こんにちは。
エム・ソフトの有村です。
私たちエム・ソフトは建設、インフラ、製造業などの現場業務および管理業務を支援するアプリ・サービスの開発を行っています。
これに伴い、様々なお客様から業務内容、課題感等のヒアリングを行い、お客様の業務理解に日々努めています。
特に「自分がユーザとしてサービスを活用することで、よりお客様への理解につながる」と私たちは考えており、自社の業務でサービスを利用するため、様々な工夫をしています。
今回はその事例として最近行った「展示会備品管理でのPinspect活用」という一例をご紹介します。
Pinspectを展示会の備品管理で活用する
以前から、展示会の準備・片付けは物品の整理や持ち出し管理など大変な作業が多く、課題の多い業務だと感じていました。
備品管理の主な課題:
・備品の場所を探すのが大変
・備品の抜け漏れが起こりやすい
・業務が属人化している(できる人が限られている)
この課題解決について考えていた際、ふとPinspectの活用を思いつき、前回7月に出展した「メンテナンス・レジリエンスTOKYO2023」にて、さっそくこの試みを実施しました。
Pinspectを活用するメリット
上記課題に対して、Pinspectには大きく3つの活用メリットがあると考えました。
ARと図面機能で備品の位置が簡単にわかる
PinspectはiPhone/iPadとAR技術を用いて、空間上にデジタル付箋(ピン)を設置することができます。
この機能を使って各備品の位置にピンを設置し、それぞれの位置が管理可能となります。
備品の位置確認は同じようにAR機能を使ってピンの場所を復元して確認するか、建物の図面上から場所を確認することが可能です。
【AR機能】
【図面機能】
ピンを一覧管理でき、持ち物の抜け漏れを防止できる
Pinspectは設置したピンを一覧で表示できるので、各備品にピンを設置することで一覧管理ができるようになります。これにより、必要な備品のリストアップや種類ごとの分類が簡単になり、管理効率が上がります。
写真撮影の機能も搭載しているので、備品の状況(準備完了、片付け完了など)を写真で証跡として残すことで、ヒューマンエラーの軽減、作業の正確性向上も可能になります。
初めてのひとでも作業ができるようになる
Pinspectは各ピンごとに位置情報、写真、テキストによるメモを残すことができます。これによって、作業が初めての人でもどの備品がどこにあるのか、どのように管理すれば良いのかを理解することができます。
また、作業結果や備品の状況はクラウドで共有でき、備品管理者が作業状況をWebで参照できるので、後からチェックも可能になります。
使用方法
それでは、どのようにPinspectを使用したのかご紹介します。
まず、今回の作業にあたり携わった登場人物は2名です。
・有村(展示会主担当)
普段は展示会の準備・片付けをほぼ一人で行っていましたが、今回は備品の準備まで担当し、片付け作業は齋藤さん(今年の新人さん)に手伝ってもらいました。
・齋藤さん
7月から正式配属。展示会の出展に関わるのは初めてで、どんな備品が必要でどこに何があるのか全く知らない。
展示会準備
備品管理用のPinspect作業環境の準備(有村)
はじめに、備品管理用の作業環境の作成を行いました。
今回は上記2名のユーザ登録と、備品管理に活用できるよう、入力項目のカスタマイズを行いました。
↓環境作成後のWeb画面
各備品にピンを設置(有村)
備品管理用の環境を作成後、各備品の場所を確認しながら、iPadとPinspectアプリで備品の位置にピンを設置していきました。
各ピンには以下のように写真を撮影しました。
また、カスタマイズで設定しておいた入力項目(どこの部署の持ち物か、どうやって持ち運ぶか等)に情報を入力し、初めての人にも備品の詳細がわかるようにしました。
すべての備品にピンを設置した後、通常どおり備品の準備を行いました。
展示会終了後
ピンを確認しながら片付け(齋藤さん)
新人の齋藤さんにPinspectを使用してもらい、ピンの位置・写真・入力した補足情報を確認しながら、実際に片付け作業を実施してもらいました。
「初めての人でも正しく作業を行えるか」を検証するため、サポート無しで極力一人で対応をしてもらいました。
また、元の場所に片付けた後、証跡として片付け後の写真を撮ってもらいました。
※写真はイメージです。
片付け後の結果をWebで確認(有村)
片付け終了後、クラウドにアップロードされた片付け後の写真を私がWeb画面で確認し、正しく片付けができているかのチェックを行いました。
上記の手順がすべて終わった後、私と齋藤さんの2人で作業中に感じた気づきを互いにフィードバックしました。
以上が、今回行った手順です。
使用してみた結果
実際に使用してみた結果、以下のような効果を得ることができました。
・備品の場所をAR、図面上から把握でき、探す手間等が減った → 作業効率向上
