管理人のイエイリです。
現場の空間に図面や3Dモデルを原寸大で重ねて見られるAR(拡張現実感)用ツールとして、「Microsoft HoloLens」が国内外で注目を集めています。
国内の建設関連ベンダーとしては、インフォマティクスが2017年夏の発売を目指して「GyroEye Holo(ジャイロアイホロ)」(仮称)というAR/VRシステムの開発を進めています。(当ブログ2017年3月30日の記事を参照)
昨日(2017年6月7日)、開発中のシステムの実証実験が、東京大学本郷キャンパスで行われました。場所は、鴻池組が施工する理1号館の建設現場です。
私も体験させてもらいましたが、HoloLensを着けて現場に立ったところ
ナ、ナ、ナ、ナント、
床に実寸図面を広げた
ように見えたではありませんか。
床上に実寸図面が表示されるなら、建設関係者がまず思いつくのは、床に仕切り壁や配管などの位置を書き込む「墨出し作業」がいらなくなるのではということです。
そこで、いったい、精度はどのくらいなのかを見てみました。
まず、現場の床とCAD図面の位置を合わせます。今回の実験では、パンフレットの紙を目印として使いました。
そして、現場にある軽量鉄骨の角をHoloLensで見ると、CAD図面の角とピッタリ合っていることがわかりました。
HoloLens上に表示されるCAD図面の「線幅」は、1cmくらいに見えるように設定されていたので、現場の細部を見るときにはちょっと太すぎる感もありました。
これは、CAD図面の印刷設定と同じように、細い表示にすればよりシャープな図面が見られそうです。
基準点から離れると、HoloLensに搭載された「デプスセンサー」という3Dスキャナーのようなもので、周囲の風景を追跡することで、X、Y、Zの離隔距離を測っていく仕組みです。
当然、原点から離れるほど、現場とCAD図面との誤差は大きくなります。しかし、意外にもその誤差は小さく、スリーブの位置や鉄筋の本数確認などには十分、使えそうな感じでした。
そして、今回、体験したCAD図面には
設備の3Dモデル
も入力されていました。
天井を見上げると、これから設置される空調機の吹き出し口ユニットや配管などが空中に漂っているように見えました。
これは、異なる専門工事会社の間で、施工手順を間違えないためのツールとして使えそうです。天井工事を行う内装屋さんがHoloLensを見て、まだ付いていない機器があれば天井板の取り付けを待つようにすれば、無駄な手戻り工事を未然に防ぐことができますね。
そして、維持管理段階では、吹き出し口の増設が必要になったようなときに、HoloLensで天井板の裏を“透視”しながら、工事の計画を進められそうです。
インフォマティクスには、「GyroEye Holo」に搭載してほしい機能の要望が、建設会社などから多数、寄せられています。そのため、開発に時間がかかっていますが、近く、発売時期や価格について発表があるそうです、楽しみですね。