管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)界では最近、現実の風景の中にBIMモデルを合体して表示させるAR(拡張現実感)という技術の活用が始まっています。いわば、バーチャルなBIMモデルをリアルな世界に展開するようなものです。
今年はその逆に、現実の構造物を計測した測量データからBIMモデルを作る、リアルからバーチャルへの展開が加速するかもしれません。
米国トリンブル社(Trimble)は、2011年12月22日に、BIMソフトベンダーのエースキャド・ソフトウェア社(AceCad Software)から
ナ、ナ、ナ、ナント、
3次元鋼構造設計ソフト
である「StruCad」と「StruEngineer」の事業を買収することを発表したのです。
StruCadの画面(image: Courtesy of AceCad Software) |
エースキャド・ソリューション社のウェブサイト(image: Courtesy of AceCad) |
トリンブル社のウェブサイト(image: Courtesy of Trimble) |
トリンブル社は昨年、詳細構造設計用BIMソフト「Tekla Structures」の発売元であるテクラ社(Tekla)も傘下に収めており、今回の買収はトリンブルのBIM事業をさらに強化する狙いがあります。
StruCadは鋼構造メーカー向けの3次元詳細構造設計ソフトで、短時間で自動的に詳細設計ができるほか、製作図の自動作成やコンピューター数値制御(CNC)の工作機械による製作と連動します。
このソフトによって、設計技術者や詳細設計者、製作技術者間の効率的な連携が行え、鋼構造物の製作における設計や製作、建設の時間とコストが削減できます。
また、StruEngineerは、施工会社向けで3次元の鉄骨構造モデル作成や施工管理を行うソフトです。StruCadと完全互換性があり、設計時間を短縮するほか概念設計段階から素早く、正確な見積もりができるとのことです。
テクラ社の副社長であるリスト・ラティ氏(Risto Räty)氏は、トリンブル社が発表したニュースリリースの中で「テクラとトリンブルは、建設業界のユーザーが工期短縮を図れるようにするための製品提供に注力していく。StruCadとStruEngineerのチームとも連携して、鋼構造業界のユーザーのために、より充実した製品ラインアップを提供していく」と語っています。
一方、テクラ社はエースキャド・ソフトウェア社の鉄骨製作情報管理システムを
テクラのBIMソフトと統合
するために連携するとのことです。
テクラ日本法人のウェブサイト(画像:テクラ) |
測量データは建設業界のユーザーにとっては「中間製品」にすぎず、BIMモデルや鋼構造物の製作こそ成果物と言えます。
今回のトリンブル社の買収は、測量機器メーカーが下流分野をカバーするソフト製品を傘下に入れる垂直統合の経営戦略です。それだけ、BIMを重視している証拠と言えるでしょう。
このほか、オートデスクやベントレー・システムズは、昨年、それぞれ点群データと3次元CADソフトやBIMソフトを連携させるシステムを開発している企業を買収しています。点群データとBIMは、企業統合を通じて急速に連携が進んでいきそうですね。
日本の測量機器メーカーはBIMに対してどれくらいの重要性を持っているのでしょうか。ぜひ、国産の測量機器メーカーも垂直統合戦略により、日本の建設業界のワークフローに合った製品を充実させ、海外のメーカーに対抗してもらいたいですね。