JR東日本建築設計が挑む都市環境DX! Revit×Formaによる解析から設計者が最適解を導く時代へ(オートデスク)
2025年12月16日

都市開発の高度化により、日影・風・温熱といった環境性能を設計初期から検証する重要性が増している。JR東日本建築設計(本社:東京都渋谷区)は、オートデスクのBIMソフト「Revit」とクラウド型設計支援プラットフォーム「Autodesk Forma」を活用し、東京・新宿駅周辺で多角的な環境シミュレーションを実施した。BIMを活用した環境DXに関する研究成果は2025年9月に米国・ナッシュビルで開催された「Autodesk University 2025」で発表され、世界のBIM関係者から注目を集めた。

新宿駅西口(左)と東口(右)の都市モデルデータを使って行ったミクロ気候解析結果

新宿駅西口(左)と東口(右)の都市モデルデータを使って行ったミクロ気候解析結果

 初期設計で都市環境への影響を評価

11の鉄道路線が集結し、一日の乗降客数が約350万人に達する新宿駅周辺には、超高層ビル群が立ち並び、公園や低層商業エリアも混在する。こうした環境では、建物形状が周囲の風・熱環境に与える影響は極めて大きい。

JR東日本建築設計(以下、JRE設計)は設計初期段階のシミュレーションの重要性を課題として考えていたが、2024年のAutodesk University 2024に参加し、他社の取り組み事例から大きな影響を受けた。

そこで今回、意匠設計者自身が設計初期段階で行う業務を想定し、オートデスクのBIMソフト「Revit」とクラウド型設計支援プラットフォーム「Autodesk Forma」(以下、Forma)による新宿駅周辺での様々なシミュレーションに挑戦した。

その成果は、2025年9月に米国・ナッシュビルで開催された「Autodesk University 2025」のカスタマーセッションとして採択され、発表当日は200人を超える聴衆が世界各国からセッション会場に集まった。

多くの参加者が押し寄せ熱気にあふれたJRE設計の発表会場の様子

多くの参加者が押し寄せ熱気にあふれたJRE設計の発表会場の様子

Formaは、初期段階の企画・基本設計を支援する強力なAI対応ツールも備えたクラウドプラットフォームで、Autodesk Construction Cloud(ACC)やRevitとも連携し、将来的に建築建設ライフサイクル全般をカバーするインダストリークラウドとしての開発が進められている。

建築・エンジニアリング・建設・運用領域で、日影、風、ミクロ気候など多様な環境解析を高速に実行できる。特別な環境解析ソフトを使い分ける必要がないため、建築プロジェクトの企画や初期設計を担う意匠設計者自身が、シミュレーションを繰り返せる点が大きな特徴である。

JRE設計では、オートデスクのBIMオートメーション化ツールである「Dynamo」を活用し、日本の建築基準法に基づく道路斜線・隣地斜線を自動生成し、Formaでの建物ボリューム検討に直接反映できる「JDLT(JRED Diagonal Line Tool)」というツールを独自に開発した。

同社 技術本部 IT推進部の二ノ宮正行氏は「このJDLTとForma を組み合わせることで、日本の都市特有の斜線制限を考慮した複数のボリューム案を作成し、建ぺい率や容積率などを同時に検証できる環境を構築しました」と説明する。

さらに、木造や鉄骨造などの構造形式を変えることで、建物が建設されてから解体されるまでのCO2排出量などライフサイクルアセスメント(LCA)も行った。このシステムによって、従来数日かかっていた初期案の作成を短時間で完了できるようになった。

敷地上に作成した建物の原型モデル

敷地上に作成した建物の原型モデル

建物外形の制約条件となる各斜線制限の面

建物外形の制約条件となる各斜線制限の面

建築可能な建物ボリュームの例

建築可能な建物ボリュームの例

 PLATEAUとBIMで高精度の都市解析へ

発表の内容は、建物のボリューム検討から風・熱環境、そしてライフサイクルCO2解析まで、多岐にわたった。

特に注目を集めたのは、国土交通省が公開する 3D都市モデル「PLATEAU」のデータ(CityGML形式)をForma上で活用した例だ。PLATEAUは、建物の階数、用途、形状といった詳細な属性情報を持つため、風環境解析や都市評価の精度が大幅に向上する。

解析に使用した新宿駅周辺の都市モデルは、建物の外形や凹凸、屋根形状、さらにテクスチャーまで再現された「LOD2」の詳細度で作られている。JRE設計はPLATEAUモデルをFormaに統合し、駅周辺の精密な風解析を実行した。

この取り組みは、「都市データ(CityGML)×BIM(Revit)×クラウド(Forma)」 という国内でも先進的な設計プロセスであり、都市スケールの判断を初期段階で可能にする新しいワークフローと言える。

Forma上での解析は季節・時刻別の「地表温度シミュレーション」や、各風向ごとの「風環境シミュレーション」、素材や構造の違いによる「LCA比較」と、Forma搭載の機能をフル活用した。

