管理人のイエイリです。
工事現場の出入り口などは、一般の歩行者と工事用車両の動線が交差するので、安全管理上最も気を付けなければならない部分です。
通常は工事看板を設置して歩行者の注意を促していますが、看板類は時間がたつと慣れてしまい、徐々に効果が薄れてしまいます。
そこで清水建設は近畿自動車道紀勢線十九渕第一トンネルの現場に、設置後も歩行者がずっと認識してくれる特別な工事看板を設置しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
しゃべる看板
のです。
清水建設が設置したしゃべる工事看板(写真:清水建設。以下同じ) |
同社がヤマハと共同開発した「指向性音声案内看板」というもので、ポスターの中にはヤマハ製のB1サイズの巨大平面スピーカーが内蔵されています。
このスピーカーは「TLFスピーカー」というもので、厚さ1.5mmで重さはわずか370gしかありません。丸めることもできるようになっています。
これにアンプをつなぐと、スピーカー面に垂直な方向にだけ音声が伝わり、約30m先からでもはっきりと音が聞こえます。しかし、それ以外の方向には音が伝わらないので沿道の民家などには迷惑がかからないというわけです。
B1サイズのTLFスピーカー |
TLFスピーカーの指向性イメージ(資料:ヤマハ) |
そのため、現場に近づいてくる歩行者の方向に看板を向けて「ダンプカーにご注意ください」などの音声を流しておくと、歩行者は
どこから聞こえてくるの?
と不思議な気持ちになり、看板の効果とともに注意喚起が図られるというわけです。
まさか、ここから音が出ているとは。歩行者は、毎回ここを通るたびに不思議に思うことでしょう |
清水建設の実験では、従来の工事看板は設置した日に気づいてくれる歩行者の割合(視認率)は50%だけでしたが、しゃべる看板の場合は設置当日は91%、1カ月後でも67%に達したそうです。
音声の内容も、現場のスタッフが日替わりで今日の作業内容や歩行者に安全を呼びかけるメッセージなどを吹き込んでおくと、工事現場のPRとしても役立ちそうですね。
TLFスピーカーは人の視覚と聴覚に同時に訴える「サウンドサイネージ」という手法に使われているものですが、これを工事現場の安全管理に活用したのは素晴らしいアイデアですね。
今年の記事は今回が最後です。新年は1月7日から再開の予定です。皆様、今年もご愛読、ありがとうございました。よいお年をお迎えください。