管理人のイエイリです。
インクジェットプリンターの大手メーカーとして知られる米国のHP社が、3Dプリンターを開発中であることを以前、当ブログでもお伝えしました。(2014年11月5日の記事参照)
そして同社はこのプロジェクトについて2016年5月17日、新たな記者発表をしました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
世界初の量産型3Dプリンター
を開発したというのです。
今回、発表されたのは「HP Jet Fusion 3D 4200 Printer」、「HP Jet Fusion 3D 3200 Printer」の2機種です。どちらも3Dプリンター本体と、造形後のパーツを取り出す後処理ユニットからなっています。(カタログPDFはこちら)
造形する方式には「HP Jet Fusion 3D Printing Solution」というものを使っています。これは石こうなどの粉末を使って造形する方法に似ていますが、造形の精度やスピードが格段に進化しています。
まず造形用の材料をX方向に動くアームが厚さ0.07~0.12mmに敷きならし、今度はY方向に動くアームが造形する物体の断面に従って固化剤を噴射します。それとほぼ同時に造形面に熱を加えて焼き固めます。
この作業を繰り返して、造形していくわけです。従来の溶けた樹脂を積み重ねる方法に比べて造形スピードは約27倍も速くなっています。両機種とも造形できる大きさは406
x 305x 406 mmとなっています。
こうして造形された物体は、その後、固まっていない粉末を除去して取り出す必要があります。この作業を受け持つのが後処理ユニットです。
造形後の物体は3Dプリンター本体から台車で丸ごと取り出し、後処理ユニットに移動します。するとユニット内で急速に冷却され、掃除機のような機械が固まっていない造形用の材料を吸い取り、造形された物体だけを取り出してくれます。回収された材料は再利用することができます。
造形方法を解説したビデオ(YouTubeより)
この造形作業では、HP社がプリンターの開発、製造でこれまで何十年も培ってきた精密なインクジェット技術が生かされています。
造形物の中心部分はしっかりと固める「溶融材(Fusion Agent)」、表面部分は滑らかに仕上げる「仕上げ材(Detailing Agent)」をそれぞれ使用して、強固で滑らかな仕上がりの物体を作ります。
さらに驚くべきことは、色や材質などを
1ピクセルごとに変えられる
ことです。
正確にはピクセルに厚みを持たせた「ボクセル(Voxel)」と言いますが、最小単位ごとに色や固さ、電気伝導率、透明度、弾力性などを変えた製品を作れるのです。
材料をボクセルごとに変えて造形する方法を解説したビデオ(YouTubeより)
気になるお値段ですが、「HP Jet Fusion 3D 3200 Printer」の場合、単体で13万ドル(約1430万円)から、後処理ユニット月で15万5000ドル(約1700万円)からとなっています。
発売は「HP Jet Fusion 3D 4200 Printer」が2016年後半、「HP Jet Fusion 3D 3200 Printer」が2017年の予定です。