管理人のイエイリです。
先週、AIA(アメリカ建築家協会)やASCE(米国土木学会)などの米国取材から帰ってきました。しばらくごぶさたしていました国内の情報を再び発信していきたいと思います。
この間、見逃せない出来事として、鹿島が「Global BIM」というBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による設計の協業システムを構築したことが挙げられます。
クラウドサービス上にBIMデータを保管し、社内外のプロジェクト関係者がアクセスすることにより協業を可能にするものです。クラウドサービスを利用したBIMプラットフォームとしては、
ナ、ナ、ナ、ナント、
世界初のシステム
とのこと。BIM界の偉業を日本の鹿島が実現したことになりますね。
「Global BIM」を中心とした協調作業のイメージ(資料:鹿島。以下同じ) |
同社はBIMソフトとしてグラフィソフトジャパンの「ArchiCAD」と、同ソフトに搭載されている「TEAMWORK」という機能を使って、1つのBIMモデルを複数の設計者で共有しながら同時並行で設計を進めています。
BIMデータは容量が大きく、機密性が高いため、社内のネットワークに設置したBIMサーバーで情報共有を行ってきました。しかし、BIMサーバーはファイヤーウオールの内側にあるため、社外の顧客や協力会社などとの協業が難しいという課題もありました。
そこで、同社はNTTコミュニケーションズの企業向けクラウドサービス「Biz ホスティングEnterprise Cloud」を採用し、高いセキュリティーが確保された場所にBIMデータを保管し、社内外で利用できるようにしたものです。
従来のBIMサーバーの課題 |
セキュリティー対策としては、(1)ワンタイム・パスワードによる認証、(2)SSL-VPNによる通信経路の暗号化、(3)アクセスログによる不正利用の監視を行っています。
鹿島は今年度からすべてのBIMプロジェクトを「Global BIM」上手に運用します。また、海外プロジェクトでの活用も予定しています。
「Global BIM」のメリットとしては、プロジェクト関係者間でBIMデータの共有がスムーズに行えること、お互いの進ちょく状況を確認しタイムリーに対応できること、場所や時間に制限されずに海外のモデリング会社を活用できること、などがあります。
さらに、BIMデータを一元管理することで、竣工後の維持管理やリニューアルなどの
ファシリティーマネジメント
にも活用が可能という点も見逃せません。
「Global BIM」は、設計・施工段階の生産性向上だけでなく、ファシリティーマネジメントへの進出というBIMによる成長戦略を実現するプラットフォームにもなりそうです。
これまで鹿島は、あまり「BIM」という言葉を使っていませんでしたが、「Global BIM」は商標登録も申請中とのことです。これからいよいよ、BIMでも同社の本領が発揮されそうで、目が離せません。