管理人のイエイリです。
杭打ち工事と言えば、以前は黒煙を吐きながら「ポカーン、ポカーン」と杭を地中に打ち込んでいくディーゼルハンマーを使った打撃工法が主流でした。
しかし、騒音・振動が大きいため町中では使いにくく、最近ではあらかじめ杭の穴を掘っておいてからそっとコンクリート杭を下ろしていく「埋め込み工法」が主流になっています。
環境に優しいというメリットがある半面、杭がしっかり支持層に打ち込まれたかどうかの判断は、杭が打ち止まるまで打ち込む打撃工法に比べてはっきりしませんでした。
そこで奥村組は、日本コンクリート工業(本社:東京都港区)、佐藤鉄工(本社:千葉県松戸市)と共同で、埋め込み工法の一種である中掘り工法用の支持層検出システムを開発しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
杭先端にコーン貫入試験
を行うための装置を埋め込んだのです。(奥村組のプレスリリースはこちら)
中掘り杭工法は、中空の既製杭の内部で「スクリューオーガー」というドリルを回転させて先端で掘削し、その土砂を地上部に排出しながら杭を沈めていく方法です。
このオーガーの先端に外径36mmのコーン貫入試験装置を取り付けて、支持層に到達したとき、地盤に装置を貫入させて地盤支持力(N値)を求められるようにしたのです。
オーガーヘッド内に油圧ジャッキを仕込んであり、50kNの力でコーンを押し込めます。そのため、N値50を超える固い地盤でも計測できます。
また、杭先端には緩んだ土砂がたまっているため、ジャッキのストロークは1200mmと長めに設計してあります。
これまでの中掘り工法では、オーガーを回転させるモーターの電流と時間を掛け合わせた「積分電流値」を元に、間接的に地盤の硬さを計測し、支持層に達したかどうかを判断していました。
しかし、レキがかみ込んだり、周面摩擦が大きくなったりして、いまいちはっきりと確認できなかった面もあります。この装置が開発されたことで、支持地盤に達したことを自信をもって判断できるようになりますね。
大深度地下での計測データをアナログのまま地上に送ると、ノイズに阻害されることがあるので、オーガーヘッド内にはA/D(アナログ/デジタル)変換器を入れてデジタルデータに変換して、地上のパソコンに送るようにしています。
その結果、
地下50mの大深度施工
にも対応できる仕様になっています。
奥村組は茨城県つくば市にある同社の技術研究所内で、支持層深度約15mの地盤で杭径1000mm用のオーガーで7本の打設試験を行ったところ、事前の地盤調査で得られたN値とほぼ一致したそうです。
今後は杭基礎工事にこのシステムを活用し、施工実績を増やすとともに小口径杭などにも拡大していく方針です。
施工に使う機会で、様々な計測ができるようになると、品質管理の高度化や作業の生産性向上にも役立ちそうですね。