管理人のイエイリです。
昨日(7月28日)、砂子組(本社:北海道奈井江町)が施工する、ある道路工事現場で、ドローン(無人機)を使った空撮現場に立ち会いました。
ドローンは建設分野で情報化施工やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)などのITシステムやサービスを展開する岩崎(札幌市中央区)の所有機です。
この日、ドローンのパイロットを務めたのは、岩崎 企画調査部精密農業チームの河手健一さんです。
現場に取り出されたドローンを前に、シャッターチャンスを逃すまいとカメラを構えますが、肝心のドローンは小1時間たっても
なかなか離陸しない
のです。
「カメラを付けてスイッチを入れたら、すぐに飛べるんじゃないの」と思いきや、それは素人の発想でした。プロのドローンパイロットは、離陸前に入念なチェック作業を行っていたのです。
まずは風のチェックです。風の強さは現場事務所前の吹き流しや木々の揺れで分かりそうなものですが、プロのパイロットは携帯式の風速計で、「今の風速は毎秒最大4m。平均で2m」と定量的に計測します。
続いて、飛行ルートの確認です。この日は道路工事現場の上空を200mほど往復して撮影する予定でした。
ラジコンの飛行機を飛ばす感覚だと、現場の向こう側にあるくい打ち機を目印にして適当なところまで行ったら引き返してきたらいい、というように安易に考えがちです。
しかし、人が作業している場所の上空は絶対に飛ばさないのがプロのパイロット。ワゴン車に搭載したノートパソコンで、GPS(全地球測位システム)対応の地図を開き、飛行ルートを入力します。
そして飛行中はドローンの位置を目分量に頼ることなく、常にドローンから送られてくるGPS信号をノートパソコン上で確認ながら、飛行ルートをきっちりと守るようにします。
ドローンや実物の飛行機の大きな墜落原因の1つに「燃料切れ」があります。プロのドローンパイロットも、燃料となるバッテリーの管理には最大限の注意を払っています。
今回、使用したドローンは、99WHのバッテリーを2個搭載していますが、充電済みのバッテリーを7組、計14本用意していました。
ドローンに装着する前には、1本ずつ充電量を「こちらは99%、こちらは100%」というようにバッテリーチェッカーで計測します。充電量が95%未満のバッテリーは使用しないという徹底ぶりです。
そしてドローンが1回の飛行を終えて帰ってくると、飛行時間にかかわらずバッテリーを満充電のものに交換します。
このほか、プロペラを手回ししてベアリングに異物が詰まっていないかや、操縦に使うプロボのスロットルやスイッチの位置、ケーブルの接続状態などを細かく確認します。
これらの手順は「飛行前安全確認書」に従って1つ1つ丁寧に行っていきます。実物の飛行機でも「プレフライトチェック」、「ビフォー・エンジンスタート」、「ビフォー・テークオフ」などのチェックリストに従って、パイロットが機体の各部を点検しますが、これと全く同じ手順なのでビックリしました。
こうして入念な準備やチェックを行った後、パイロットはプロポを持ってようやくドローンのそばに寄りました。そして4つのローターを回転させて異常音などがないかをチェックします。
こうした準備の後、
ドローンはついに離陸
したのです。
ドローンはゆっくり上昇し、道路工事の現場上空に沿って飛んでいきました。ここからは自動制御モードで、入力した飛行ルートから逸脱しないように飛んでいきます。
そして杭打ち機の手前で引き返し、戻ってきました。最後の着陸は手動モードに切り替えて、パイロットが慎重に行います。
ドローンの飛行時間はわずか2分弱でしたが、離陸前の準備には様々な測定機器や制御システムを使って約1時間の作業を行っていました。
ドローンを現場に持って行くと、すぐに飛ばしたくなるのが人情です。しかし離陸をあせらず、一見、まどろっこしい離陸前の準備ができるのが「プロの証」なんですね。