け取った。

同2月26日の第4回には電気設備サブコンのユアテック(本社:仙台市宮城野区)も参加。同社が設備用BIMソフト「CADEWA」で作成した3DモデルをIFC形式でオートデスクのBIMモデル統合ソフト「Navisworks」に取り込み、意匠、構造基礎、鉄骨BIMデータを統合して干渉チェックを行った。

干渉チェックは“自動モード”だけでなく、ベテラン技術者による目視確認も併用した。すべてを自動で行うと柱が床コンクリートに埋まっているなど、問題ない部分まで干渉として扱われてしまう一方、部材間は干渉していないものの、施工時の作業スペースが不十分な部分もあるからだ。

そして着工直後の同3月25日に開催した第5回で、電気・機械設備のBIMモデルも受け取り、すべてを統合した。バーチャルな総合図とも言える「ワンモデル」が完成したのだ。

この時、関係者間でのBIMデータを共有する方法も周知し、施工中の効率的なデータ交換に備えた。

鉄骨ファブリケーターがREAL4で作成した鉄骨BIMモデルと当社作成の基礎BIMモデルを統合

協力会社のユアテックがCADEWAで作成した電気・設備BIMモデル。空調や換気のダクト、照明器具、ケーブルラックなど細かいデータを網羅

意匠、構造基礎、鉄骨、電気設備、機械設備をすべて合体した統合BIMモデル

すべてのモデルを統合して行った干渉チェック。鉄骨と電気設備同士の干渉を明示

ベテラン技術者による目視による干渉チェック。自動、非自動のメリット、デメリットを理解したうえで効果的に活用

鉄骨ファブリケーターや電気・設備の協力会社も参加した第5回BIM推進会議

 着工後は現場事務所でもBIMソフトを活用

企画設計部長
古澤 聡 氏

3月16日の着工後は、BIM推進会議で作られたBIMモデルに基づいて施工を進めることになった。

施工段階では、現場事務所に専用のパソコンを設置してAECコレクションをインストールし、BIMモデルを参照しながらの施工管理を行った。起工測量として、ドローンで空撮した写真をオートデスクの点群処理ソフト「ReCap」で処理し、点群データ化。さらに面を張ってTINサーフェスデータ化した。

また鉄骨の建て方4Dシミュレーションは、RevitのモデルをNavisworksに読み込み、現場事務所のスタッフが作成したものだ。

工事がスタートした後、同6月8日に開催された6回目の会議では、現場でBIM利用に向けて説明を行い、その後さらに施主に対して、BIMを用いたプレゼンテーションも行った。

「施主との定例会議では360度パースや簡易ウォークスルー動画も使いました。図面を見慣れない施主に、複雑な工場内のイメージをつかんでいただく上でも効果的でした。そのおかげで、施工中の手戻りにつながる設計変更も、ほとんどありませんでした」と、建築事業本部企画設計部長の古澤聡氏は語る。

「着工段階で、既にBIMモデルはバーチャルに完成していたと言っても過言ではありません。BIMモデルの中で行った設計や工程シミュレーションを、リアルな現場で再現するような施工でした」(古澤氏)。

IQクサビ足場による仮設足場のBIMモデルは工務課で作成

鉄骨建方の4Dシミュレーション。現場事務所の技術者によって作成

BIMモデルの計画通りに工事が進む現場

また工場周辺は冬の間、強い西風が吹く。そこで屋上のエアコン室外機置き場は壁とルーバーで囲って防風し、室外機への霜の付着を抑えた。同時にエアコンからの排気が滞留しないようにする必要がある。

そこで風解析を行って壁やルーバー効果をシミュレーションすることで、その効果を視覚的に確認した。また風上側にある新幹線の高架や住宅地の影響で、多少風力が弱まることもわかり、施主に対して説得力のある説明を行うことができた。

屋上の室外機置き場を壁とルーバーで囲った影響を風解析でシミュレーションした結果

シミュレーション結果を平面図上に示したもの。上流にある上越新幹線の高架橋により、敷地付近の風はかなり弱まることが予想された

 クラウドシステムでBIMモデルを共有

プロジェクトチーム関係者間でのBIMデータ共有には、オートデスクのクラウドシステム「A360(※)」を利用した。クラウドにBIMモデルビューワーを備えているので、BIMソフトを持っていない人でもパソコンやタブレット、スマートフォンがあればBIMモデル閲覧や更新、コメントが行える。

(※)現在はAutodesk Drive (drive.autodesk.com)に移行

こうして協力会社を巻き込みながら進めた新潟いすゞ自動車長岡支店の工事は、2020年12月25日に無事完成した。

A360によるBIMデータ共有

360度パースによる施主へのプレゼンテーション

無事に完成した新潟いすゞ自動車長岡支店の新社屋

建築事業本部副参与
小林 一成 氏

「ワンモデルを関係者で共有し、更新していくことは、常に最新データの共有が可能となるため、プロジェクトを効率的に進めていく上でも役立ちました」と、建築事業本部副参与の小林一成氏は語る。

「IQクサビ足場による仮設足場モデルは、仮設専門業者の部材データをRevitに取りこみ工務課が作成し、工区ごとの組み立て順序や組み換え計画に活用しました。足場の部材集計表については当現場では実施に至りませんでしたが、Revitの機能を利用してスピーディーかつ正確に集計できるため、次の現場で活用する予定です。BIMの各種属性情報は便利に使えることを実感しました」(小林氏)。

今回のプロジェクトでは、協力会社も時代の流れに乗ってBIM化を進めたいという希望を持っていたこともあり、本間組のワンモデル作成を社外から支援した。

また本間組でも設計部の6人に加えて、工務課の2人もNavisworksなどBIMソフトを使い始めた。現在、オートデスクのAECコレクションを4ライセンス、Revit LTスイートを11ライセンス活用するまでになっている。

本間組ではワンモデルを施設維持管理でも活用することで、建築物のライフサイクルを通じて顧客サービスを行う「HONMA-BIM」をこれからも追求していく。そのために、ワンモデル活用のためのルール整備や社内でのサポート体制、データ軽量化のための標準化など、さらに効率的なワークフローを模索しているのだ。

本間組でBIMを推進する技術者たち。左から建築事業本部企画設計部長の古澤聡氏、企画設計部担当課長の南雲裕貴氏、同本部副参与の小林一成氏

【問い合わせ】
Autodesk Revit 日本公式Facebook
autodeskrevitjapan@facebook.com
https://www.facebook.com/RevitJapan

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