管理人のイエイリです。
3D技術を駆使して設計・施工を行う国土交通省の「i-Construction」は、建設業にとってもはや技術的な課題だけではなく、経営戦略も変え始めたようです。
その実態を探るべく、2017年の第1回「i-Construction大賞」で優秀賞を受賞した金杉建設(本社:埼玉県春日部市)を直撃したところ「5つのi-Con経営戦略」を実践していることがわかりました。
話をうかがった専務取締役の吉川祐介氏から、まず飛び出してきた1つめ戦略は、「1~i-Con機器は自社で保有する」ということでした。
「3回工事で使えば元がとれるのであれば、i-Con機器は買った方が得」と吉川氏は断言します。自社で保有することでi-Conを”普段使い”することができ、活用技術や習熟度も高まるというメリットがあるからです。
そのため、同社は3Dマシンコントロール付きのブルドーザーや3Dマシンガイダンス付きのバックホー、3Dレーザースキャナーなど数多くのICT建機や測量機器を保有しています。
2つめの戦略は何かというと、これらの建機に取り付けてある3Dマシンガイダンスや3Dマシンコントロールなどのシステムは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
後付け方式を採用
しているいうことです。
最近はGNSS(全地球測位システム)のアンテナや角度センサーなどの機器をスマートに内蔵したICT建機も登場していますが、あえて配線やアンテナがむき出しの「後付け方式」を選んでいるのは、同社が保有する様々な大きさの建機に載せ替えて使うためです。
そのため、同社のバックホーなどにはアンテナやセンサーを取り付けるプレートなどが装備されており、2~3時間でICT機器を載せ替えられるようにしています。
3つめの戦略は、「3Dデータ作成作業の内製化と社内サポート体制の構築」です。その主な理由は「手待ちのムダ」をなくすためです。
「ドローンなどで起工測量や3Dデータ作成を外注すると、繁忙期では1~2か月もデータ待ちが発生することがあります。自社で3Dデータを作れると、最短で翌日には完了するので早期着工が可能になります」と吉川氏は説明します。
3D設計データの作成は、2D図面を使う従来の方法よりも確かに時間がかかります。しかし、工事全体の「人工(人工)」の中ではわずかにすぎません。
この3Dデータがあるおかげで、その後の建機による施工や出来形管理などの人工が劇的に削減できるという
レバレッジ効果
が期待できるのです。
また、社内サポートでは、ICTに詳しい「キーパーソン」を現場に出さずに会社を回していくことが重要とのことです。同社ではi-Construction推進室がその役割を担っています。
ICT建機や機器を自社保有し、3Dデータ作成や社内サポート体制を自社で行う「オール内製化」が、同社のi-Con経営戦略の要となっているといえます。
4つめの戦略は、「i-Conを活用したマーケティング」です。全社員の名刺に「第1回『i-Construction大賞』優秀賞受賞」という文言とi-Conのマークが入っており、ヘルメットにもi-Conマークが入っています。
i-conを生かしてブランドを構築して企業イメージを上げ、企業説明会でもドローンを展示するなどの作戦が実を結び、若い社員も獲得しやすくなったそうです。
そして5つめの戦略は「i-Conによる総合評価工事の選別受注」です。i-Conの活用を積極的に打ち出すことで、総合評価入札や工事成績のポイントが上がり、利益率の高い工事を選んで受注しやすくなります。
こうしたi-Con経営戦略によって、金杉建設は進化を続けているようですね。