意外な事実も判明!江ノ島の風をArchiCADとFlowDesignerで流体解析
2014年7月29日

管理人のイエイリです。

住宅やビルなどの自然通風性能を確認したいとき、建物のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を作り、そのデータをCFD(数値流体解析)ソフトに読み込んで解析する、という方法がとられます。

このとき入力データとして、年間を通じた風向や風速の観測記録から、「卓越風」というよく吹く風向や風速を使いますが、地形の影響まではあまり考えられていません。

そこで、リビングCGアドバンスドナレッジ研究所は今年2月から、神奈川県の江ノ島に「風通しのよい別荘を建てる」という架空のプロジェクトを立ち上げ、別荘の建物の形や江ノ島の地形を3Dモデル化し、これに卓越風のデータを加えて流体解析を行いました。

江ノ島に架空の別荘を建設するプロジェクト(資料・写真:特記以外はアドバンスドナレッジ研究所)

江ノ島に架空の別荘を建設するプロジェクト(資料・写真:特記以外はアドバンスドナレッジ研究所)

プロジェクトに挑戦したリビングCGの関良平代表取締役(左)とアドバンスドナレッジ研究所の黒岩真也氏(写真:家入龍太)

プロジェクトに挑戦したリビングCGの関良平代表取締役(左)とアドバンスドナレッジ研究所の黒岩真也氏(写真:家入龍太)

江ノ島の3Dモデル作成に使ったのは、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)用のソフトかと思いきや、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

BIMソフト「ArchiCAD」

 

だったのです。

「えー、ArchiCADでCIMみたいな3Dの地形モデルが作れるの?」と思ってしまいますが、もとデータは国土地理院のウェブサイトで公開されている「基盤地図情報」です。

このデータをビューワーで「SHP形式」に変換し、リビングCGが販売している「ArchiSuite」というツールに含まれる「ArchiTerra」というArchiCAD用のアドオンソフトを使ってArchiCADに取り込むと、江ノ島の地形がArchiCAD上にできます。

国土地理院の「基盤地図情報」をArchiCADに読み込んで作った江ノ島のBIMモデル

国土地理院の「基盤地図情報」をArchiCADに読み込んで作った江ノ島のBIMモデル

ArchiCAD上で建物などを配置した後、今度は「IFC形式」で書き出し、アドバンスドナレッジ研究所のCFDソフト「FlowDesigner」で解析する、というわけです。

IFC形式によって「FlowDesigner」に読み込んだ江ノ島の3Dモデル

IFC形式によって「FlowDesigner」に読み込んだ江ノ島の3Dモデル

卓越風の向きや風速を、NEDOが提供している「局所風況マップ」で調べたところ、北北東と南西の風が多く吹くことが分かりました。

そこで、この2つの風向をFlowDesignerの入力データとして使い、定常状態になるまで計算しました。

「局所風況マップ」で調べた卓越風(資料:NEDO)

「局所風況マップ」で調べた卓越風(資料:NEDO)

北北東の風が吹くときの風向や風速の分布。赤丸印が別荘の位置

北北東の風が吹くときのCFD解析結果。風向や風速の分布が矢印で示されている。赤丸印が別荘の位置

解析の結果、大発見がありました。別荘の建設予定地周辺の地形の影響を考慮すると、南西の風が吹くとき、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

別荘には逆向きの風

 

が吹くことがわかったのです。

南西の風が吹くとき、別荘周辺は逆向きの北北東の風が吹くことが判明

南西の風が吹くとき、別荘周辺は逆向きの北北東の風が吹くことが判明

別荘内外の風のミクロな流れ

別荘内外の風のミクロな流れ

別荘内部の3D的な風の流れ

別荘内部の3D的な風の流れ

ちなみに、CFD解析したのは1500m×800mの範囲で、使ったパソコンはOSがWindows(64ビット版)、CPUがインテルCore i5、メモリーが8GBのノートパソコンでした。

島や山がある場所に建てる建物は、地形の影響をよく考えなければいけませんね。また、ArchiCADでCIMみたいなことができるのにも驚きました。

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