新宿の3D都市モデルを使ったビル風解析結果の比較。Formaに搭載されたモデル(左)に比べて詳細度が高いPLATEAUのモデル(右)では、外部気流の分布も異なっている

新宿の3D都市モデルを使ったビル風解析結果の比較。Formaに搭載されたモデル(左)に比べて詳細度が高いPLATEAUのモデル(右)では、外部気流の分布も異なっている

Formaによって行った木造(左)と鉄骨造(右)のCO2排出量などのLCA検討

Formaによって行った木造(左)と鉄骨造(右)のCO2排出量などのLCA検討

建物のボリュームを修正すれば、環境シミュレーションを即時に再実行できるため、建物形状の調整と解析を繰り返す循環型プロセスが可能となった。

JRE設計 技術本部 IT推進部の広瀬菜摘氏は「従来であれば解析結果待ちだった時間を、シミュレーションと設計修正の試行錯誤による設計の最適化に充てられるようになりました」と語る。

 環境シミュレーションが前提となる都市設計

温暖化の進行に伴い、強風被害の増加、真夏の地表面温度の上昇、日射環境の悪化など、都市が抱える環境課題は複雑化している。

こうした課題を適切に評価し、建物形状に反映するためには、設計初期段階での環境シミュレーションが不可欠だ。

しかしこれまでは、環境関連のシミュレーションに高度な専門知識が必要であり、日影解析や温熱解析、風解析などにはそれぞれ別々の専門アプリが必要で、結果のデータ連携にも手間がかかった。分断されたシミュレーションを統合し、初期段階で十分な案比較を行うのは現実的ではなかった。

外部機関への委託が前提となれば、手戻りも発生しやすく、検討の頻度や密度にも限界が生じる。

この状況を変えたのがオートデスクのFormaだ。今回の検討では、Formaのクラウド解析機能がシミュレーション頻度の向上に寄与した。加えて、建ぺい率・容積率、道路斜線・隣地斜線など、日本独自のルールにも対応しつつある。

Formaで作成した検討モデルはRevitと連携し、初期ボリュームから後工程の詳細設計へとシームレスに移行できる点も強みだ。LOD200以降の図面化やBIMモデルの詳細化、意匠・設備・構造との協調設計へと発展できる。

そのデータは、設計・施工・維持管理をつなぐ CDE(Common Data Environment)とも連携し、プロジェクト全体のデータ一元管理が可能となる。

このように、オートデスクのクラウドソリューションは、単なるシミュレーションにとどまらず、BIMワークフロー全体のデータ連携をオートメーション化するプラットフォームとして機能している。

JRE設計がDynamoによって独自開発した「JDLT」のプログラム

JRE設計がDynamoによって独自開発した「JDLT」のプログラム

 脱炭素時代に求められる意匠設計者の役割

Formaによる環境解析は、これまでの常識を超える成果を生み出した。例えば、結果を得るまでのリードタイムは、わずか3分の1にまで短縮された。その結果、比較検討できる案の数は10倍に増加したほか、建物の形状改善→再解析のサイクルが当日中に完結できるようになった。

今後、建設業界ではZEB/ZEH、省エネ基準強化、LCA義務化など、環境性能に関する要請がさらに強まる。設計段階での環境評価はもちろん、施工や運用においてもBIMデータの活用が求められるようになる。

二ノ宮氏は「環境性能が建築価値の重要な指標となる時代には、初期段階から多面的なシミュレーションを行い、適切な形状へと導くことが、都市の未来を大きく変える力となります。解析の民主化は、意匠設計者の役割拡張を示しています」と締めくくった。

JRE設計では、社員一人一人のチャレンジを応援する制度を導入しており、良い研究成果は実務に活かすための大きな役割と考えている。今回の事例は、その第一歩を示す象徴的な取り組みと言えそうだ。

BIM等の設計DXに取り組む、JRE設計のメンバー。左から広瀬菜摘氏(技術本部IT推進部 兼 プロジェクトデザイン本部 デジタルソリューション部)、二ノ宮 正行 氏(技術本部 IT推進部 兼 プロジェクトデザイン本部 都市開発部門 兼 デジタルソリューション部)、水谷 慶 氏 (プロジェクトデザイン本部 デジタルソリューション部 CGデザインチーム)

BIM等の設計DXに取り組む、JRE設計のメンバー。左から広瀬菜摘氏(技術本部IT推進部 兼 プロジェクトデザイン本部 デジタルソリューション部)、二ノ宮 正行 氏(技術本部 IT推進部 兼 プロジェクトデザイン本部 都市開発部門 兼 デジタルソリューション部)、水谷 慶 氏 (プロジェクトデザイン本部 デジタルソリューション部 CGデザインチーム)

【問い合わせ】

Autodesk Revit 公式Facebook
https://www.facebook.com/RevitJapan
autodeskrevitjapan@facebook.com

JR東日本建築設計
https://www.jred.co.jp/
otoiawase@jred.co.jp

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