鉄骨組み立て作業をIoT化!熊谷組グループが「建方キング」を開発
2018年3月2日

管理人のイエイリです。

ビルの鉄骨を組み立てる「建方(たてかた)作業」に特に重要なのは、柱を溶接でつないでいく際に、傾いたりねじれたりしないようにすることです。

溶接前、計測者は柱の位置や姿勢を見ながら、建方作業者に「少し北」「もうちょい西」などと、トランシーバーで指示を出し、建方作業者は柱に取り付けたワイヤで傾きなどを調整するのが一般的でした。しかし、ワイヤが梁の取り付け作業などにじゃまになることも多々ありました。

そこで熊谷組グループのテクノス(本社:愛知県豊川市)は、「建方エース」という特殊な治具を開発し、ワイヤを使わず鉄骨の溶接部だけで調整が行えるようにしました。

鉄骨の傾きなどを調整する「建方エース」の外観(以下の写真、資料:テクノス)

鉄骨の傾きなどを調整する「建方エース」の外観(以下の写真、資料:テクノス)

各部のねじによって傾きやねじれ、レベルを小さな力で調整することができる

各部のねじによって傾きやねじれ、レベルを小さな力で調整することができる

従来のワイヤを使った傾き調整方法(左)とワイヤを使わない「建方エース」による調整方法(右)

従来のワイヤを使った傾き調整方法(左)とワイヤを使わない「建方エース」による調整方法(右)

これだけでも「エース」の名にふさわしい業務改善ですが、同社はさらにきんそく(本社:京都市)、近畿大学理工学部情報学科と共同で、「建方キング」というパワーアップしたシステムを開発しました。

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

建方作業をIoT化

 

してしまったのです。

建方作業をIoT化した「建方キング」の全体イメージ図

建方作業をIoT化した「建方キング」の全体イメージ図

計測者がトータルステーションを使って鉄骨の傾きなどを計測し、そのデータをWi-Fiによってリアルタイムに発信します。そのためトランシーバーで交信する煩わしさがありません。

建方作業者は手元のモバイル端末を見ながら「建方エース」で傾きやねじれ、高さを調整します。トランシーバーでいちいち各数値を確認するのと違い、鉄骨の傾きなどを作業者自身の目で確認できるので、調整作業はぐっとスピーディーに行えます。

鉄骨の現在の位置や姿勢を、デジタルデータ化してWi-Fiで全員が共有し、「建方エース」の調整を通じて現場にフィードバックする流れは、まさに現場の「IoT(モノのインターネット)」化と言えますね。

建方作業者のモバイル端末には、鉄骨の傾きなどがリアルタイムに表示されるので、このデータを見ながらスピーディーに調整できる

建方作業者のモバイル端末には、鉄骨の傾きなどがリアルタイムに表示されるので、このデータを見ながらスピーディーに調整できる

また、鉄骨の計測データは現場事務所の工事監理者にもWi-Fiで送られるので、鉄骨調整の状況を工事関係者全員がリアルタイムに確認しながら作業を進めていくことができます。

計測者と工事監理者の主画面には出来形図がリアルタイムに表示される

計測者と工事監理者の主画面には出来形図がリアルタイムに表示される

工事監理者の画面には、鉄骨のねじれもわかりやすく表示される

工事監理者の画面には、鉄骨のねじれもわかりやすく表示される

従来は2人の計測者と2台の計測機器が必要でしたが、このシステムによって計測者は1人、計測機器は1台に半減することができました。

その結果、8本の柱の建方調整を行う場合、従来は約40分かかっていましたがこのシステムでは

 

約16分、40%の時間短縮

 

が実現できたのです。そしてコストは約30%低減できるということです。

まさに「エース」から「キング」へと、名実ともに鉄骨建方作業の進化を感じるシステムですね。

鉄骨の傾きなどを調整する「建方エース」にはいろいろな部分にねじが付いており、これらを調整するのはまだまだ人間に頼る部分が多いでしょう。

しかし、小型でパワフルな電動装置が将来、開発されるとこの作業もロボット化されていくのかもしれませんね。

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