2024年4月になり、製造業、特にプラントメンテナンス業務においてはいわゆる「2024年問題」に直面しています。
時間外労働の規制による労働力不足という問題が顕在化し、生産
このような問題・課題に対し、現場作業・管理業務の効率化や作業者を支援するための手段として注目されているのが、XR技術の活用です。
そこで本記事では、2024年問題の課題解決手段という観点で、XR技術の活用シーンをご紹介したいと思います。
目次
プラントメンテナンス業務における「2024年問題」?
製造業、プラントメンテナンス業務における2024年問題とは、時間外労働の上限規制などを含めた働き方改革関連法が、2024年4月から建設業にも適用されることで生じる諸問題のことです。
その中でも喫緊で解決が必要なのは、「作業の生産性向上」「作業者の技能承継」です。
プラント・工場等の設備では、安定して運転を行うため、日々の点検や更新工事に加えて、定期的に運転を停止し、メンテナンスを行う「定修(定期修理)」が法律で義務付けられています。
この作業は設備の規模によっては数か月間、膨大な人員を投入して設備の点検~修繕~更新を行います。
が、従来の定修の作業は残業時間を月平均で80時間を超えてしまうことが多く、現状のままでは法律の順守が難しいといった問題があります。
また、定修はできる限り短い時間で終えなければならないため、こういった事情からも各種メンテナンス作業の生産性向上が求められています。
さらに、これら生産性能向上を妨げている背景として、人手不足、特に「即戦力人材の不足」といった問題もあります。
他の業界でもいえることですが、製造業では従業員の人手不足が慢性化しています。
特に、製造業の設備保全・メンテナンス業務においては、専門的な知識・技術が必要とされる作業が多く、「作業の属人化」といった問題も起こりがちです。
このため、製造業では「熟練作業者の技能継承」という課題も無
XR技術がプラントメンテナンス業にもたらすDX
では、この2024年問題に対してXR技術はどのような活用(DX)ができるのでしょうか?
そもそもXR技術とは、現実世界とデジタルな仮想空間をつなぐ特徴を持つ技術のことで、AR/VR/MRの総称です。
アイディア次第で様々な活用方法が考えられますが、今回は以下の2点についてご紹介したいと思います。
1.設備のデジタルツイン化:
プラント、工場などの設備や生産ラインをデジタルツインとして再現することで、設備の状態や管理を効率化する
2.AR技術による作業者の支援:
現場担当者の作業をAR(拡張現実)でサポートすることで、現場業務の生産性向上、および熟練技術者の技能承継をサポートする
活用例1:設備のデジタルツイン化
一つ目は、プラント・工場などの現場の3次元情報を「デジタルツイン」として再現する、という活用例です。
デジタルツインとは?
デジタルツインとは、現実空間のあらゆる情報をデジタル化し
仮想空間であらゆるものを再現するため、将来的には建物や施設などの施工前シミュレーションや施工後の分析など、多くの作業をバーチャルで行うことを目指し、世界中で注目されている技術です。
デジタルツインのイメージ(右は3次元点群データによって空間情報を再現しています。)
ちなみに、国土交通省は日本全国の都市デジタルツイン(3D都市モデルの設備・オープンデータ化する)プロジェクト「PLATEAU」を主導しています。
このことからも、政府がデジタルツインによって、業界のDXを推進しようと動いていることがわかります。
「PLATEAU」についてはこちら
日本全国の都市デジタルツイン実現プロジェクト PLATEAU
デジタルツインの活用シーン
デジタルツインの可能性は幅広く、様々な活用方法が考えられます。
・プラントの状態把握
プラント内部をデジタルツインとして再現することで、内部のあらゆる状態を可視化することができます。たとえば、設備の運転状況や状態をリアルタイムに把握することで、問題が起こった時に素早く対処できるようになります。
これによりプラントの事後保全を円滑に進めることが可能です。
・プラントの異常を予測する
また、デジタルツインを応用すると、今後起こりうるトラブルや異常、問題が発生する前に、予知することもできます。
デジタルツイン上で将来の動きをシミュレーションすることで、いつ、どこで、どんな異常が起こるかを予測し、品質トラブルを未然に防止する、ということも可能です。
これにより、プラントの予兆保全を実現することができます。
ちなみに、私たちエム・ソフトは点群を活用して設備の位置情報を管理できるデジタルツインプラットフォーム『MONOLIST(モノリス)』を提供しています。
MONOLISTを活用することで、
・機器、設備の位置情報を管理
・現場の確認、把握を遠隔地から実施
といった活用ができますので、ご興味があればMONOLISTのサービスサイトをご覧ください。
活用例2:AR技術による作業者の支援
二つ目は、担当者の業務にAR技術を導入し、作業をサポートするという活用例です。
ARとは?
ARという言葉を聞くようになって久しいですが、Augmented Reality(拡張現実)の略で、現実空間の情報にデジタル情報を重ね合わせ、視覚的に現実を拡張した表現ができる技術です。周辺の空間を認識することで、現実の映像にデジタル情報を合成した映像を表示することができます。
ゲームやプロモーションでの利用が有名ですが、近年では産業分野での利用も拡大しています。
たとえば以下動画のように、建築物を仮想的に設置シミュレーションなどを行うことができます。これもAR技術の応用です。
AR技術の活用シーン
それでは、製造業における、これらの技術の活用例についてご紹介します。
・作業箇所、手順のガイド
現場の作業者がスマートフォン、タブレット等のモバイル端末とAR技術を使用して、作業場所の位置や、作業手順などの情報をガイドすることができます。
あらかじめ、作業内容とその作業箇所を設定しておけば、だれでも簡単に作業内容を理解することができます。
これにより、作業者の負担軽減 = 生産性向上が期待できます。
以下動画の(2分13秒~)のようなイメージです。
・作業者のトレーニングをサポート
作業箇所・手順をARで簡単に参照できるようになれば、たとえば若手社員など経験が不足している作業者に対して、作業内容のレクチャーやトレーニングを行うことができます。
これにより、作業者への教育コストを削減できることもでき、属人化していた熟練者の業務を円滑に教育することもできるようになります。結果、作業者への技能承継という課題解決にもつながります。
ちなみに私たちエム・ソフトは、AR技術を用いて現場の保全・メンテナンス業務をサポートするサービス『Check+』を提供しています。
このCheck+を用いることで、上記のような作業箇所の表示や手順の確認などを効率化することが可能です。
※上記で紹介した『MONOLIST』との連携が必須となります。
ご興味がありましたらCheck+のサービスサイトをご覧ください。
まとめ
今回は製造業、プラントメンテナンス業務における2024年問題と、それを解決するためのXR技術の活用例をご紹介しました。
製造業は日本社会に非常に大きな影響力を持っているため、製造業のDXは日本全体の社会課題であると考えています。
政府の後押しもあり、あらゆる産業においてDXの推進が叫ばれていますが、製造業、プラントメンテナンス業のDXはまだ始まったばかりであり、私たちエム・ソフトもそのDXの支援ができるよう、努めていきます。
今後も様々な業界のDXについて、XR技術の観点から情報発信を行いますので、宜しければ引き続きブログをチェックしていただけますと幸いです。
DXや、XR技術の活用方法のご相談など、お気軽にご相談下さい。