・備品をアプリで一覧管理できるようになった → 抜け漏れ防止
・作業がはじめての人でもほぼ問題なく備品の片付けを行うことができた → 属人化解消
・Web上で片付け後の写真(証跡)を参照できるようになった → 作業記録のデータ化
その他、具体的にPinspectを使ってみて気づいたことをいくつかご紹介します。
Pinspectを使って気づいた良いところ
まずは、Pinspectを使用して良かった点や、メリットについてです。4点ピックアップしてご紹介します。
ARで簡単に・直感的に作業ができる
展示会準備の際、iPadとPinspectのAR機能を使って各備品の位置にピンを設置していきましたが、アプリの操作で直感的にピンを設置することができるので、簡単に作業ができました。
また、齋藤さんは片付けの際、AR機能を用いて備品の位置確認を行いましたが、
「配属されたばかりでオフィスの土地勘(どこに何があるのか等)が何もわからない状態だったので、ARで視覚的に備品の場所がわかって非常に助かった」とのコメントをいただきました。
図面で素早く位置を確認できる
片付けの際、「図面上から備品全体の場所を確認できるので便利だった」という意見がありました。
特定の備品の場所を知りたいとき → ARで参照
備品全体の位置を把握したいとき → 図面上から参照
といった形で機能を使い分けることで、より便利にPinspectを使えそうだという気づきを得られました。
各備品に対する指示がわかりやすい
今回、齋藤さんにとっては初めての展示会片付け作業をやってもらいましたが、ほぼ自力で、問題なく片付けを行うことができていました。
齋藤さんいわく、「備品の場所、写真、メモがセットになっていて、どのように作業すべきかわかりやすかった」とのことでした。
歩きスマホ(タブレット)をアプリの警告メッセージで回避できる
片付けの作業中、移動時に端末の画面をつい見てしまいそうになる場面があったようです。
当然のことながら歩きスマホ(端末)は危険なため、アプリ側にはこれを防止できるよう、アプリ使用中に移動を感知すると警告メッセージが表示されるようになっています。
この機能のおかげで、歩きながらの端末操作を抑止することができ、安全に作業を行うことができたようです。
作業中の事故は大きな危険を伴うため、警告機能の重要性に改めて気づく良いきっかけとなりました。
気になったところ、改善点
それでは逆に、使ってみて気になったところや改善の余地がある点についてもご紹介します。
一部の機能(ボタン)を使いこなすのに慣れが必要
PinspectはAR中にピンの位置や入力項目、電子黒板など様々な情報を表示しますが、各情報の表示・非表示は専用のボタンをタップすることで切替えることができます。
これによって、ユーザがそれぞれ見たい情報だけ表示できるようになるのですが、斎藤さんは「何の情報を表示(非表示)にするか」を考えたり「切替ボタンはどこか?」と探したりするのに少々手間取ってしまうことがあったようです。
アプリに慣れていれば迷うことなく操作できるようになるのですが、初めてアプリを操作するような方にとって、もう少しわかりやすい工夫をする余地があるかもしれません。
これについては、アプリのUIを検討してみようと思います。
↓左の入力エリアや右下の電子黒板など、表示・非表示を切り替え可能
ピンの運用方法は事前に検討が必要
事前に入力項目やピンの色分けなどをカスタマイズしていましたが、やはり実際に使ってみると「この入力項目も必要だったな」とか、「項目はこの順番の方が良かったのではないか」といった改善点が色々見つかりました。
カスマイズは後からでも可能ですが、やはり運用を始める前の段階でここの要件定義はしっかり行った方が良いな、ということを痛感しました。
まとめ:備品管理にPinspectは活用できる
以上、Pinspectを展示会の備品管理で使ってみた実施レポートでした。
今後の課題もあったものの、作業効率化や抜け漏れ防止など以前の作業よりも改善した点が多く、今後もPinspectを備品管理で使うべき、というのが個人的な感想です。
今回の試みで得た気づきについては、今後アプリの改善に役立てていこうと思いますので、ぜひご期待いただけると嬉しいです。
また、今回はPinspectを使用しましたが、「作業をチェックリスト化して管理・運用する」というやり方であれば、最近新たに提供開始したPinspectの派生製品「Pinspect Check+」を使っても良かったのかな、と感じました。
これについては、業務の内容や特徴等に合わせて今後は上手く使い分けていこうと思います。
今後もこのような実施レポートを含め、皆さんの役に立つような情報を発信していきますので、楽しみにしてください。
エム・ソフトでは、iOSのVR、ARアプリ製品の開発、また点群を使ったアプリ等の開発を行って
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