CIMは成功する!JACICのCIM技術検討会が報告書を公表
2013年5月9日

管理人のイエイリです。

昨年度から国土交通省が始めたCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の試行では、国交省主体の「CIM制度検討会」と日本建設情報総合センター(JACIC)がとりまとめ役を務める民間団体主体の「CIM技術検討会」が両輪となって、CIMを効果的に活用するための制度面と技術面の検討を行っています。

このうち、CIM技術検討会が昨年度の活動をまとめた報告書「CIM技術検討会 平成24年度報告」が、JACICのウェブサイトで公開されました。

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

100ページ以上の大作

 

なのです。

その内容は、CIMの理念やCIMを先取りしたプロジェクトの事例、3Dレーザースキャナーなど様々な関連技術、土木工事で3次元設計を活用したフロントローディングの例など、CIMのハード・ソフトから技術、事例までを網羅でしています。

一貫しているのは、CIMで設計業務や工事の生産性をいかに高められるかという受注者側の視点で構成されていることです。昨年度、国交省が設計業務を対象に実施した11件の試行プロジェクトで「効果が認められた事項」と「効果が認められなかった事項」の分析もまとめられています。

以前、国交省が推進したCALS/ECは、情報を電子化することに主眼が置かれ、電子データの有効活用や共有によって業務を効率化するまでには至らなかったという課題が残りました。今回の報告書はその反省を踏まえて、CIMを効果あるものにしていこうという意思を感じさせます。

また、建築分野でのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)活用からヒントを得たと思われるものとしては、プロジェクト関係者が1つのモデルを見ながら意見交換を行い、それをまとめていく「CIMマネージャー」の役割と重要性を指摘した部分もありました。

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CIM技術検討会の報告書の表紙(左)と豊富なイラストや写真が使われている内容の例(右)(資料:JACIC。以下同じ)

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CIMマネージャーの役割

CIMを単なる理屈でなく、生産性向上に役立つツールとして生かそうという思想は、2つの付録からも感じさせられます。1つは「CIM用語集」で、イラスト付きでCIMに関する主な用語が解説されています。もう1つは「3次元CAD、解析ソフト一覧」で、CIMに関する様々なソフトの製品名や機能、他ソフトとの連携、価格などが詳しく紹介されています。

CIM関連のソフトというと、外資系のCADベンダーの製品を思い浮かべ勝ちですが、このソフト一覧には国産ベンダーのソフトもたくさん含まれています。日本の建設業界にスタイルに合わせて開発された既存のソフトやリソースを生かしてCIMを進めていくことも、重要ですね。

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CIM用語集

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3次元CAD、解析ソフト一覧

そして、この報告書の特筆すべき点として、

 

「CIMは成功するか」

 

という、大阪大学大学院の矢吹信喜教授によるコラムが掲載されていることです。

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大阪大学大学院の矢吹信喜教授(左。写真:家入龍太)とコラム「CIMは成功するか」のページ(右。資料:JACIC)

このコラムで矢吹先生は「CIMは大局的に見て失敗せず、長い目で見れば将来、成功であったと評価されるだろう」と述べています。

その理由として、(1)機械分野が3次元CADによる設計、解析、製造などで成功し、建築分野もBIMで成功しつつあること。(2)設計の方法として第三角法の図面が標準的になったのはここ数十年で、今度は3次元CADに変わろうとしている。CIMもこの歴史的な流れに沿っていること。(3)国際的にも橋梁や道路等の土木分野で3次元CADが使われるようになっており、CIMも日本独自の動きではなく各国の動向に近いこと。を挙げています。

報告書の中には理屈やデータだけで構成されたものもありますが、このようにCIMを成功させたいという熱意を感じる一文があると、初めは苦労しても関係者が協力しながらCIMで生産性向上を実現させようという気になりそうですね。

CIMに興味のある方は、ぜひ、JACICのウェブサイトから報告書をダウンロードしてみてください。

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