管理人のイエイリです。
住宅やビルなどの自然通風性能を確認したいとき、建物のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を作り、そのデータをCFD(数値流体解析)ソフトに読み込んで解析する、という方法がとられます。
このとき入力データとして、年間を通じた風向や風速の観測記録から、「卓越風」というよく吹く風向や風速を使いますが、地形の影響まではあまり考えられていません。
そこで、リビングCGとアドバンスドナレッジ研究所は今年2月から、神奈川県の江ノ島に「風通しのよい別荘を建てる」という架空のプロジェクトを立ち上げ、別荘の建物の形や江ノ島の地形を3Dモデル化し、これに卓越風のデータを加えて流体解析を行いました。
江ノ島の3Dモデル作成に使ったのは、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)用のソフトかと思いきや、
ナ、ナ、ナ、ナント、
BIMソフト「ArchiCAD」
だったのです。
「えー、ArchiCADでCIMみたいな3Dの地形モデルが作れるの?」と思ってしまいますが、もとデータは国土地理院のウェブサイトで公開されている「基盤地図情報」です。
このデータをビューワーで「SHP形式」に変換し、リビングCGが販売している「ArchiSuite」というツールに含まれる「ArchiTerra」というArchiCAD用のアドオンソフトを使ってArchiCADに取り込むと、江ノ島の地形がArchiCAD上にできます。
ArchiCAD上で建物などを配置した後、今度は「IFC形式」で書き出し、アドバンスドナレッジ研究所のCFDソフト「FlowDesigner」で解析する、というわけです。
卓越風の向きや風速を、NEDOが提供している「局所風況マップ」で調べたところ、北北東と南西の風が多く吹くことが分かりました。
そこで、この2つの風向をFlowDesignerの入力データとして使い、定常状態になるまで計算しました。
解析の結果、大発見がありました。別荘の建設予定地周辺の地形の影響を考慮すると、南西の風が吹くとき、
ナ、ナ、ナ、ナント、
別荘には逆向きの風
が吹くことがわかったのです。
ちなみに、CFD解析したのは1500m×800mの範囲で、使ったパソコンはOSがWindows(64ビット版)、CPUがインテルCore i5、メモリーが8GBのノートパソコンでした。
島や山がある場所に建てる建物は、地形の影響をよく考えなければいけませんね。また、ArchiCADでCIMみたいなことができるのにも驚きました。